【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第七十六話 南北
Part-A


「いろいろありがとうね、ヒルダ」

『いやいや、礼には及ばないぞ。ユイ』

 

 ユイは強襲霊電子空母『伊ー400』の自室で、帝国にいるヒルダと通信をしていた。

 

 連邦国民を救うために行動を開始して以来、ヒルダことヒルデガルド・ビルケンフェルトには多大な世話になっている。

 そもそも強襲霊電子空母自体が、帝国で運用されていたものを手本にしており、運用ノウハウなどの重要情報はすべてヒルダ経由で得たものだった。

 

 『伊ー400』はそれらをさらに発展させ、セイルと呼ばれる塔状構造物の前方に、一本の霊符カタパルトを備えている。HFの発進中は艦がどうしても無防備になるため、カタパルトで一気に発艦させることで展開時間を短縮しているのだ。

 

『私の魔槍ハープーンは役に立ったかい?』

「もちろん! まあ、エンチャント魔術を覚えるのには相当苦労したけどね……」

 

 元々ユイは魔術を使いこなす術士ではなかったが、武器に属性や効果を纏わせるエンチャント魔術を習得するため、スージーの下で猛特訓を行った。元来の霊力の高さもあり、なんとか形にはなったものの、武術一辺倒だったユイには不慣れなことばかりで、その苦労は並大抵ではなかった。

 

「でも、あの戦術のおかげで敵味方ともに戦死者なしで終われたよ」

『そうか。まあ、あの戦術はジーク……皇帝陛下が編み出したものだがな』

 

 空母『フランクリン』を無力化した蓄霊凝縮装置(Aether Condenser)への攻撃は、ヒルダから教わったものだ。以前、ジークがフランクス軍艦隊の空母に対して行った戦術で、巨大な空母の機能を最小限の被害で麻痺させる有効な手段であった。

 

 蓄霊凝縮装置は、内部に棒状の霊銀を何本も格納し、その周囲に霊子の揮発を抑えるための冷却水を満たしている。その水が失われると霊子の揮発が加速して貯蔵が不可能になり、艦は機能停止に陥る。

 

 蓄霊凝縮装置を破壊された艦は、次元弾道跳躍(Dimension ballistic leap)が不能となる。人型出力炉(HFR)が無事であれば艦内のライフラインは維持できるが、霊子貯蔵ができない以上、HFR搭乗者への負担は極めて大きい。

 早急な修理が必要となり、現在は聖都から派遣された技術部隊がその任に当たっていた。

 

第13空母打撃群(13th CSG)だったっけ? 彼らはその後どうなったんだい?』

「聖女教皇様が説得してくださって、私たちに協力してくれることになったわ。元々、エクス教の信徒が多かったみたいだしね」

 

 第13空母打撃群(13th CSG)カノープス(Canopus)運河の防衛任務に就いていたが、その人員の多くは周辺の4星系州の出身であった。

 運河付近の4つの星系州は、聖都のあるフランシスコ星系州を含めてエクス教徒の割合が非常に高く、聖都襲撃の報を受けて連邦政府への反感を募らせていたのだ。彼らにとって寝返りは必然とも言える選択だった。なお、4星系州以外の出身者は、捕虜として後日連邦軍へ返還される予定となっている。

 

「4星系州は連邦政府を離脱して、局所泡連合(LBU)に合流するそうよ」

『なるほど。それは『聖青の戦姫(バルキリー・オブ・セントブルー)』の宣言に心を動かされた結果じゃないのかい?』

「やめてー! 今思い出しても緊張して、顔から火が出そうなんだから!」

 

 連邦のみならず全銀河国家群に向けて放ったあの宣言は、ユイにとっても人生最大の博打であり、今なお気恥ずかしさが勝る出来事だった。

 

『ははは、いやいや、実に見事だったぞ。『聖青の戦姫』ユイフィリア・ユリアーネ・フォン・デヴォンポート様』

「もう、意地悪。それならこっちも帝国皇妃陛下、って呼んじゃうよ」

『それは勘弁してくれ。いつまでも、ただの友達のヒルダとして接してほしいんだ』

 

 帝国との戦争、フランクスの解放、そして月面での死闘。一歩間違えば殺し合っていたかもしれない二人が、こうして友人として笑い合えるのは、まさに僥倖であった。

 

 穏やかな時間が流れる中、それを終わらせるように艦内放送が響く。

 

『これより第3次次元弾道跳躍を開始します。各自、所定の位置についてください』

 

「あら、もうそんな時間?」

『そうか、移動中だったな』

「うん、聖女教皇様の護衛で北東部へね」

 

 『伊ー400』は現在、聖女教皇が乗船するエクス教所有艦を護衛し、運河へと向かっていた。4星系州の代表として、聖女教皇がLBU代表と会談を行うためである。

 

『じゃあまたな、ユイ』

「またね、ヒルダ」

 

 次元弾道跳躍中は一切の通信が遮断される。ユイは名残惜しさを覚えつつ、通信を切った。

 お互いの立場がどれほど変わろうとも、ずっと友達でありたい。ユイは心からそう願っていた。

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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