【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-B

『『聖青の十星(スターズ・オブ・セントブルー)』号。こちら管制。誘導路(Taxiway)E2から進入してください。スポット51へコンタクト願います』

「こちら『聖青の十星』号。E2へ。スポット51へコンタクトします」

 

 艦長のスージーが管制官と手際よくやり取りを交わす。

 

 ユイたちの乗る『伊ー400』は、カノープス運河の中継点にある霊符着空機『カノープス2』へと着空(touchdown)した。

 

 霊符着空機は惑星付近に設置されているものと同様、リング状の機械を組み合わせた籠状の巨大施設である。しかし、その規模は桁違いだ。惑星付近のものが直径10km程度であるのに対し、運河に設置されたものは直径100kmを超えていた。その巨大さをもってしても広大な宇宙においては極小の点に過ぎず、1パーセク先からの次元弾道跳躍を、この点へと正確に着空させねばならない。

 そのため運河では霊符着空機の管制との綿密な連携が必要。管制からは着空に影響する障害の有無や、正確な現在の空間位置だけでなく、重力波などの影響を情報にした気象予想も不可欠だ。

 

 ただ民間船では、隣の空域に設置された霊符加速機を使用するため、霊子さえ充填できればあとはお任せで跳べるが、その代わり一隻ずつなので、時間が掛かる。最盛期には船の渋滞が発生する。

 

 運河にはこうした施設が3箇所存在し、航行する艦船にとって必須のインフラとなっている。霊符着空機なしには、重力偏重の激しい局所泡(ローカルバブル)ウォールを越えることは不可能だからだ。

 

 先の帝国との戦争では、この霊符着空機が破壊されたことで連邦の北東部と南西部は物理的に分断される事態に陥った。

 

『ようこそ『カノープス2』へ。歓迎いたします』

「ありがとうございます。本艦のことは伺っていますか?」

『はい、聖女教皇聖下より聞き及んでおります。本艦の入港記録も、追って抹消する手はずです』

 

 管制官は、エクス教の祈りであるⅩ字を切って答えた。

 

 すでにカノープス運河の全域が、エクス教側へと傾いている。聖女教皇が事前に水面下で根回しを済ませていた成果だ。ちなみに『伊ー400』の名称は皇国との繋がりを想起させるため、現在は『聖青の十星(スターズ・オブ・セントブルー)』号という偽装名を使用している。

 

「よろしくお願いします」

『では、お気をつけて。……あ、少々お耳に入れたいことがございまして』

 

 管制官が声を潜めた。

 

「何でしょうか?」

『数時間前に、偽装された駆逐艦が一隻通過しました。所有者は12貴族のフランシス卿であるとのことです』

 

 フランシス卿の名は、今や全銀河に悪名として轟いている。ボストン軌道爆撃事件の主犯。スージーが掴んでいた情報によれば、彼は12貴族から追放され、爵位も男爵へ降格、領地と資産も没収されたはずであった。

 それでもなお駆逐艦を私有し続けているという事実は、貴族制度にいかに自浄作用が欠けているかを如実に物語っている。

 

「貴重な情報をありがとうございます」

『いえいえ。それでは、良い旅を』

 

 管制官との通信が切れるなり、スージーが鋭く宣言した。

 

「嫌な予感がするわね。すぐにあの偽装駆逐艦を追うわよ!」

 

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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