【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

27 / 292
Part-D

 惑星の低軌道上に位置する『かが』の艦橋は、地上に潜伏していたHFの存在を確認し、にわかに混乱に包まれていた。

 敵HFは、あろうことか惑星上の開発用コンテナの中に身を潜めていたのだ。

 

「これまで霊探、霊測ともに反応なしだったのよね? 敵艦が低軌道上から放り出した可能性は? 例のステルスシートを纏わせて」

「敵艦から何かを投下すれば、流石に検知可能です。例えステルスシートを用いたとしても、大気圏突入時の重力制御反応は隠せません」

「そうよね……。副長、敵HFの姿は確認できた?」

「今、魚雷012が急行しています。……あ、撃墜されました。ですが、直前で映像を捉えたようです。モニタに映します」

 

 魚雷からもたらされた映像がメインモニタに展開される。そこには、迷うことなくこちらへ銃口を向けるHFの姿が鮮明に映し出されていた。

 周囲の状況を分析すると、そこは惑星開発公社が残した資材置き場であり、HFの至近には無数のコンテナが整列していた。そのうちの一つの扉が、内側から乱暴に開放されているのが見て取れる。

 

「惑星開発公社のコンテナに隠れていたというの?」

「ステルスシートを併用していたのでしょう。ですが、そもそもどうやって惑星上のコンテナの中に……」

「皇国の公社内部に内通者がいたのかしら。――それで、敵HFの総数は?」

「惑星上に確認できたHFの反応は、合計24。現在、広範囲に散開しています」

 

 惑星上空の全天が、事実上の敵HFによる狙撃範囲に収まってしまった。不用意に艦船を降下させれば、格好の標的となりかねない。

 

「HF隊を呼び戻して対応させるしかないけれど……」

「ですが艦長、HF隊も連戦で疲弊しきっています」

「分かっているわ。……けれど、このままでは」

 

 手詰まりの感が艦橋を支配し、重苦しい沈黙が流れる。そんな中、霊探オペレーターが鋭い反応をキャッチした。

 

「天底方向より、1隻接近する艦船があります!」

「敵艦の増援!?」

「いえ、味方です! 艦種照合……惑星強襲揚陸艦LHD-44001『おおすみ』です!」

「え? 『おおすみ』が来ているってことは……」

 

 ナナが言いかけたその時、揚陸艦『おおすみ』からの通信が割り込んだ。

 

『こちら、『おおすみ』。『かが』の諸君、よく踏ん張ってくれた。後は我々に任せてもらおう』

 

 一方的に通信が遮断されると同時に、『おおすみ』は猛然と低軌道へと侵入を開始した。

 副長が動揺を隠せぬまま、艦長へと視線を向ける。

 

「か、艦長。確か、『おおすみ』の運用部隊といえば……」

「ええ。第一空挺団だわ」

 

――

 

 『おおすみ』は、皇国の軍艦において標準的な六角柱型ではなく、質実剛健な箱型の船体をしていた。

 その船体底面に備えられた16のハッチが一斉に開放され、内部に搭載されていた星菱96式人型機動戦闘機、計16機が姿を現す。地上からの狙撃が船体を叩くが、重装甲で塗り固められた底面には傷一つ付かない。

 

『コースよし! コースよし! よーい、よーい、よーい……降下! 降下! 降下!』

 

 号令と共に、16機のHFが惑星へと次々に吸い込まれていった。

 

――

 

 その光景は、地上からも克明に観測されていた。敵HFのパイロットは、拡大した光学画像に照準を重ねる。

 

「バカめ。無防備に降りてくるとは、良い的だ」

 

 敵HFが、落下してくる皇軍機目掛けて小銃を連射した。

 重力制御を用いて緩やかに降下するHFを射抜くのは容易なはずだ。惑星降下中は霊子出力が削られ、霊力場(Aether Force Field)も展開できない。当たれば確実に致命傷を与えられる。

 

 しかし、弾丸が直撃したにもかかわらず、皇軍のHFは無傷のまま猛スピードで落下を続けた。

 

「なに……!?」

 

 敵HFは困惑しながら再度発砲するが、やはり効果はない。そして彼は、ある戦慄すべき事実に気づいた。

 

「まさか……重力制御を一切使用していないというのか!?」

 

 明らかに落下速度が異常だった。通常の惑星降下では、重力制御によって霊子を消費しながら低速で降りるのが鉄則だ。

 だが皇国のHFは、そのままの自由落下速度で地上へと叩きつけられた。爆発的な土煙が巻き上がり、地表に巨大なクレーターが刻まれる。本来、これほどの衝撃を受ければ、いかにHFといえど五体満足ではいられないはずだ。

 敵HFは土煙が晴れるのを待ち、獲物の残骸を確認しようとした。

 

 だが、立ち込める土煙の奥底で、二つの眼光が鋭く光る。

 

「バ、バケモノが……」

 

 クレーターの底で、落下したHFは平然と立ち上がっていた。

 その姿は、(いにしえ)の武士そのもの。

 

 敵HFが絶句している一瞬の隙に、96式は爆発的な踏み込みで距離を詰め、その太刀を一閃。敵機を両断した。

 

『こちらヘルダイバー04。1機撃破。次ターゲットへ移行する』

 

 第一空挺団のパイロットは淡々と報告を終えると、次の獲物へと向かって駆け出した。

 

 それから1時間も経たぬうちに、惑星上の赤壁連合機はことごとく沈黙。地表から敵影は一掃された。

 

 かくして惑星ケブラ3229cは皇国の実効支配下に置かれ、正式にその領土として編入されたのである。

 

 

続く

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。