【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
待機所にいたHFパイロットたちが一斉に駆け出し、駐機場では整備員たちが手際よくHFの起動準備を開始した。
「回せーーーー!!」
駐機場にたどり着いたパイロットが野太い声で指示を飛ばす。整備員の操作によって
降着姿勢をとっていたHFにパイロットが滑り込み、システムを起動させると、巨大な金属の塊が力強く立ち上がる。
辺りには金属同士が激しくぶつかり合う音やキィィィンという甲高い駆動音、そして腹まで届く重低音が重なり合って響き渡った。
HFの内骨格である素体そのものは静粛性に優れているが、外装であるモジュール装甲に搭載されたイオンドライブスラスターや発電用の
本来、HFの主戦場は宇宙空間である。低重力下、すなわち空間の歪みが小さい環境では莫大な霊子出力を維持でき、モジュール装甲へも十分な電力を供給できる。
しかし、重力の底である地上ではそうはいかない。霊子出力が著しく低下するため、生成されたエネルギーは機体の動力と防御の維持に優先的に回される。その結果、モジュール装甲は独自に電力を確保せねばならず、イオンドライブスラスターも大気から取り込んだ成分をイオン化して噴射することになる。
宇宙空間では無音を保つHFも、地上では40mの巨体が爆音を撒き散らし、周囲へ圧倒的な存在感を放つ。
地上基地に配備されているのは、重装甲を誇る帝国産HFティーガー。元の黒色ではなく、エクス教において博愛を象徴する白に塗り替えられている。
準備が整った機体から順に重力制御で宙へ舞い上がり、目的地を目指して飛行を開始した。敵の迎撃を警戒し、赤い土の地面をなめるような超低空飛行を維持する。
やがて目的地に到達すると、重力制御を切り、力強く大地を踏みしめた。計16機のHFが隊列を組み、LBU軍の軍旗を掲げる。青地をベースに、円形に並んだ17個の星が描かれた旗だ。
そこへ、対峙するように丘の上から敵部隊が姿を現した。
ANU軍は、騎士師団がLBU側のHFを掃討した後に揚陸部隊を降下させ、惑星を完全に占領する腹積もりだった。そのために軌道上には、多数の揚陸艦を待機させている。
一応、騎士師団側から形式的な降伏勧告が発せられたが、LBU軍がこれに応じるはずもなかった。ここで敗北すれば、ANUの地上軍によって惑星全域が蹂躙され、再び貴族の支配下へと戻ってしまう。その未来だけは、何としても阻止せねばならない。
敵の示した制限時間まで、あと1分。風が酸化鉄の混じった土埃を巻き上げる中、32機のHFが沈黙のうちに睨み合う。それぞれの背には、自軍のカラーである青と赤のマントが風にたなびいている。
残り30秒。ティーガー隊は標準装備の片手斧を握りしめ、ラウンドシールドを構えた。盾にはかつての帝国軍旗ではなく、エクス教の象徴であるⅩの意匠が刻まれている。対するイーグル隊も一斉に片手剣を抜き放ち、
そして、運命の刻が訪れる。
両軍のHFが地響きとともに一斉に走り出した。パイロットたちは操魂球の中で咆哮を上げているはずだが、その声が外部に届くことはない。たとえ外部スピーカーで流したとしても、機体そのものが発する激しい騒音にかき消されてしまうだろう。
40mの巨体が全力で疾走すれば、周囲には暴風が吹き荒れ、足踏みのたびに地震が発生する。
32個の巨大な災害が、戦場の中央で激突した。
同様の光景は北東部の各星系州で繰り広げられていた。惑星を奪われ、奪い返し、防衛する――その果てしない連鎖。