【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-B

「うーん、これはちょっと無理そうね……」

 

 『伊ー400』の艦長席で、巫女装束に身を包んだスージーが唸る。正面の立体ディスプレイには、敵艦隊の強固な陣容が投影されていた。

 

「ナトミちゃん、そっちはどう?」

 

 隣の副長席に座る呉ナトミに声をかける。

 

「霊電子戦艦が、3隻……いえ、4隻潜んでいます」

 

 ナトミは静かに目を閉じ、コンソールに配置された、大きな銅鏡を思わせるパネルに両手をかざしていた。それは霊電子戦の担当者が霊子情報を受け取り、電子信号へと変換するための装置であり、聖銅(ヒヒイロカネ)と呼ばれる特殊な合金で鋳造されている。

 

 機械そのものは霊子を直接認識できない。しかし、それを間接的に検知する手段は主に2つ存在した。その1つが、巫女が操作しデジタルデータを電子計算機(コンピューター)へと送る、この聖銅である。もう1つは、霊子に反応する微生物を利用した装置だ。大量の霊子を感知すると微弱な電流を発生させる微生物の特性を利用し、その電流を検知して電子情報へと変換する。こちらは蓄霊凝縮装置(Aether Condenser)の残量確認など、比較的単純な情報の処理に用いられる。

 

「霊電子戦艦の推定位置を表示します」

 

 ナトミが手際よく操作を行うと、ディスプレイ上の敵艦隊図に赤い点が書き加えられた。艦隊を包囲するように巧みに配置されている。

 

 『伊ー400』は現在、ANU軍の攻撃を受けている惑星の上空に潜み、惑星近傍に布陣する敵艦隊とは正反対の位置に陣取っていた。

 敵に捕捉されないよう、対霊探隠ぺい霊符術を最大稼働させつつ、ナトミの走査も受動的な霊測(Aether Sonar)のみを使用している。

 

 霊探や霊測には、艦のセイル部分にある専用アンテナが用いられる。艦の心臓部である人型出力炉(HFR)が発生させる霊波ノイズの影響を避けるため、アンテナは可能な限り出力炉から離れた位置に設置されるのが通例だ。

 

「空母への奇襲は諦めましょう。HFの状況はどう?」

「稼働全機、ただちに発艦可能です」

 

 敵襲の報を受けて急行したものの、到着したときにはすでに敵のHF揚陸を許した後であった。

 

 眼前の敵艦隊は、多重球形陣とも呼ぶべき重層的な陣容を敷いており、一切の隙が見当たらない。

 

 

 第13空母打撃群(13th CSG)が敗退した教訓を受け、連邦宇宙軍(Navy)は空母打撃群の戦力を大幅に強化していたのである。

 

 空母を守る随伴艦の数を増やし、いかなる奇襲も許さない鉄壁の体制を構築した。遠征打撃群(ESG)をも統合した遠征空母打撃群(ECSG)を編成し、補給なしでの北東部縦深への長距離侵攻を目的とした大艦隊だ。

 

 空母(CV)強襲揚陸艦(LHD)輸送揚陸艦(LPD)を中心軸に据え、その周囲を重力子魚雷巡洋艦(CG)駆逐艦(DD)が幾重にも取り囲む。さらに霊電子戦艦(SS)を複数配備した万全の構え。

 次元弾道跳躍(Dimension ballistic leap)による移動においても、事前に駆逐艦部隊を先行させて空域の安全を徹底的に確認した後、本隊が着空(touchdown)するという念の入れようである。

 

 これこそが、連邦軍が最も得意とする物量による圧殺作戦であった。

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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