【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第七十九話 剣墓
Part-A


 『聖青の戦姫(バルキリー・オブ・セントブルー)』こと、横田ユイの乗機XB-70 バルキリー。その型式番号のXは実験機(eXperimental)ではなくエクス教の「X」を、Bは戦姫(Battle maiden)を意味していた。

 

 上空から真っ先に降下した彼女のHFは、勢いそのままに敵HFの頭部を長槍(ロングスピア)で粉砕する。

 

 我らが『聖青十字騎士団(オーダー・オブ_セントブルー)』のリーダーでありながら、自ら切り込み隊長を買って出るとは、とんだお転婆姫さんだ。

 

 自分も遅れまいと、三沢ゴウガは敵の一機を定めて落下を開始する。左腕に装備したパイルバンカーの照準を合わせた、そのとき。

 

 標的の敵HFが突如として何かを射出した。

 

「うおっ!?」

 

 それは煙幕弾であった。周囲の敵HFも一斉に煙幕をぶち撒け、視界は瞬く間に真っ白に染まる。自動で赤外線検知(サーマル)カメラに切り替わったものの、状況は好転しない。熱源をも遮断する特殊な煙幕のようだ。

 ゴウガはやむなく攻撃を断念し、大地へと着地する。数分後、ようやく煙が晴れたころには、敵HF隊はすでにはるか上空へと退避した後だった。

 

「ほう、判断が早い」

 

 敵の指揮官は、戦力差を悟るや否や撤退を即決した。

 

 エイトリア貴族同盟(ANU)軍が北東部へ侵攻を開始してから三か月。彼らは惑星上陸戦闘において、決して無理をしない方針を徹底しているようだった。圧倒的な物量を誇る遠征空母打撃群(ECSG)を用い、じっくりと時間をかけて北東部を攻略する腹積もりなのだろう。

 

「追撃はしないのか?」

『先に味方HFの救助を優先するようよ』

 

 独り言のつもりだったゴウガの呟きに、僚機のフィーことデルフィーヌ・ランディヴィジオから応答があった。

 なるほど、ユイはすでにHFから飛び降り、損傷した味方のティーガーに向かって走っている。後方からは星菱レイがそれを追っていた。救護については、あの二人に任せておけば問題ないだろう。

 

「そうか。せっかくの新装備を試せなかったな」

『新装備?』

「足元を見てみな」

 

 ゴウガの乗機であるHFF-16カスタムの脚部には、標準機にはない異質なデバイスが装着されていた。

 

『何よ、これ……』

「まあ、見てなって!」

 

 機体を前傾姿勢にさせると、足元の装置が複雑に変形する。車輪状のパーツが展開し、踵の後方で接地した。さらに側面と前方からも補助輪のような車輪が突き出す。

 

「行くぜ! ローラーダッシュ!」

 

 ゴウガの気合の入った掛け声とともに、車輪が凄まじい勢いで高回転を始めた。

 

 しかし。

 

「……あれ?」

 

 脚部は猛烈な土煙を巻き上げて空回りするばかりで、巨体は一向に前へ進もうとしない。

 

『……何をしてらっしゃるの?』

「全然動かん……」

『HFの重量が何百トンあると思っているのよ』

「おっかしいなー。ボト〇ズだとダッシュもスラロームも自由自在なんだが」

『ナニソレ』

 

 フィーの氷のように冷たい視線が、ゴウガのコックピットを突き刺した。

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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