【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「モコさーん、ローラーダッシュ、だめだったよ……」
「ありゃりゃ」
味方の
格納庫にHFを固定したゴウガは、降りるなり整備班長の舞鶴モコのもとへ駆け寄り、愚痴をこぼした。モコは舞鶴シュユの実姉であり、機械の製造からメンテナンスまでを完璧にこなす機術のエキスパートである。
「なんか空回りしちゃって進まないんだ。接地面が小さすぎるんじゃないかな」
「うーん、車輪の直径が足りなかったかなぁ? ス〇ープドックだともっと小さかった気がするけど」
「エ〇テバリスみたいに踵をクローラーにするとか?」
「いっそド〇みたいにホバージェットにする?」
ゴウガとモコは、旧地球時代のロボットアニメ愛好家として意気投合していた。その繋がりがきっかけで、HFF-16カスタムには様々な試作装備が施されている。左腕のパイルバンカーもその一つだ。
そんな二人の「マニアトーク」を、フィーは半眼で見つめていた。
「……貴方たち、一体何語で話しているのよ」
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そのころ、艦橋では次なる移動への準備が粛々と進められていた。その様子を眺めながら、艦長のスージーが副長の呉ナトミに問いかける。
「ナトミちゃん、敵艦隊の動きはどう?」
「星系外縁部に到達しました。
「いいえ。今の戦力では、あの多重球形陣を正面から突破するのは無理ね。秘密兵器は、もう少し時間がかかりそうだし……」
「秘密兵器?」
「いや、こっちの話。次に侵攻を受けそうな星系は予測できる?」
これまでの戦闘は、基本的には現地のLBU軍が防衛を行い、そこへユイたちの『
彼女たちは一騎当千の実力を誇り、参戦すれば必ず敵を撃退している。現地軍からは深く感謝され、『
ANU軍の
「LBU軍からの情報によれば、警戒すべきは三つの星系ですね」
「その中で、こちらの移動が間に合いそうな場所は?」
「サッターズミル星系州です」
「よし、そこへ向かいましょう。できれば先回りして、敵を待ち構えたいね」
「了解しました」
宣戦布告からの半年間で、すでに三つの星系州を失っている。現在も七つの星系州で戦火が上がっており、LBU軍は防戦一方を強いられていた。
さらに深刻なのは整備面だ。部品の互換性がなく、専用工具も異なり、マニュアルも連邦語で書かれていない。現場の整備員たちは、かつてない混乱の渦中にあった。
加えて、騎士師団のパイロットたちは極めて精強だ。特に、元
同じ円卓の騎士団出身であるジョージ・ホワイトマンによれば、現在北東部で侵攻の指揮を執っているのは、“
他のメンバーの動向は不明だが、ビリーは南西部側で治安維持に当たっているらしいとの報に、ミリィは安堵の色を浮かべていた。
彼らが率いる部隊は、戦闘前に必ず警告を発し、勝利した後も規律正しく行動する。艦隊もLBU軍の軍艦こそ標的とするが、民間船には決して手を出さず、いわゆる通商破壊も行われていない。
ボストン軌道爆撃事件の記憶に震えていた北東部の民衆も、節度あるANU軍の振る舞いを見て、わずかに胸をなでおろしていた。
だが、それはあくまで「表向き」の姿に過ぎなかった。