【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
LBU軍のHF隊が展開し、地上基地の防衛任務に就いていた。この部隊は最新鋭のHFF-16 ファイティングファルコンを装備しており、パイロットの練度も高く、これまでに二度もANU軍を退けた実績を持っている。
そして今、彼らは三度目の侵攻に直面していた。
「どうだ? 奴らの姿は見えたか?」
『いえ、まだ確認できません』
ANU軍は狙撃を警戒し、地上基地から離れた地点にHFを降下させ、そこから徒歩で接近する戦術をとっている。
待ち構える隊長は、高台に配置した部下からの報告を今か今かと待っていた。
『あ! 軍旗を確認しました! ANU軍の赤旗です!』
「部隊マークは判別できるか!?」
『剣の意匠……のようです!』
ANU軍の騎士師団は、部隊ごとに異なる意匠のマークを掲げている。例えば
「その剣は、
『下です! 剣先が下を向いています!』
「……いかん! それは剣ではない、『剣墓』だ! 総員、直ちに撤退を――!」
隊長が叫びかけたその瞬間、凄まじい通信妨害が戦場を包み込んだ。HFの
一切の通信が遮断される中、隊長機のモニターにもついに敵の姿が捉えられた。これまでは形ばかりであれ降伏勧告がなされていたが、今回はそれすらもない。
現れたHFは騎士師団共通のHFF-15 イーグル系であったが、背負ったマントの色が標準の赤ではなかった。
不気味な黒いマントを翻す一団が、沈黙のうちに突撃してくる。
「『ナイトメア』だ……」
隊長が絶望に染まった声で呟いた。
『剣墓』。すなわち、死者のために剣を地面に突き立てた墓標。それを部隊章とする部隊は、自らを『ナイトメア』と称していた。彼らは一切の躊躇なく破壊と殺戮を遂行する「虐殺部隊」として、その名を忌み嫌われている。
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その戦闘は、もはや戦いと呼べるものではない。
一方的な蹂躙であった。
特に、背中に巨大な黒い大剣を背負った一機は、凄まじい速さでLBU軍のHFを次々と切り伏せていく。16機いた防衛部隊は、わずか数分のうちに隊長機を残して全滅。
隊長は絶望の果てに抗戦を断念し、機体を降着姿勢へと移行させる。
それを見た黒い大剣の主も、同様に機体を降着させ、操魂球から姿を現した。
中から現れたのは、全身を黒い
LBU軍の隊長は、降伏の姿勢を保ったまま、黒い男が近づいてくるのを待つ。
「地球条約に則り、捕虜としての適正な扱いを要求する」
恐怖に震えながら、眼前に立った男へ、隊長は条約で定められた規範通りの文言を告げた。しかし、黒い男は無言のまま、背負っていたあの大剣を静かに握り直した。
「な、何を……?」
『すまんな』
「え?」
それが、隊長の最期の言葉となった。
黒い男は大剣を一閃させ、首を跳ね飛ばした刃を振って血を払う。
『各機、掃討を開始せよ』
冷徹な命令が下されるや、黒マントのイーグルたちが一斉に動き出す。
彼らは片手剣を鞘に納めると、右腕の手甲に装備された二門の30mm機関砲を、基地内に残された非戦闘車両や施設へと向けた。
激しい銃声とともに、基地の蹂躙が始まる。
『ナイトメア』と呼ばれるこの部隊の悪名は、北東部において急速に広まりつつあった。ANU軍を一度でも撃退した地には、必ず彼らが現れると言われている。
他の部隊がどれほど規律正しくとも、彼らだけは例外だ。彼らは純粋な「恐怖」として君臨し始めていた。
通常の部隊に降伏した方がまだマシだ、と人々に思わせるために。
「スノーホワイト。こちらナイトメア01。通信妨害、および霊電子妨害を解除」
『こちらスノーホワイト。了解しました』
黒い動甲冑の男――アラス・エルメンドルフは、上空でHFEA-6 プラウラーを駆るカタリナ・アヴィアーノへと告げた。
「……すまない。このようなものを見せて」
『いいえ。これも、任務ですから』
続く