【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
強襲揚陸艦LHD-503『キアサージ』の舷側ハッチから、内部格納庫へと帰還するHFF-15E ストライクイーグル。その背には、不吉な黒いマントが装備されていた。機体は定められた駐機場まで移動すると、静かに降着姿勢を取る。
機体から降りてきたのは、黒い
「お疲れ様です」
『ああ』
短いやり取りの後、動甲冑は膝をつき、背部のハッチを解放する。バシュッという排気音とともにハッチが開くと、中からパイロットスーツ姿の長身の男性が現れた。
白い髪の女性が合図を送ると、待機していた整備員たちが集まり、動甲冑の解体作業を開始する。
「アラス様、タオルを」
「ありがとう、カタリナ」
アラス・エルメンドルフは、カタリナ・アヴィアーノから受け取ったタオルで汗を拭う。
彼女はアラスの婚約者であり、同時に有能な副官でもあった。階級は大尉。
カタリナはすでにタイトスカートの艦内服に着替えて身形を整えており、どうやらアラスの帰艦が最後だったようだ。
カタリナの乗機である人型霊電子戦機HFEA-6 プラウラーは、アラスの乗機の隣に置かれていた。装甲はなく、エクス教の聖女が纏う白い修道服を模した外装を装備している。HFEA-6は旧式の機体ではあるが、魔術を扱う術式作戦機は、パイロットにとってただの道具であり、性能は搭乗者に依存する。
カタリナはアラスの二歳年下で、生まれる前から彼との婚約が定められていた。アヴィアーノ家は代々エルメンドルフ家を補佐する家系であり、侯爵として公爵領の一星系州の管理を任されている。
彼女が宇宙空間の産婦人科病院で産声を上げた際、その霊力が異常に高いことが判明した。連邦においてそのような資質を持つ女性は、将来の魔女、あるいは聖女としての道を歩むことが強く推奨される。
カタリナもその才能を見込まれて四歳で修道院に入り、聖女を目指して研鑽を積んでいた。将来を嘱望されていた彼女だったが、十二歳で修道院を去ると、魔術を学ぶべく軍学校の門を叩いた。
聖女になれば、エクス教の教会で安穏と務めることになり、硝煙立ち込める戦場に出ることはない。なぜその道を選ばなかったのか。以前アラスがそう尋ねると、
「アラス様のお役に立つためです」
カタリナは迷いのない瞳で、はっきりとそう言い切る。
軍に入隊した彼女は、聖女の資質を持ちながら魔女の技能を振るう異能のHFパイロットとなった。
彼女の役割は主に二つ。一つは広帯域の霊電子妨害。コールサインでもある二つ名“
そしてもう一つは、戦場監視と情報収集。
惑星上で繰り広げられる、アラスら『ナイトメア』隊による凄惨な行為。
カタリナは、すべてを見ていた。