【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「し、しかし、これを俺の部隊でやるというのですか?」
自分を慕い、共に戦ってきた有能な部下たちに、そのような汚れ役を強いるというのか。
「いや。通常は
表向きは『規律正しい部隊』として振る舞い、必要に応じて『ナイトメア』隊という仮面を被る。実体のない
「それが、『ナイトメア』隊」
「そうだ。実際の運用にあたっては、決して正体を悟られてはならん。他の味方部隊に対してもだ」
「味方も騙すんですね……」
「その通りだ。架空の部隊として動く際は、動甲冑を装備しろ。お前自身が、人ならざる『ナイトメア』となるのだ」
「俺が『ナイトメア』に」
リチャードの説明を聞いても、アラスの表情は晴れなかった。納得しかねる様子の息子に向け、今度は父レジーが言葉を重ねる。
「いいか、アラス。今、北東部で起きているのは、貴族という重しを失った平民たちが、浅はかな勘違いを暴走させているに過ぎない」
「勘違い、ですか」
「愚かな平民のみで政治が行えるという、救いようのない勘違いだ。そのような体制は早晩、内側から崩壊する。それは歴史が証明している通りだ。我ら有能なる貴族が正しく導いてやらねばならん。それが、貴族の義務なのだからな」
「貴族の義務……」
「そうだ。お前もエルメンドルフ家の一員として、将来は平民を導くべき立場にあるのだ。……話は以上だ」
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あの面談の後、ボストン軌道爆撃事件が起こり、
そして今、アラスは北東部に侵攻している――『ナイトメア』として。
『ナイトメア』として戦場に立つ以上、一切の容赦はしない。民間施設には手を出さないという最低限の一線は守っているが、LBU軍の施設内にいる者はすべて、命を奪ってきた。たとえそれが一般人であっても、徹底的な『恐怖』を刻み込むために。
蹂躙が終われば、その後の処理は地上部隊に丸投げして即座に撤退する。正体を悟らせないためであり、その実態は味方にすら秘匿されている。彼らは正体不明の殺戮部隊として北東部にその悪名を轟かせていた。ANU軍上層部も、彼らの残虐行為をあえて映像付きで積極的に喧伝し、心理的な圧迫に利用している。
アラスは、論理としては任務に納得していた。だが、心情までは割り切れない。投降したHFパイロットの顔を、今も思い出す。極限の恐怖に歪んだまま絶命した、あの顔を。
今夜も、悪夢を見そうで安らかな眠りは訪れそうにない。
青ざめた顔で沈思黙考するアラスの袖を、傍らにいたカタリナがそっと掴む。
「アラス様」
「カタリナ……すまない。ぼーっとしていた」
「いいえ。私は、アラス様のためならば何でもいたします。ですから」
「?」
「どうか、謝らないでください」
「……そうだな。ありがとう」
続く