【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「見つけた」
惑星上空に滞在する『伊ー400』は、舷側ハッチを開放し、青いHFの格納作業を進めている。
その艦の後方から、奇妙な物体が静かに接近していた。それはまるでポリゴン数が極端に少ないCGのような形状の機体で、鋭角な二等辺三角形のシルエットを描いている。
黒く塗装された機体は『伊ー400』の背後につき、小さなマニピュレーターを伸ばした。その先端には、人間の手のひらほどのサイズしかない黒い箱がある。機体は、船外カメラの死角となるHBLCフィンの影に、それを正確に貼り付けた。
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「あれ?」
『伊ー400』の艦橋で
「どうしたの?」
「あ、艦長。電探に小さな反応があったのですが、すぐに消えてしまいました」
「……デブリじゃないかな。
「敵性反応はありません。クリアです」
同じく巫女装束の霊探員が答える。
「そう、じゃあ問題ないわね」
「了解です」
電探オペレーターも納得し、監視業務に戻る。
「艦長。HFの格納、すべて完了しました」
「ありがとうナトミちゃん。では出航しましょう! 目標、太陽系!」
「了解! 出航します! 針路そのまま、重力源推進前進最微速! 対霊探隠ぺい霊符術発動! 惑星重力圏を離脱次第、HBLCフィン起動!」
副長である呉ナトミが復唱し、『伊ー400』が静かに動き出した。
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「行ったか」
黒い三角形の機体に搭乗しているラファエル・フランシスが呟いた。
「グリーンヘッド。こちらシール01。『小箱』の設置に成功した」
『シール01。こちらグリーンヘッド。了解。動作確認問題なしよ』
ラファエルに応答したのは、母艦であるSSN-5772『グリーンビル』の艦長を務めるイザベラ・マルムストロームだ。
『小箱』とは、『伊ー400』に取り付けられた小型デバイスで、
『小箱』は、極めて秘匿性の高い「艦艇追跡装置」だった。
「姐さん……じゃなかったグリーンヘッド。こんなまどろっこしいことしなくても、さっき敵艦を攻撃できたんじゃないっすか?」
『アンタのナイトホークじゃあ非力すぎて壊しきれないでしょ。すぐに艦載機が出てきてアウトよ』
「そうっすかねぇ」
いまいち納得のいかない様子を見せるラファエルに、イザベラが命じる。
『十分距離は離れたわ。さっさと『変形』して帰艦しなさい』
「へーい。シール01了解」
黒い三角形の機体の底面が割れた。外装であったパーツが広がり、まるでマントのような形状へと変形していく。外装の内部には、本来の「ヒトの形」を崩した状態で腕と脚が収められていた。それらが展開し、本来の位置へと戻っていく。
ラファエルが搭乗するHFF-117 ナイトホークは、可変型のステルスHFだった。
黒い外装は霊電子戦艦と同様の材質で作られ、対霊探隠ぺい霊符術と熱光学迷彩が施されている。通常、HFは霊子出力が高すぎるため霊符術でも隠ぺいしきれないが、この機体はあえて「ヒトの形」を崩すことで霊子出力を極限まで抑える設計となっていた。
ナイトホークの変形が完了し、軽装甲を纏ったHFの姿となる。霊子出力が上昇し、
帰艦先となるSSN-5772『グリーンビル』はロサンゼルス級の霊電子戦艦だが、その外観は特殊だ。艦の上部デッキに円筒形の格納設備を備えており、本来は特殊部隊の隠密輸送用だが、今回はナイトホーク1機を収容できるよう改装されていた。
ナイトホークが着艦し、ハッチが閉じられると、『グリーンビル』は出航準備を開始。
「あとは、ブレマー義姉さんの『オハイオ』と第9霊電子艦群に任せましょう。お母さまが『“赤髪の魔女”には関わるな』とおっしゃっていたしね」
HFパイロットから霊電子戦艦の艦長へと転身したイザベラは、深いため息をついた。
続く