【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-C

「先ほどのは、神聖魔術ですか?」

「はい、そうです。私の霊子(Aetherion)を一部分け与えることで、対象の治癒能力を高める魔術です。自然に治る怪我の治癒速度を早めているに過ぎませんけど」

 

 神聖魔術は、聖女のみが扱える術だと聞いている。他人に己の霊子を譲渡する魔術だ。霊子とは生命力そのものであり、普遍人(Normalian)も微量ながら保持している。それを補充することで、生命活動を活性化させているのだろう。

 

「初めて見ました」

「ふふ、騎士様ならもっと大規模な軍事魔術をご覧になっているでしょう。私の術では、病気や大きな怪我は治せないのです。特に細菌感染がある場合、逆に悪化させてしまう恐れもありますから」

「なるほど」

「この辺りでは、小さな怪我でも命取りになりかねません。医者もおりますが、治療費が高額ですので……」

「それで、教会で治療を行っているのですね」

 

 納得したビリーだったが、聖女の言葉にふとした違和感を覚えた。

 

「あれ? 何故、オレが騎士だと?」

 

 ビリーは確かに騎士服を着用していたが、一般的にはまず軍人だと思われるはずだ。

 

「ええ、以前にもいらした騎士様がいらっしゃるのです。アラス様と名乗っておられました」

「アラスの兄貴!?」

 

 意外な名に、ビリーは目を見開く。そういえば、以前アラスが辺境伯領の治安維持任務に就いていたと言っていた。ここがその場所だったのか。

 

「あら、お知り合いでしたのね。アラス様には大変お世話になりました。お布施も多くいただき、助けられましたわ」

「はい、俺にとっては非常に世話になっており、尊敬している方です。……ああ、オレも寄付をさせてください」

「恐縮です。お気持ちだけで結構なのですが……」

 

 腕のリングをタップし、ナノボットのウィンドウを開く。軍務続きで使う暇のなかった軍給を、多めに寄付した。

 

「ありがとうございます。神に感謝を」

「……聖女さま。一つ伺いたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」

「はい。私に分かることであれば……」

 

 ビリーはしばし言葉を選んだ。

 

「『聖青の戦姫(バルキリー・オブ・セントブルー)』のことをご存じですか?」

「ええ、存じております。聖女教皇聖下よりご紹介いただいた方ですね」

「政府からは偽物だと言われていますが……」

「真実は分かりかねますが、彼女の演説の内容は、心に響くものでした。もう見ることはできないのですが」

「その……彼女の演説を聞いて、どう思われましたか?」

 

 以前、父親にも問いかけた質問だ。教会の者ならどう答えるか、知りたかった。

 

「……そうですね。彼女の仰っていることは、正しいと思います」

「どういう点が、ですか?」

「この辺りは普遍人ばかりなのですが、差別が苛烈で、まともな職に就くことすら叶いません。開魂者(Openian)普遍人(Normalian)も同じ人間であるはずなのに。彼女が語った『価値は等しく平等であるべきだ』という言葉は、エクス教の教えそのものだと思います」

 

 ビリーを信頼してくれたのだろう、彼女は率直に胸中を明かした。

 

「なるほど。では、貴族制度についてはどうお考えですか?」

「……貴族については、分かりません。連邦では千年以上もこの制度が続いてきましたから、それ以外の世界を想像できないのです」

「そうですか……」

「それに、エクス教内部にも階級や権力闘争があり、現状が理想的とは言い難いのが実情です」

 

 聖女の説明によれば、エクス教も一枚岩ではなく、教皇派と貴族派に分かれているという。この南西部は貴族派の影響が強く、貴族側に組みする数名の枢機卿が支配しているらしい。彼らに背けば予算を削られるため、小さな教会を維持するには現状を甘んじて受け入れるしかないのだ。

 

「エクス教にも、いろいろあるのですね……」

「ええ、残念なことですが」

 

 これ以上の長居は迷惑になると考え、ビリーは聖女に礼を述べ立ち去る。軍の宿舎へと戻る道すがら、彼は思考を巡らせた。

 

 千年以上続いてきた慣習を崩すのは、容易なことではない。それを成し遂げようとしている『聖青の戦姫(バルキリー・オブ・セントブルー)』ことMs.ユイ。彼女は今、何を思っているのか。一度会って話をしてみたいという欲求が、ビリーの中に強く芽生えていた。

 

 

続く

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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