【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
わいわいと賑やかに騒いでいる女子4人のもとへ、お盆を手にした少年が歩み寄った。
「はい、お待たせ。ユイ、座って」
少年、星菱レイは、お盆に乗せてきた器を4人の少女の前に並べていく。ユイも毒気を抜かれたように、素直に椅子に座り直した。
立ち上る湯気とともに、食欲をそそる香りが鼻腔をくすぐる。器の中身は、皇国の国民食――ラーメンだ。
「おお、美味しそう……」
ナユが思わずといった様子で感嘆の声を漏らした。
今日ここに集まったのは、単にユイの愚痴を聞くためだけではない。レイが調理場を借りて自作のラーメンを振る舞うと聞きつけ、4人が「試食会」として参加したのだ。
「本当に料理ができるのね、レイ君」
「レイきゅん、ボクはラーメンにはうるさいよ?」
感心するリンと、品評する気満々のシュユが箸とレンゲを手にする。ユイとナユもハッと我に返って箸を取った。レイは、自然な動作でユイの隣に腰を下ろす。
「「「「いただきます」」」」
「どうぞ、召し上がれ」
細い麺を啜り、白濁したスープをレンゲですくい取る。
「美味しい……」
「うまーい! さすがレイ君ね!」
リンとナユが素直な感想を述べる。
「これはハカタ風とんこつラーメンだね。豚骨というと、こってりしたイメージを持つ人も多いけど、このスープは臭みがなくて実に軽やか。女性でも食べやすいよう調整してくれているんだね。パーフェクトだ、レイきゅん!」
「どうも。休暇中に暇だったから、少し研究してみただけだよ」
通っぽい批評をするシュユに対し、レイは淡々と応じる。その間、ユイは無言でラーメンを口に運んでいたが、ふと隣のレイを睨みつけた。
「レイ! アタシがマスコミ相手に大変な思いをしてる時に、何やってんのよ!」
「……だって、付いて行くわけにもいかないだろう?」
「それはそうだけどさ……」
「で、感想は?」
「……美味しいわよ」
「うん」
ふいに二人だけの空気を作り出した彼らを眺め、残りの少女3人は(ほほぅ……)と意味深な笑みを浮かべた。
「あーっ! もう食べちゃったのか!?」
そんな甘い空気を微塵も読まない男が、食堂に勢いよく転がり込んできた。レイは小さく嘆息して立ち上がる。
「ゴウガか。ちょっと待ってろ」
「お、いいのか!?」
「うん、まだスープは余っているから」
「やったぜ! ありがとう、ゼ――」
「『ゼロ』って言ったら、ラーメンはやらんぞ」
「ぜ、全然そんなこと言うつもりないぞ! なあ、レイ!」
「……座って待ってろ」
「おう!」
喜び勇んで調理室へ戻るレイを目で追い、鼻歌まじりのゴウガ。だが、そんな彼を待っていたのは、少女3人からの冷ややかな視線だった。
「ゴウガ。そこ、正座」
「あれ、姉さんいたの? ……って、えっ?」
「いいから、正座」
「な、なんでだよ!?」
姉の絶対的な命令に困惑しながらも、リンとシュユからも氷のような眼差しを向けられる。
「「正座」」
「は、はいっ!」
3人の圧力に屈し、ゴウガは椅子の上にちょこんと正座させられた。
「ゴウガ……姉さんはがっかりだわ」
「そうね。残念で仕方ないわね……」
「そうそう。空気を読めない男はモテないよ!」
「???」
全く事情が飲み込めないゴウガは、3人の美少女に囲まれて責め立てられ、ただただ困惑するばかり。
「ん?」
そして同じく状況を把握していないユイも、不思議そうに首を傾げながら、最後の一口を啜るのであった。