【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
地球自由連邦は、内戦状態に陥っても諸外国との貿易を止めてはいなかった。たとえ戦争中であっても、人々の営みは続くからだ。
それは
内戦が始まってからは、運河が軍艦専用となり一般船舶が使用できなくなったため、北東部への直接的なルートは失われていた。
しかし皇国は、かつてフランクス王国奪還作戦で使用した古代の銀河航路を整備し、新たな北東部への交易路として蘇らせた。
その新航路は、人類発祥の地――太陽系を経由する。
現在、太陽系は連邦内戦の混乱により、いくつかの無人ステーションが残されているだけの、静まり返った無人の地となっていた。
そんな太陽系の外縁部に、巨大な箱型の貨物船が停泊していた。全長は1kmを超え、並みの軍艦を凌駕する巨体である。もっとも、この時代の民間貨物船や豪華客船において、この程度のサイズは決して珍しいことではない。
その巨大貨物船の船底が、ゆっくりと開き始めた。中から光が漏れ出し、内部の広大な空間が露わになる。巨大なハッチが開ききった状態で、船はしばらく静止を続けた。
数分後、ハッチは再び同じようにゆっくりと閉じられる。
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「艦長、『小箱』の信号が途絶しました」
「そう。予想通り、あの貨物船が偽装補給艦だったというわけね」
戦略情報収集艦SSGN-1736『オハイオ』の艦長、ブレマー・キトサップはオペレーターからの報告を受けた。『小箱』の信号が止まったということは、
ブレマー率いる第9霊電子艦群は、SSN-5772『グリーンビル』の艦長イザベラ・マルムストロームから引き継いだ『小箱』追跡装置を用い、謎の霊電子戦艦を追尾していた。その軍艦には、
追跡しつつ好機をうかがっていた彼女たちは、敵が無防備になる補給の瞬間を狙い、攻撃を仕掛けるつもりでいた。強力なHFを搭載している敵と正面から戦うのは得策ではないからだ。
「あの貨物船の情報は?」
「
「『ナッチャンワールド』? 妙な名前の船ね。まあいいわ。全艦に通達。攻撃準備、目標は『ナッチャンワールド』よ!」
「Yes Ma'am!」
艦内に第一種戦闘配置を告げる警報が鳴り響く。太陽系には『オハイオ』の他にも7隻の霊電子戦艦が潜伏しており、計8隻の艦隊が牙を剥いた。
「ふん、ヤビットの偽姫め。覚悟することね」
ブレマーは『聖青の戦姫』の撃破を確信し、冷ややかな笑みを浮かべた。
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停泊していた『ナッチャンワールド』の
しかし、貨物船の舷側ハッチが次々と開き、そこから近接防御用光子砲のレンズが姿を現す。一斉に放たれた光子の束は、すべての重力子魚雷を正確に撃ち落としてみせた。
「ふん、さすがに武装しているわね。では次よ、『ナイトホーク』隊に攻撃命令」
『オハイオ』をはじめとする第9霊電子艦群の霊電子戦艦は、艦の上部デッキに円筒形のHF格納設備を備えている。
帝国との戦闘を経て、強襲霊電子空母の有効性を認識した連邦軍だったが、専用艦の建造はまだ計画段階にあり、実戦投入には至っていなかった。そこで既存の艦に簡易的なHF格納設備を取り付けることで、急造の空母化を実現したのである。1隻につき1機しか運用できないが、可変型のステルス機HFF-117 ナイトホークを搭載することで、隠密性を維持したままの作戦展開が可能となっていた。
すでに8隻の母艦から発艦していた8機のナイトホークが、一斉に変形を開始した。対霊探隠ぺい霊符術が施された黒い外装をマントのように翻し、人型機動兵器としての真の姿を現していく。
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すべての魚雷を迎撃した『ナッチャンワールド』の上部甲板にある巨大ハッチが開き始めた。ハッチの内部はエレベーター構造になっており、下層から何かがせり上がってくる。
姿を現したのは、三機のHFだった。
一機は黒いチュニック型の外装を纏い、帽子を被っている。もう一機は、エクス教の女性神官が着用する黒い修道服を模した外装を装備していた。
そして最後の一機は、黒いローブ型の外装を纏い、腕を組んで仁王立ちしている。
「待たせたな、世界! 俺様の登場だ!」