【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
上空に待機していた地上軍を降ろし、基地の占領行動に当たらせるが、やはり無抵抗だった。
お互いの被害がゼロだったのは喜ばしいことだが、シロウは納得がいかない。これまでのLBU軍は、降伏などせず必死に抵抗してきた。たとえHF一機になっても決して諦めない、ある種羨ましく思えるほどの粘りを見せていたはずだ。
その理由を、捕虜となった基地司令に問いかけてみる。
「反乱、とまではいかないのですが、基地内で抵抗派と反対派に分かれていましてね。抵抗派は最後まで戦うことを主張していましたが、反対派の言い分も分からないわけではなかったのです」
「理由、とは?」
「他の星系州で行われた虐殺行為の話です」
「!?」
基地司令によれば、他惑星のLBU軍基地で行われた戦闘では、捕虜も取らず基地内の人間が皆殺しにされたという。軍人はおろか、基地で働く民間人やその家族までもが対象となった。それらの凄惨な映像が、各所に出回っているのだ。黒いマントを纏ったイーグルが、地上掃射用の機関砲で無差別に攻撃を加えている映像が。
それを知った基地の兵士たちが、自分はともかく家族や知人が無残に殺されるかもしれないと恐怖し、無抵抗を主張した。最終的に彼らの意見が通り、全面降伏に至ったのだという。
「その部隊は『ナイトメア』というそうです。あ、あなたたちは違いますよね?」
その名を口にするとき、基地司令はひどく怯えていた。そしてシロウもまた、その部隊名を知っている。あの黒い動甲冑だ。
チャード・エルメンドルフから騎士師団を新たに編成するという辞令を受けた際、『ナイトメア』と呼ばれた黒い動甲冑の男。一言も発さず、不気味という印象しかない。確か
今回の遠征では、他の騎士師団が何をしているか、一切知らされていない。まさか、そんな凄惨な事態になっているとは。
シロウは憤りを感じたまま、街の様子を確認しに行った。占領業務に当たっている地上軍は規律正しく、民間人に手を出していない。そもそも統合作戦本部から厳命が出ているのだ。彼らは同じ連邦国民なのだから、当たり前のことである。
『ナイトメア』部隊に対しては、統合作戦本部は何も言わないのだろうか。
街の様子に物理的な問題はないようだった。だが、人々の目は恐怖に怯えている。
シロウの軍服姿を見て、青ざめた顔で目を逸らす。民間にも『ナイトメア』の恐怖が浸透しているようだった。
誰もシロウに近寄ろうとしない中、スカーフを頭に被り、籠を持った一人の女性が歩み寄ってきた。
「お兄さん、パンはいかが?」
「いらん」
食品の売り込みか。腹は減っていない。というより、食欲が湧かなかった。
「そう言わずにさぁ」
「すまん、そんな気分じゃないんだ」
「じゃあ、他のもの……そうねぇ、『ナイトメア』の正体とかはどうかしら?」
「だから、いらんと……待て。今、なんと?」
ここでようやく、シロウは女の顔を凝視した。
「お、お前……」
「あの素敵な夜以来ね。お久しぶりシロウ」