【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「モコさーん! バイパーキャノン、最高だ!」
「お! 何機落とした?」
「5機!」
三沢ゴウガは、格納庫で舞鶴モコを見つけるなり、弾むような足取りで寄ってきた。
先の戦闘で使用した新装備、25センチ二連装滑腔砲は、モコが独自に開発したものだ。
「おー、いっぱい落としたねえ」
「でも、これで弾切れになっちゃったよ。もっと増やせないかな?」
「あー……あれね。皇国の錬金術士でも、オガネソンの安定化は難しいらしくってねえ……」
新装備用の専用弾――
原子番号118のオガネソン(Og)は自然界には存在せず、半減期はわずか0.89ミリ秒しかない。それを錬金術士たちが、ウィークボソンやグルーオンを媒介とした高位錬金術によって強引に安定化させようと試みているが、なかなか色よい返事はもらえないらしい。
ようやく成功した10発を前回の補給で入手できたものの、現段階での量産は絶望的だった。
「そこを何とか! モコさん!」
「そう言われてもねえ」
「あまり無茶を言うものではありませんよ、ゴウガ」
モコに向けて両手を合わせ、必死に拝み倒すゴウガ。その様子を見かねたデルフィーヌ・ランディヴィジオが、苦笑混じりに咎める。
そこへ、小さな人影がタタタ、と足音を響かせて近づいてきた。
「おねえちゃんを困らせるな!」
ゴウガとの間に勢いよく割り込み、そのままモコに抱きつく。
「うおっ、シュユ!」
「おねえちゃん!」
舞鶴シュユは、モコの実の妹だった。シュユの抱きつき癖は、もっぱら姉に対して発揮される。
「大丈夫だよ、シュユ。ゴウガも分かってて言ってるだけさ」
モコは妹の頭を優しく撫でながら宥める。非常に仲の良い姉妹であり、特にモコはシュユの卓越した才能を高く買っていた。自らの道を巫術士ではなく、裏方に徹する機術士へと変えたのも、すべては妹を支えるため。
「あー、ごめんごめん。別にモコさんを責めてるわけじゃないんだ」
ゴウガが困ったように頭をかく。しかし、なぜか次の瞬間、拳を力強く握りしめて天に突き出した。
「だが! バイパーキャノン量産の暁には、連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ!!」
「うおおおおお! ジーク・ジ○ン!! ジーク・ジ○ン!!」
ゴウガのノリに合わせ、モコまで一緒になって拳を突き上げる。
「私たちは連邦を助ける側なんですから、叩いちゃダメでしょ。モコさんも悪ノリに乗らないでくださいまし」
デルフィーヌの痛烈なツッコミまでが、この場のワンセットだった。
息の合った二人の様子に毒気を抜かれたシュユは、ひとしきり姉の抱き心地を堪能してから、身体を離す。
「まあ、いいけどさ……。おねえちゃん、アレは何?」
シュユが指さした先には、巨大な紅玉が鎮座していた。HFのコックピットである
「ああ、あれ? レイ君が三傑の一人のHFを撃破したでしょ。そのイーグルから射出された操魂球を持ち帰ってきたのよ。調べて欲しいって。まあ、連邦の最新イーグルの性能をサンプリングするのには丁度いいからね」
「ふーん。で、パイロットは?」
「乗っていなかったわ」
――
「そっか、脱出済みだったのね」
「ごめん、完全に盲点だったよ」
星菱レイは、艦橋へと続く回廊を歩きながら、横田ユイにイーグルパイロットを取り逃した件を報告していた。
「まあ、仕方ないわよ。HF自体は無力化できているんだから十分。パイロットの捜索は、現地の
「うん。それに、今はそれどころじゃないしね」
アナポリス星系州の惑星アンティータムから
目標の星系までは、
艦橋の自動ドアが開いた瞬間、スージーの張り詰めた声が鼓膜を震わせた。
「ええっ!? 来ていない!?」
明らかなイレギュラーが発生している。ユイとレイは顔を見合わせ、すぐさまスージーの元へと駆け寄った。
「何かトラブル!?」
「あ、ユイちゃん! 今連絡が入ったんだけど……目標の惑星に、ANU軍が現れなかったそうなの」
スージーの説明によると、当初はLBU軍本部の予測通り、星系州の外縁部にANU軍艦隊が捉えられたという。その直後、強力な霊電子攻撃が感知され、現地軍は総攻撃の予兆として身構えた。
しかし、一向に敵のHF部隊が降下してくる気配はなく、やがて霊電子攻撃が止むと同時に、敵艦隊の反応も忽然と消え去っていたのだという。
「一体、敵は何がしたかったのかしらね、ユイちゃん」
「……っ! 艦長、すぐにアナポリス星系州へ反転して!」
「え?」
「敵の真の狙いは、惑星アンティータムの再襲撃よ!」