【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
惑星アンティータムのLBU基地は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄へと変貌していた。
一度はANU軍を撃退し、勝利の高揚感に沸いていた矢先の、間髪を入れない再襲撃だ。
『
防空システムが機能不全に陥る大混乱の中、上空から降り立った敵HFの背には、不気味な黒いマントが翻っていた。かねてより『ナイトメア』部隊として噂され、恐れられていた恐怖の精鋭隊である。
黒マントのイーグル軍団は、警告も宣戦布告もなく、無防備なLBU基地へ向けて容赦ない蹂躙を開始した。ろくに迎撃のHFすら発進させられず、防衛線は一瞬で崩壊する。
『ナイトメア』部隊の猛威は、兵器だけに留まらなかった。基地の重要施設を次々と破壊し、装甲車両や、四方に逃げ惑う人間たちへ向けて、無慈悲な銃撃を浴びせかける。軍人か民間人か、その区別すらしない無差別な虐殺だった。
ようやく平和を手に入れたはずの惑星アンティータムが、再び血の海と化していく。
かろうじて出撃を果たした、数少ないLBU軍HFの一機――防衛隊長の乗機が、黒マントイーグルの振るう巨大な両手剣によって一刀両断された。
「た、頼む! 命だけは助けてくれ……!」
黒い動甲冑の男は、隊長の悲痛な懇願を一顧だにせず、ただ無機質に大剣を振りかぶった。
『……すまんな』
無慈悲な刃が、隊長の首筋目掛けて振り下ろされる。
――だが、その大剣が肉に届くことはなかった。
刃が首を断つ寸前、どこからともなく現れた一人の男の「刀」が、その一撃を寸前で受け止める。大剣と刀の刃が激しく擦れ合い、火花が夜の闇に弾けた。
九死に一生を得た隊長は、何が起きたのか理解できず、恐る恐る伏せていた顔を上げる。
「早く逃げろ!」
薄汚れた外套を纏った男に怒鳴られ、隊長は慌てて立ち上がると、無我夢中で走り去ってく。
外套の男は、ゆっくりとフードを跳ね上げ、その素顔を晒した。
「よう。ロードンの本部ビル以来だな、……『ナイトメア』」
不敵な笑みを浮かべたシロウ・カデナは、一旦大きく間合いを取って対峙する。
「あいつは完全に降伏していたじゃないか。なぜ殺そうとした」
『……』
シロウの問いかけに対し、黒い動甲冑は微動だにせず、沈黙を貫く。
「そうかい。じゃあ、剣に聞くしかねえな!」
地を蹴り、シロウが再び斬りかかる。動甲冑の男もまた、大剣を巧みに操り、その剛腕の一撃を受け止めた。
何度も火花を散らし、激しい金属音が戦場に響き渡る。
やがて、互いの得物が噛み合う激しい圧し合い――鍔迫り合いの形となり、両者の顔が至近距離で交錯した。
「とある人に、お前の声を聴かされてな。その声にはボイスチェンジャーが噛まされていたもんで、半信半疑だったんだが……」
お互いに全力を込めて剣を押し込んだ後、反動で弾かれるようにして距離を取る。
「今の剣筋で確信した! お前、アラスだな!」