【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

310 / 310
第九十話 策略
Part-A


 第11遠征空母打撃群(11th ECSG)は、統合参謀本部の指定した星系へと到達。周囲の宙域を念入りに哨戒した後、球形陣の中心に位置していた強襲揚陸艦を惑星に向けて送り出した。

 

 強襲揚陸艦LHD-503『キアサージ』のHF格納庫では、整備員たちが課された出撃前チェックを慌ただしく進めていた。並び立つHFイーグルの背には、不気味な黒いマントが装備されている。

 

 黒マントは『ナイトメア』部隊にしか支給されない、まさに恐怖を象徴する特異な装備だった。その存在は味方にすら秘匿されており、ご丁寧にも機体表面の認識番号などはすべて削り取られ、どこの所属であるかも判別できないよう隠蔽されている。通常任務に戻る際には再度塗り直すという、徹底した情報統制ぶりだ。

 

 その巨大な格納庫の片隅に、パイロットスーツに身を包んだ屈強な男たちが一列に、計14人整列していた。彼らの正面には、同じパイロットスーツを着用した小柄な女性が毅然と立っている。

 

 静寂が満ちる中、彼らの前に全身を黒い動甲冑(Powered Suit)で包んだ男が現れた。ズシュン、ズシュンと駆動系特有の重苦しい足音を響かせ、男は列の正面で足を止める。

 

気をつけ(Attention)!」

 

 小柄で白いロングヘアの女性――カタリナ・アヴィアーノが、鋭く張り詰めた号令を発した。

 

 背後に並ぶ屈強な男たちが、一斉に寸分の乱れもない直立不動の姿勢を取る。

 

「ああ、楽にしてくれ」

 

 黒い動甲冑の主は、アラス・エルメンドルフだった。頭部装甲は開放され、その素顔が露出している。

 

休め(At ease)!」

 

 再度放たれたカタリナの号令により、男たちはわずかに姿勢を崩し、待機姿勢へと移行した。

 

 アラスは、自らの忠実な部下である第2騎士師団(2nd Cavalry Division)HF部隊の隊員たち――いや、『今』この瞬間においては、『ナイトメア』部隊の構成員となった彼らを静かに見渡す。

 

「諸君! 統合参謀本部からの指令が下った。これより、予定通り悪夢作戦(オペレーション・ナイトメア)を開始する!」

「「「Yes Sir!」」」

 

 部下たちの一糸乱れぬ咆哮のような返答を受け、アラスは重々しく頷く。

 

「今伝えた通り、今回は『剣墓』だ。一切の妥協を排し、敵へ徹底的な恐怖を叩き込め!」

「「「Yes Sir!」」」

「本作戦に割り当てられた期限は残り少ない。あと数回の出撃を経て、我々は南西部へと撤退する。それまでは私に力を貸し、全力で任務を遂行してくれ!」

「「「Yes Sir!」」」

 

 部下たちの熱い忠誠を前に、アラスは一瞬だけ視線を落とし、押し殺したような声で言葉を繋いだ。

 

「……任務の内容について、各々思うところはあるだろう。だが、統合参謀本部からは、我々の行動が確実に効果を上げ始めているとの報告が入っている。精神的に過酷な任務だとは分かっているが、どうか堪えてほしい。……すまんな……」

 

 隊長としての苦渋が滲む言葉だった。

 

「大佐。我々は全員、相応の覚悟を持ってこの任務に臨んでいます。どうか、私たちに謝らないでください」

 

 部下たちを代表するように、副官のカタリナが凛とした声で告げる。後ろに控える男たちも、無言のまま強く肯首した。

 

「そうか……すま、いや、ありがとうな。――では、各機搭乗開始!」

 




評価、ご感想お待ちしています。

【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

救いのない鬱ゲー世界で主人公御用達の喫茶店をやる(作者:音塚雪見)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

女しか魔法が使えない世界に転生した主人公。▼しかし彼だけは男ながらに魔法が使える。▼──これは俺が主人公ですね間違いない。▼馬鹿みたいな勘違いの末、彼は「世界最強の魔女」と呼ばれるほど実力を高める。▼だが見覚えのあるキャラクターと遭遇し、とある救いのない鬱ゲーに転生してしまったのだと知った。▼──ワッツ!? あかんこのままじゃ世界が死ぬゥ!!▼ということで爆…


総合評価:6869/評価:7.65/完結:53話/更新日時:2026年07月03日(金) 19:46 小説情報

悪役令嬢の腰巾着に転生した俺、「流石はお嬢様!」と煽てながら全力で生き残る(作者:延暦寺)(オリジナルファンタジー/コメディ)

現代日本、ダンジョン攻略が国力を左右する世界。▼九条財閥の従者の家に生まれた俺は、▼幼い頃の顔合わせの最中、ここが前世でやり込んだRPGの世界であることを思い出す。▼目の前にいるのは、金髪縦ロールを揺らし高笑いする、仕えるべき主――悪役令嬢・九条葵。▼原作の彼女は、突如現れた原作主人公に負け、最後には魔人に堕ちて討伐される、哀れな噛ませ犬だ。▼当然、その横に…


総合評価:8613/評価:7.4/完結:25話/更新日時:2026年06月06日(土) 12:28 小説情報

ルノワール男爵の憂鬱(作者:道造)(オリジナルファンタジー/コメディ)

タイトルまんま▼カクヨムでも投稿しています


総合評価:17098/評価:8.71/連載:50話/更新日時:2026年07月31日(金) 19:39 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>