【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「では、勝利を祝して! 乾杯!」
「「「カンパーイ!!」」」
祝勝会と称して集まったのは、『
『ナイトメア』戦の後、しばらくして、ユイが艦長であるスージーに呼び出される。何か仕事があるのかと思ったが、意外な指示を受けた。
「祝勝会?」
「そ」
「え、そんなことしてる場合じゃ……」
今はまだ戦争中で、これから次の星系に向かうための準備中だ。ユイがブリッジを見渡すと忙しく動き回っているクルーが見える。
「いいの! あんたら連戦で疲れてるでしょ。たまには羽を伸ばしてきなさい。会場と料理は予約しておいたから」
スージーによると、祝勝会場と言ってもただの食堂で、料理は星菱レイが用意しているとのことだ。いつのまに。
「でもー……」
「今忙しいから、さっさと行ってね。しっしっ」
抵抗するユイだったが、ブリッジから追いだされた。
そうして集まった男女9名。食堂のテーブルを囲んで、わいわいがやがや。
「このカラアゲ? って美味いな。これもレイが作ったのか?」
「うん。鶏もも肉に片栗粉をまぶして油で揚げたものだよ」
ジョージ・ホワイトマンは、唐揚げを食べて、そのジューシーさに驚く。
ジョージとレイは、訓練も一緒で私生活でもつるむことが多く、この半年でかなり仲良くなった。なにせ、この『伊ー400』のクルーは殆どが女性で、男性は4人のみだ。仲良くもなろう。
「フライドチキンの一種か。レイは料理がうまいとは聞いていたが、さすがだな。肉汁があふれて美味いぞ」
「どういたしまして。解体したばかりの鶏だからね。新鮮で美味しいよ」
「ほう。……解体?」
「うん。惑星で生きた鶏を貰ったからね。首切って解体したばかりだよ」
「……レイが?」
「そうだよ。あ、ちゃんと血抜きはしているから心配しないでね」
「お、おう……」
レイの意外なスキルに驚くジョージ。幼い頃、剣術の師範に教わったらしい。命を頂くことを実感するためとか。ワイルドだ。
ちょっと引いているジョージの首に、腕を絡めてきた三沢ゴウガ。
「ジョージーぃ! 飲んでるか~」
「……ゴウガ酔ってるのか? これノンアルなのに……」
聖青騎士団のメンバーが飲んでいるのは、ノンアル飲料だ。彼らは一応成人ではあるが、まだ待機中なので酔っぱらうことはできない。
そもそも、体内にある健康管理用ナノボットによって、アルコールは即座に分解されるため、酔いたいなら、いちいち機能を切ることが必要だ。
「かわいそうに、髪の毛を切られるほうがよっぽど辛いさ~」
と、言ってユイの頭を撫でる舞鶴シュユ。
「いや、切られたのはHFの方だからね? こっちは何ともないからね?」
ユイは困った顔をしているが、シュユにされるがままになっている。
『ナイトメア』隊長機を倒す瞬間や黒マントを掲げている映像は、
人々の中で、『ナイトメア』が植え付けていた恐怖は霧散され、歓喜の声が広がっていた。
「ユイが大剣を避けたとき、切られた金髪がフワッと広がって、まるで宗教画のように、とても美しかったですわね……」
「もう、フィーまで……」
フィーこと、デルフィーヌ・ランディヴィジオがうっとりとした顔を見せる。
高画質で広まった映像の中で、特にユイが駆るHFバルキリーと、『ナイトメア』隊長機の戦闘が話題になっている。ロングヘアを模した鋼線が切られても、即座に反撃して倒した場面、その美しさも相まって称賛されていた。
映像の話で、ふと思い出したユイがレイに聞く。
「そういえば……レイ」
「ん?」
「あの映像ってレイが撮ったのよね?」
「うん。ボクが撮りました」
まるで「この野菜は私が作りました」のような顔で親指を立てる。確かにレイのHFからガンカメラで撮られた映像だが、戦闘中なのに、ずっとユイを注目というかガン見しているようだった。
「今回だけじゃなく、いつもアタシを撮ってるんじゃないでしょうね?」
「……ソンナコトナイヨ」
「んん~?」
何故か目を反らすレイ。詰め寄ろうとしたユイの元に、横須賀リンがタッパーを持ってきた。
「どしたのリン」
「うん、自室にいるアラヤにも料理を持っていこうと思って」
この場に唯一来ていなかった佐世保アラヤは自室に籠っている。
「レイ君、料理タッパーに詰めて持って行っていい?」
「いいよ」
「そういえばアラヤ来てないわね?」
「彼、こういう騒がしい場は苦手っぽいのよね」
「そうなの? 意外ね。あんなに俺様な感じなのに」
「結構、陰キャなのよ」
皆がわいわい楽しくやっているが、テーブルの隅で、もそもそ食べているミリィ・メイポート。見かねたソフィア・エルスワースが声を掛ける。
「ミリィ、どうしたの? お腹痛い?」
「いえ、ちょっとスージー先生から気になることを聞いて……」
「気になること?」
「ビリーが任務で北東部に入ったそうです……」