【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第九十三話 包囲
Part-A


 ゲティスバーグ星系外縁部に、多数の光点が現れた。光は徐々に増え、まるで球状星団のように煌めく。

 

 その光はエイトリア貴族同盟(ANU)軍艦隊の次元弾道跳躍(Dimension ballistic leap) 着空(touchdown)の残光だ。

 

 ANU軍艦隊は、第11遠征空母打撃群(11th ECSG)第14遠征空母打撃群(14th ECSG)第16遠征空母打撃群(16th ECSG)の連合艦隊で、総艦数50隻以上にもなる大艦隊。ANU遠征部隊最大の戦力である。

 

 その連合艦隊を束ねる旗艦は、最新鋭空母CVN-1068『ニミッツ』。『局所泡南北戦争』開始後に建造された新造艦で、『キティホーク』級を超える全長1,600mにも及ぶ巨大な艦船だった。

 

「全艦、着空完了!」

「担当部門は、艦内チェックをしてください!」

「艦隊内霊網(Aether Network)の再リンク確立完了!」

 

 『ニミッツ』の艦橋が、各オペレータの声でざわつく。そんな中、広域霊探(Aether Radar)担当官の魔女が声を上げる。

 

「広域霊探に感あり! 複数の高霊子反応! 対艦魔術攻撃『トマホーク』と思われます! 数は10……いえ、12です!」

 

 報告を受けた艦隊司令チェスター・エルメンドルフ提督は、落ち着いた口調で指令を出す。

 

対魔術防御(Anti-Magic Defense)を開始せよ」

「Aye, aye, sir! 全艦対魔術防御! 巡洋艦は、重力子爆雷(graviton depth chargey)射出! 神盾(イージス)艦は、空母の前へ!」

 

 副官が復唱した命令が次々に展開されていく。対艦魔術攻撃による飽和攻撃を受けながらも、スタッフは冷静だった。

 

 巡航対艦魔術攻撃ナンバー109『トマホーク』は、射程と威力こそ大きいが飛行速度は遅く、迎撃する時間は十分にある。

 

 艦隊防空を担う巡洋艦が、全力で重力子爆雷を散布する。『トマホーク』の予想進路上に無数の爆雷をばらまいた。

 

 重力子爆雷は、対艦魔術攻撃に対抗するために開発された兵器だ。重力子魚雷より安価で、大量に作製できる。

 対艦魔術攻撃の進路上にばらまくことで、魔術の霊子を減衰させ、威力を低下、あるいは消滅させることを目的としている。

 

 『トマホーク』の接近に反応した重力子爆雷が次々に爆発し、重力子による空間の爆縮を引き起こす。直撃を受けた対艦魔術攻撃は消滅し、至近を通過したものも霊子を減衰させられ、複数回の爆発を受けて消え去った。

 

 しかし、それでも切り抜けてくる『トマホーク』が2発ある。巡洋艦や空母からも重力子砲を撃つが、なかなか命中しない。

 

 空母の至近まで到達したが、その間には神盾艦が割って入る。対艦魔術攻撃は舷側にある巨大な盾に命中。大爆発を起こすが、盾に仕込まれた爆発反応装甲(ERA)の重力子弾頭が連鎖的に起爆し、対艦魔術攻撃の威力を減衰させて内部への貫徹を防ぐ。盾は大破したものの、神盾艦本体は無事だ。

 

 多重魔術攻撃防御策により、空母に被害はない。完全に防ぎ切った。

 

 しかし、それでは終わらない。チェスターは即座に次の指令を出す。

 

対霊戦(ASW)開始! 逃すなよ!」

 

 対霊戦(Anti-shaman warfare)とは、エーテルステルスを纏った霊電子戦艦に対する戦闘のことだ。先ほど『トマホーク』を放ったのは、局所泡連合(LBU)軍の霊電子戦艦で間違いない。

 

 対艦魔術攻撃の射出地点は即座に艦隊へ共有され、駆逐艦や哨戒機が殺到する。計6隻の敵艦を追い詰めた。ここで逃せば今後の脅威となるため、確実に仕留めたい。

 

「やはり攻撃してきましたね」

「うむ。事前の情報通りだな」

 

 副官に答えるチェスター艦隊司令。事前にゲティスバーグ星系の戦力を霊電子戦艦で哨戒させていた。これまで何度も対艦魔術攻撃に苦しめられてきたため、対抗策を携え、提督自らANU本土から北東部へ遠征してきたのだ。徹底した訓練を重ねたことで、対艦魔術による飽和攻撃にも冷静に対処できた。

 

――

 

 敵艦予想地点周辺で、セーラー服(この場合、学生服ではなく水兵服のこと)を模した装束装甲を持つ人型対霊哨戒機HFP-3C『オライオン』が、棒状の霊銀を仕込んだソノブイをばらまく。多数のソノブイから霊波が発せられ、敵艦を探る。

 

 対霊探隠ぺい術(エーテルステルス)を施した霊電子戦艦は、通常の霊探では見つからない。ただし、複数方向の霊波には微弱な反応を示す。

 

 『オライオン』のパイロットで、対霊戦に特化した魔女が感覚を研ぎ澄ます。

 

「……見つけた!」

 

 魔女は即座に座標を味方へ伝達。連絡を受けた駆逐艦が殺到し、重力子魚雷などで敵艦を撃沈した。

 

――

 

「司令、敵艦6隻を撃沈しました」

「ふん。賊軍が調子に乗りおって。雉も鳴かずば撃たれまい(There is safety in silence.)だ」

 

 霊電子戦艦の主任務は、あくまで霊電子戦だ。姿を隠して任務にあたることが重要であり、自ら攻撃することはない。これまでも自衛用の魚雷を持つだけで、対艦武装はしていなかった。

 LBU軍は新規開発された対艦魔術を用いることで、攻撃にも転用できる攻撃型霊電子戦艦を開発した。しかし、それは諸刃の剣でもある。攻撃をすれば居場所を特定されるということだ。位置を特定された霊電子戦艦は無力だった。

 

「では、ペンシルベニア星への強襲揚陸戦を準備せよ。周囲への哨戒も怠るなよ」

「Aye, aye, sir!」

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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