【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第九話 青赤
Part-A


『畜生!『青赤』だ! 全員撤退しろ!』

 

 絶望的な叫びが響く最中にも、連合軍のHFがまた一機撃墜された。

 

 撃墜したのは、『かが』第401人型機動戦闘飛行隊第一中隊の隊長、横田ユイが駆る『ブルーリボン01』。敵軍からは『青い稲妻(Blue Lightning)』の異名で畏怖されていた。そしてその傍らには、同様に『血色の影(Blood Shadow)』と呼ばれる僚機が寄り添っている。

 

 ユイは新星系戦を経て確かな手応えを掴んでいた。小銃による射撃は最小限に留め、最高速での接敵と同時に薙刀で敵機を両断する。彗燐光を纏った『ブルーリボン01』が、一切の減速なしに戦場を縦横無尽に駆け抜ける姿は、まさに蒼天を裂く稲妻そのものであった。

 

 一方、レイの乗る『ブルーリボン02』が『血色の影』と呼ばれる理由は二つある。一つは、機体カラーを禍々しいまでの暗赤色に染め上げていること。そしてもう一つは、01が撃ち漏らした敵機を、文字通り影のように追尾し、確実に息の根を止めるからだ。一度狙われれば、最後。その牙から逃れられる敵機は存在しない。

 この二機が織りなす『青赤』の連携は、今や敵味方双方の間に広く知れ渡りつつあった。

 

――

 

「艦長! 敵駆逐艦より降伏勧告受諾の通信が入りました」

「そう」

 

 『かが』の艦長・呉ナナ1等術佐は通信士に応じ、全部隊へ戦闘停止を指示した。

 

 6隻いた敵駆逐艦が残り1隻となった段階で、こちらが出した降伏勧告が受諾されたのだ。これによって戦闘は終結。戦域に残っていた僅かなHFも、すべてが降伏を受け入れた。

 

 第04護衛隊群第04護衛隊が、ホーロー国星系の警備任務を遂行していたところへ、マンジュン国の艦隊が侵入してきたのが事の発端である。

 敵は自らを『懲罰艦隊』と称し、赤壁連合を脱退したホーロー国を武力制裁する目論見だったようだ。

 だが、その陣容は6隻の駆逐艦に対してHFの搭載数が極端に少なく、連合軍の深刻な装備不足が浮き彫りとなっていた。

 

 降伏した駆逐艦より通信が繋がる。スクリーンには、敬礼を捧げる壮年の男性が映し出された。

 

『東海艦隊所属956-E『ヴレメンヌ』艦長、ジョ・コモウ大佐です。降伏を受け入れていただき、感謝いたします』

「大八洲皇国第04護衛隊群第04護衛隊、DDH-5184『かが』艦長、呉ナナ1等術佐です」

『地球条約に基づき、捕虜としての正当な扱いを希望します』

「もちろんです。条約を遵守いたします」

 

 承諾したナナだったが、コモウ艦長の背後に映る艦橋内の様子に、言いようのない違和感を覚えた。

 

 艦橋要員たちが、なぜか涙を流しながら床を清掃している。そしてその傍らには、血塗れになった死体らしきものが、物言わぬ肉塊として無造作に転がされていた。ナナは眉をひそめ、問いかける。

 

「……失礼ですが、そちらで何が起きたのでしょうか?」

『ああ、これですか? クズ野郎……いえ、政治将校の死体が転がっているだけです。私の部下が降伏の受諾を進言した際、その男は躊躇いもなく『首輪』を作動させやがった。……あとは、私の判断で処分したまでです』

 

 『首輪』。それは普遍党の政治将校が、開魂者(Openian)を絶対服従させるために装着させている非道な装置だ。

 

 手元のボタン一つで首輪を爆破し、装着者を即座に殺害できる。普遍党の支配下において、開魂者は人間ではなく、ただの奴隷として扱われていた。

 

 政治将校は艦長をも凌ぐ権限を持つため、この事態は明白な反乱に当たる。しかし、ナナは艦長として、その心中を察するに余りあった。もし自分の部下が同じ目に遭えば、自分も同じ決断を下しただろう。

 

「……状況は理解しました。こちらの要員を派遣しますので、乗員の皆さんを集めてください。直ちに『首輪』の解除作業を行います」

『か、感謝いたします……! この御恩は、生涯忘れません!!』

 

 スクリーン越しの艦長が、涙を溢れさせながら最敬礼を捧げる。彼らがどれほど長い間、不当な扱いに耐えてきたのか。たとえ捕虜交換の機会が訪れたとしても、彼らは自国への帰還を拒むに違いない。

 

 もっとも、その時まで『普遍党』という組織が存続していればの話だが。

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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