【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
レイがこれまで放った技。その全てがビリーに通じなかった。
受け流しを封じられ、月面の戦いでジークフリートに放ったキョウカスイゲツの小太刀も躱され、刀装備のイーグルを倒した居合術も効かず、『ナイトメア』隊長機の技まで当てられかけた。
生身のビリーとやったときより、かなり強い。
レイは、以前ビリーと試合をしたとき、まだ実力を発揮しきっていないような気がしていた。実際に目の当たりにすると、その理由が分かる。
どうやら、試合で使用した木製の両手剣では、重量が足りなかったようだ。今は金属製の巨大な剣を使い、さらに1.5Gという高重力もうまく利用して、その質量を武器として打ち込んでくる。
これが彼の本来の実力ということか。
『次はこれだ』
攻めあぐねているレイをよそに、ビリーはまた構えを変える。
2本の大剣をまとめて握り、まるで一本の剣を持つような構えを取った。重ねた刃には間隔があるため、まるで――
(二枚刃のカミソリみたいだ)
そうレイが思った瞬間。
『Eagle twin-blade(鷲の二枚刃)!』
「いや! まんまかよ! 鷲関係ないじゃん!」
レイには珍しくツッコミを入れてしまう。ゴウガの癖が移ったか。
しかし、それが隙を作ってしまった。ビリーは一気に踏み込み、まるで野球のバットのように振りかぶると、強烈な横薙ぎを放つ。
「しまったっ!」
なんとか小太刀で受けたが、衝撃を逃しきれず、ついに刃が折れた。
『今のは、二枚刃をほんの少しずらして時間差をつけ、衝撃を二重に与えて物質の抵抗を相殺し、剣を破壊する技だ』
もしゴウガだったら「フタエノキワミじゃねーか!」と叫ぶところだが、レイはそれを知らない。
『得意の短いカタナを破壊した。降参してMs.ユイに会わせろ』
「……」
レイは当然、それには答えない。刃の折れた小太刀を納刀し、太刀一刀を構える。
『そうか。続けるか。……そうこなくっちゃな!』
ストライクイーグルは2本の大剣を両肩に乗せた。先ほどの大上段からの打ち下ろしを、今度は左右同時に放つつもりだ。
『マクドネル・ダグラス流奥義、Double-headed eagle(双頭の鷲)!』
左右の大剣が、Ⅴの字を描くようにバイパー・ゼロへ襲い掛かる。
『一本の剣では防御しきれまい!』
勝利を確信したビリーの叫びが響く。だが、レイは逆に冷静になった。
HFの左右の肩から斬撃が入り、真っ二つではなく三つに分かれるはずだったバイパー・ゼロは、寸前で一本の太刀だけで防御した。太刀の峰に左手を添え、衝撃を両手で支える。片刃だからこそできることだ。
『なにぃ!?』
逆に驚いたビリーは、機体を引いて距離を取ろうとする。だが、大剣は太刀に吸い付いたように離れない。
テン・シント流の橋かかりという技の応用だ。本来は太刀で薙刀などの長物に対抗するための技で、柄にぴたりと張り付き、長物を封じる。
お互いの刃が擦れ、火花が散る。
『このっ!』
押しても引いても離れないバイパー・ゼロに業を煮やし、ビリーが崩しを入れる。
レイはその瞬間を逃さなかった。
(テン・シント流剣術極意――エイゲツの太刀)
バランスが崩れた2本の大剣を横へ薙ぎ払い、返す刀でストライクイーグルの腰装甲の隙間へ刺突を入れた。股関節に致命的なダメージが入る。
『がはぁ!!』
パイロットのビリーにまで衝撃が伝わった。HFがダメージ限界を迎え、ストライクイーグルは
「おっと」
レイは、前回のようにパイロットを逃がさないよう、空中で操魂球を掴み、確保した。即座に自身もHFを降り、手の上にある操魂球へ刀を向ける。
「聞こえてるんだろ。出てこい」
数瞬後、操魂球の表面が波打ち、短い金髪に青い目の男が、手を上げて出てきた。間違いない。ビリー・エドワーズだ。
「オレの負けだ。降伏する」
「うん」
ビリーは無抵抗のまま、手錠を掛けられる。
「Ms.ユイには会えないだろうか……」
「まず捕虜として扱う。その後はユイ次第」
「そうか……」
「……そんなにユイに会いたい?」
何故、そこまでユイに執着するのか気になった。
「ああ、彼女が連邦をどうしようとしているのか、ずっと考えていた。その答えを聞きたい」
「……以前、結婚がどうとか言っていたけど」
「は? ああ、そんなこともあったな。忘れていたよ……」
「そっか」
どうやらユイに横恋慕しにきた、という訳ではなさそうだ。
(いや、それはそれでムカつくな)
続く