【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
ジョージのHFが倒れてから、ソフィアは半狂乱だった。操魂球を取り出して調査を始めたときも、そばを離れず心配そうに見守っていた。さすがに疲れたのか、今は格納庫の隅で寝袋で寝ている。片時も離れたくないようだ。
「ところで、なんで操魂球を直すと大丈夫なの? ジョージは異空間にいるんだよね? そこから出せないの?」
レイは単純な疑問を呈した。操魂球の中でパイロットは異空間に居るとされている。そのためHFがいくら高Gで動いても、パイロットの肉体は無事で済むと説明されていた。スージーは修復作業しながら答える。
「そうねぇ……その異空間ってなんだか知ってる?」
「いや、知らない」
「実はよく分かってないの」
「はぁ?」
レイは驚きの声を上げた。普段から搭乗しているものが分からないとは。
「原理が分からなくても使うことはできる。それは人類が火を見つけた時も、その原理を分からずに使って問題なかったわ。霊子力学の基礎となる量子力学も『考えるな計算しろ』って言われるしね」
「でも……」
「まあ一応、仮説はあるわよ。一番有力なのが、エーテル場ね」
スージーは説明しながらも手を止めない。ナノボットのキーボードをものすごいスピードで入力している。
「エーテル場って、
「そう。でもあれは、エーテル場の極々表層しか使ってないらしいわ。浅瀬ちゃぷちゃぷね。もっと深層では、全ての3次元空間の情報が書き込まれてるとか。まあ、その辺りは『魔女の森』のババァども……
大きな紅玉に小さな欠片を当てはめ、何か樹脂のようなものを塗り込み、何かの光を当てて固めた。固まったのを確認すると工具で研磨する。
「操魂球ってそんなことできるんだ」
「そうよ。操魂球はね、エーテル場や、
「霊量子コンピューター?」
「3次元空間とエーテル場を演算して繋げる計算機。操魂球に
欠片を戻したところは、既に元通りになっていた。どこが欠けていたか分からないくらいにツルツルだ。
「……それ本当に人類の技術?」
「何言ってるの。元はアンタ達がぶっ壊した『月』の技術よ」
スージーが再びキーボードを叩きだす。
「これでどうだ!」
最後に、ッターンと勢いよくエンターキーを叩くと、操魂球の表面が波打ち始めた。
「レイちゃん、お願い」
「え、うん」
操魂球からパイロットスーツ姿のジョージが現れる。ただ、意識がないのか、そのまま倒れそうになったところを、レイがキャッチした。
「どう?」
「……呼吸はある。脈拍も……正常かな」
「おっけ、検査するから、そこに寝かせて」
レイは慎重にジョージをマットに寝かせる。物音に気が付いたのか、寝袋で寝ていたソフィアが跳び起きた。
「ジョージ!!」
すぐさまマットに寝かせたジョージに駆け寄る。
「艦長! ジョージは!?」
「ちょっと待ってねソフィアちゃん。……バイタルは安定。霊力も確認できるわ。大丈夫だと思うけど、一旦医務室ね。レイちゃん、医療班を呼んできてくれる?」
「分かった」
レイが走り出すと、ジョージの瞼がゆっくりと開いた。ソフィアが顔を近づける。
「ジョージ!」
「ん……ソフィアか……」
「よかった! ほんとによかった……!」
ジョージの胸に泣き崩れるソフィア。ジョージは状況が良くわかってないようだが、ごく自然にソフィアの頭を撫でた。
続く