【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第九十九話 歓声
Part-A


「サルガス運河が……そうか。……このことをエルメンドルフ卿は? ……分かった、こちらからもフォローしよう」

 

 アンソニー・アンドルーズは自室で軍関係者から報告を受けた。局所泡連合(LBU)軍に占領され、封鎖されたらしい。エイトリア貴族同盟(ANU)軍の遠征艦隊が帰還する隙を狙われたのだ。

 

 アンソニーは、丸い腹をさすりながら思考する。

 

 実のところ、アンソニーはあまり慌てていない。サルガス運河が軍にしか使われていない時点で、貿易には影響がなく、意味をなさないと考えていたからだ。そして連邦の7割は南西部に集中しているので、3割の僻地へ行けなくなっただけのこと。

 

 彼が重視するのは、あくまで貿易ルートとしての運河だ。経済はANUが支配する南西部だけでも回っており、貿易も局所泡(ローカルバブル)ウォールを経由しなくても維持できている。

 

 両運河が使えなくても、経済的には、それほど影響はない。軍事的には痛いが。

 

(だが、レジー殿は怒鳴っておられるだろうなぁ。なんとか宥めねば)

 

 同時刻に報告を受けるレジー・エルメンドルフは怒り心頭だろう。元々遠征を決めたのはレジーだ。彼は真面目に、貴族が連邦を支配すべきだと信じてやまない。アンソニーとしては、そんな田舎など放っておけと思うのだが。

 

 ただ、遠征が長引くと他国の干渉を許してしまう。だから『悪夢作戦(オペレーション・ナイトメア)』を提案して短期決戦を目指した。残念ながら相手の方が一枚上手だったようだ。

 

 だが、これでサルガス運河に隣接したランカスター星系州とその周囲の星系州、エドワーズ卿が支配する領地の価値が大幅に下がった。これまで運河を含む領地だったため、公爵という爵位を得ていたが、もうその価値はない。

 そもそもエドワーズ卿が現地調達を反対しなければ、侵攻作戦はもっと進んでいたはずだ。軍人としての矜持らしいが、アンソニーとしては無意味に思う。

 

(ふむ。これは調(・)整(・)が必要か)

 

 いろいろ考えを巡らせていると、新たな通信が入る。

 

「やれやれ、今日は忙しいな。……私だ」

 

 ナノボットの通信ウィンドウを開き、通話を開始した。相手は軍ではなく、アンソニーの私設諜報組織である『道具箱(ToolBox)』からだった。

 

「……なに!? ……そうか。分かった。……ああ、エニグマシステムを動かせ。内容を全て遮断しろ。……必要であれば、人の流れもだ。……ああ、構わん。最優先だ」

 

 それはアンソニーにとってサルガス運河が占領されたことよりも、重大な内容だった。

 

 『局所泡南北戦争』が始まってから。いや、それ以前から必ず彼女が関わっている。

 

 普段冷静なアンソニーが、机を叩く。

 

「くそ! 偽姫め! やつが現れてから全てが狂い始めた!」

 




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【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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