【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「サルガス運河が……そうか。……このことをエルメンドルフ卿は? ……分かった、こちらからもフォローしよう」
アンソニー・アンドルーズは自室で軍関係者から報告を受けた。
アンソニーは、丸い腹をさすりながら思考する。
実のところ、アンソニーはあまり慌てていない。サルガス運河が軍にしか使われていない時点で、貿易には影響がなく、意味をなさないと考えていたからだ。そして連邦の7割は南西部に集中しているので、3割の僻地へ行けなくなっただけのこと。
彼が重視するのは、あくまで貿易ルートとしての運河だ。経済はANUが支配する南西部だけでも回っており、貿易も
両運河が使えなくても、経済的には、それほど影響はない。軍事的には痛いが。
(だが、レジー殿は怒鳴っておられるだろうなぁ。なんとか宥めねば)
同時刻に報告を受けるレジー・エルメンドルフは怒り心頭だろう。元々遠征を決めたのはレジーだ。彼は真面目に、貴族が連邦を支配すべきだと信じてやまない。アンソニーとしては、そんな田舎など放っておけと思うのだが。
ただ、遠征が長引くと他国の干渉を許してしまう。だから『
だが、これでサルガス運河に隣接したランカスター星系州とその周囲の星系州、エドワーズ卿が支配する領地の価値が大幅に下がった。これまで運河を含む領地だったため、公爵という爵位を得ていたが、もうその価値はない。
そもそもエドワーズ卿が現地調達を反対しなければ、侵攻作戦はもっと進んでいたはずだ。軍人としての矜持らしいが、アンソニーとしては無意味に思う。
(ふむ。これは
いろいろ考えを巡らせていると、新たな通信が入る。
「やれやれ、今日は忙しいな。……私だ」
ナノボットの通信ウィンドウを開き、通話を開始した。相手は軍ではなく、アンソニーの私設諜報組織である『
「……なに!? ……そうか。分かった。……ああ、エニグマシステムを動かせ。内容を全て遮断しろ。……必要であれば、人の流れもだ。……ああ、構わん。最優先だ」
それはアンソニーにとってサルガス運河が占領されたことよりも、重大な内容だった。
『局所泡南北戦争』が始まってから。いや、それ以前から必ず彼女が関わっている。
普段冷静なアンソニーが、机を叩く。
「くそ! 偽姫め! やつが現れてから全てが狂い始めた!」