【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-C

 ホーロー国においても、残党連合軍と皇軍の戦闘は継続していた。補給を完全に絶たれた連合軍は絶望的な劣勢に立たされており、各都市で籠城を決め込むなどの泥沼の抵抗を続けている。

 

 とある中規模都市では、残党連合軍が住民を人質に取って立て籠もっていた。彼らは都市の入り口をバリケードで封鎖し、包囲を敷く皇軍第7師団第11機械化歩兵連隊に対して頑強に抵抗している。

 

「畜生! 連中、全然顔を出しやがらねぇ!」

 

 バリケードの隙間から小銃を乱射するが、皇軍の兵士たちは遮蔽物に身を隠しており、弾丸は一発も掠めることさえない。このままでは弾薬も食料も尽き果て、干上がるのは時間の問題だ。連合軍側には、何としても突破口が必要だった。

 

「そうだ、開魂者ども! 貴様らが突撃してこい! つられて敵が頭を出した瞬間を叩いてやる」

 

 苛立ちを募らせていた残党連合軍の隊長が、名案とばかりに『首輪』を付けられた開魂者たちへ、理不尽極まりない特攻を命じた。

 

「そんな! せめて防弾服くらい着させてください!」

「うるせぇ! 逆らう奴は今すぐこれで爆破するぞ!」

 

 隊長は、ライター大の起爆装置を見せびらかす。その小箱からはアンテナが伸び、カバーのついた無機質なスイッチが備わっていた。これを押せば、開魂者たちの『首輪』が即座に炸裂する仕組みだ。

 開魂者たちは絶望に打ちひしがれながらも、立ち上がって小銃を手に取り、バリケードの外へと追い立てられた。

 

 しかし、その一連の醜悪な光景は、皇軍側に完全に筒抜けだ。

 

 後方の82式指揮通信車内で状況を冷静に監視していた連隊長が、静かにマイクを取る。

 

「キャスター、こちらマスター1。『首輪』解除電波を発信せよ」

『こちらキャスター。了解』

 

 やけっぱちで飛び出した開魂者たちが、バリケードと皇軍陣地の中間地点まで到達した時、劇的な変化が起きた。

 突然、彼らの『首輪』が中央から二つに割れ、力なく地面へと脱落したのだ。呆然と足を止めた開魂者たちの中心へ、皇軍側から数発の擲弾が撃ち込まれる。彼らはそれを手榴弾だと思い込み、反射的にその場へ伏せた。

 

 だが、空中で弾頭のケースが分離し、展開されたのは網のような構造物だった。それは非殺傷用の『スタンネット』。対象を包み込むと同時に高電圧による電撃を放ち、開魂者たちは意識を失い、静かに沈黙した。

 

「ちっ!! 役立たずのゴミどもが!」

 

 逆上した敵隊長が、起爆装置のカバーを跳ね上げ、躊躇なくスイッチを押し込む。

 

「……あれ? 爆発しない……? 壊れてるのか、畜生!!」

 

 何度も狂ったようにスイッチを連打し、最後には地面へ叩きつける。その滑稽な姿も、指揮通信車のモニタには克明に映し出されていた。

 

『マスター1。こちらキャスター。『首輪』爆破指令の発信源、三か所を特定した』

「アーチャー各位。聞いていたな? そいつらが普遍党員だ。対象を精密排除せよ」

 

 コールサイン『キャスター』こと87式霊電子戦闘車が、逆探知によって爆破指令の発信位置を特定。戦術データリンクを通じて、その座標は『アーチャー』と呼ばれる狙撃手(スナイパー)たちへ瞬時に共有された。

 

 高台に伏せていた狙撃手が、対人狙撃銃の引き金を引く。即座にボルトハンドルを操作し、次弾を装填して次の標的に備える。

 

「ヘッドショット。ヒット」

 

 狙撃手の傍らに控えていた観測手(スポッター)が、レンズ越しに対象を確認。激昂していた普遍党員の頭部は、文字通り消し飛んでいた。その結果が指揮通信車へと伝えられる。

 

『マスター1。こちらアーチャー3。目標を排除した』

 

 他の狙撃地点からも、次々と成功の報が届く。連隊長は、淀みなく次なる号令を下した。

 

「バーサーカー。目標を無力化せよ」

 

 漆黒の動甲冑に身を包んだ装甲歩兵部隊が、猛然とバリケードへ突撃を開始。

 

 残党軍の兵士たちはパニックに陥り、必死にレールガン小銃の銃口を向ける。だが、放たれた弾丸はすべて装甲の表面で虚しく弾け、装甲歩兵の進撃を止めることは叶わない。

 

「くそっ! なぜ効かねぇんだ! 鉄板50mmを貫通する威力だぞ!?」

 

 絶叫する連合軍兵士たちは、スタンネット銃によって次々に絡め取られていく。装甲歩兵たちは小銃も携行していたが、それを使う必要すら感じさせない圧倒的な武勇であった。

 彼らは瞬く間にバリケードを突破し、白兵戦へと移行する。

 

 一人の敵兵が抵抗を断念し、両手を上げた。装甲歩兵が確保のために近づいた瞬間、その兵士は隠し持っていたレーザー拳銃を、バイザーの目掛けて放った。バイザーは強化ガラス製だが、光は通る。レーザーならば貫通できると踏んでの、起死回生の博打だった。

 

「うおっ!」

 

 装甲歩兵がわずかに仰け反った。やった――敵兵は勝利を確信し、その場から逃走を図る。だが、装甲歩兵は倒れるどころか、何事もなかったかのように姿勢を立て直し、逃げようとした兵士の顔面を剛腕で殴り倒した。

 

「眩しいじゃねーか」

 

 普遍人の肉体など容易く貫くはずのレーザーですら、「眩しい」程度で済ませてしまう。それは、開魂者である装甲歩兵の驚異的な頑強さを如実に物語っていた。

 

 バリケード内の残党兵は、瞬く間に掃討されていく。

 

『こちらバーサーカー。バリケードクリア』

「マスター1、了解」

『こちらキャスター。都市内の全スキャン完了。人質の位置を完全に把握。残存勢力に開魂者の反応なし』

 

 実は、皇軍は戦闘開始前から、軍用ナノボットを都市全域に散布していたのだ。

 

 ナノボットは、受光素子や集音素子を備えた極小の機械粒子であり、集団で連携しながら超小型イオンドライブによって移動、索敵を行う。虫型ドローンよりも遥かに微細で、肉眼で捉えることは不可能に近い。

 大八洲皇国はこのナノボット分野において世界最高峰の技術を誇り、銀河国家群における市場シェアの9割を握っていた。

 

 この軍用ナノボットによるスキャンが、都市の全貌を完全に可視化した。完全制圧のための布石は、既に整っている。

 

「セイバー、ランサー、ライダー、アサシン各隊。こちらマスター1。都市上空より侵入せよ。人質救助および残党を制圧。重火器の使用は禁止とする。損壊は必要最小限に留めよ。ドアと窓の破壊以外、建物や家具の破損は厳禁だ。それらはすべて、未来の同胞たるホーロー国民の財産であると心得よ」

 

 都市を解放した後、住民は再びそこで生活を始める。復旧に要する時間を最小限に留めるのが理想だ。破壊の限りを尽くせば、皇軍もまた住民の恨みを買うことになるからだ。

 

「では、都市解放作戦開始」

 

 連隊長の号令一下、第1機動歩兵中隊の十数台の89式歩兵戦闘車が都市上空へと躍り出た。機体はそのまま飛行し、人質が収容されている各ビルの屋上へと降下。他の小隊も一斉に連動し、電撃的な都市制圧へと乗り出した。

 

 一時間もかからず、人質は全員無事に救出された。残党軍の兵士はことごとく殺害、あるいは拘束。皇軍側の死傷者は「0」。圧倒的な実力差を見せつけて、作戦は完遂されたのである。

 

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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