【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
人類発祥の惑星地球から銀河方位北西に位置する宙域、
その湾内星系を、2機のHFが
『ビリーぼっちゃま。先行しすぎですよ』
「ぼっちゃまと呼ぶな。コールサインで呼べ」
先行する機体は、古代から中世にかけての騎士を思わせる、重厚な全身鎧のフォルムだ。銀色の装甲には金色のラインが走り、背部にはマントと2本の大剣を背負っている。
『ハイハイ、ガラハッド01。先行し過ぎて、味方が付いてきていませんよ』
「他が遅いんだ。やる気あんのか。……あと、こうも敵機が居ないと暇でな」
コールサイン『ガラハッド01』のパイロット、ビリー・エドワーズが駆るのは、地球自由連邦のHFF-15Eストライクイーグル。大騎士型と呼ばれる、隊長クラスのエース機だ。
『暇だからって孤立しないでください。それに、既に20機以上落としてるでしょ』
「しかしなぁ……」
『……っと、待ってください。霊探に反応あり。6機です』
「おっ! 敵か!」
『ガラハッド01』の僚機である『ガラハッド02』は、HFF-14Aトムキャット。
鎧姿の01とは対照的に、黒い鍔広のトンガリ帽子とローブを纏った、全身黒尽くめの機体だ。魔女型と呼ばれるこの機体は、あろうことかHFサイズの箒に横座りしていた。
『
「ちょっと待て!」
『Summon six.』
『ガラハッド02』のパイロット、魔女ミリィ・メイポートはビリーの制止を無視して召喚呪文の詠唱を始めた。トムキャットの周囲に、赤く輝く魔法陣が6つ展開される。
『Immortal holy beast, destroy your enemies with your flaming wings.(不死の聖獣よ、その炎の翼で敵を滅ぼせ) FOX3! FOX3!』
魔法陣から6羽の炎の鳥が具現化し、光速で射出された。長距離対空迎撃魔術ナンバー54『フェニックス』は、200光秒先の敵HF6機すべてを捕捉。それらを即座に大破させたことを確認する。
「ミリィ、あのさぁ……」
『コールサインで呼んでください、ガラハッド01。早期警戒機から連絡がありました。周辺空域にストレンジャーなし、だそうです』
「なんで、先に隊長のオレに連絡が来ないんだ」
『早期警戒機HFE-2Cホークアイのパイロットは、私の友達ですから。で、どうします?』
「……RTBだ」
『Yes Sir. 全機帰投』
各機から了解の応答が入る。すべてミリィに対しての返信だ。
「隊長はオレなんだが……」
後に『ミルザム湾戦争』と呼ばれるこの戦いは、クイラ共和国がウェーツ王国へ侵攻したことに端を発する。
ミルザム湾周辺の星系には希少な高価値鉱石を産出する惑星が多く、各国はその輸出によって経済を成立させていた。ゆえに資源の権益や国家間の主張が衝突しやすく、度々紛争が勃発する火薬庫でもある。
そんな中、鉱山利権を巡って対立を深めた2つの国があった。
独裁支配の続くクイラ共和国が、隣国ウェーツ王国へ侵攻し、全土を制圧・占領。傀儡政権を擁立して一方的に併合を発表したのだ。
この武力行使に激怒したのが、地球自由連邦である。彼らは他のミルザム湾周辺国を巻き込んで多国籍軍を結成し、ウェーツ王国解放のために即座に軍を派遣した。
皇国や帝国にも多国籍軍への参加要請があったが、折悪しく赤壁戦争の最中であったため不参加となった。逆に連邦が赤壁戦争に深く関与しなかったのも、この一件があったためだ。
多国籍軍は圧倒的な兵力で絶対的な星間優勢を確保。続く惑星攻勢作戦により、開戦から約2か月でクイラ共和国軍を駆逐し、ウェーツ王国を解放した。
クイラ共和国軍は未だ主戦力を温存しており、火種は燻っているものの、クイラ政権が多額の賠償金を支払うことで、ひとまずの終結を見たのである。