【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「また、お会いできましたね。Ms.ユイ」
「……」
各国が参加する環局所泡合同演習(Rim of the Local bubbles Exercise)、通称『リムロック』。そこでは軍事訓練のみならず、多彩な親善交流行事も開催されている。
その一つであるスポーツ大会では、サッカーや野球、バレーボールといった球技も行われているが、参加者の大半が
ユイとレイがエントリーしたのは、その中でもひときわ注目を集める武闘大会である。武道は軍人にとって必須の技能。たとえ交流戦といえども手を抜くことは許されず、どの参加者も本腰を入れて勝利を狙いにきていた。
ビリーと再会したのは、剣術部門の団体戦――しかも、その決勝という最高の舞台。
「ふふ、これはもう運命と言っても過言ではないのでは?」
「いや、単なる偶然……だと思いたいわね……」
皇国チームの布陣は、先鋒・横田ユイ、次鋒・星菱レイ、中堅・三沢ナユ、副将・背振山モモ、大将・高良台ツクミ。レイ以外の全員が女性で構成されたこのチームは、ここまで全勝という圧倒的な成績で勝ち上がってきていた。
対する連邦チームも、ビリー・エドワーズを先鋒に据え、残る4名が女性という似たような構成だ。こちらもまた、負けなしで決勝へと駒を進めてきた強豪である。
剣術部門では身体強化の使用を前提とし、防具を着用せずに木剣を使用する。相手に有効打を与えれば「一本」。チームの勝敗は星取り戦形式で、計5戦の勝利数によって決せられる。
「いやはや、皇国の武道着姿もまたお美しい。Ms.ユイの凛々しさがより一層際立ちますな」
「はぁ、どうも……」
ユイたち皇国チームは白の上衣に黒袴の道着姿。対して連邦側は、意匠を凝らした騎士服を着用していた。
「しかしなぁ、お相手をしたいのは山々なのだが……。審判、順序の入れ替えは可能か?」
「どうされましたか?」
「いや、騎士としてレディを斬るのは、いささか不本意でね……」
ビリーは騎士道精神からか、女性を「守るべき対象」として見ており、戦うべき相手としては認識していないらしい。
ちなみに開魂者においては、女性の方が平均的に霊力が高く、戦闘能力で男性を上回ることも少なくない。そのため剣術大会の参加比率も女性が高く、男女混合で行われるのが常識であった。
「「「「「はぁ!?」」」」」
ビリーの発言に反応したのは、ユイだけではなかった。彼のチームメイトである女性4名が、一斉に抗議の声を上げる。
「ビリー! 貴方、まだそんな寝ぼけたことを言っているの!?」
「差別してんじゃないわよ、ビリー!」
「そうよ! この無自覚な女性蔑視者!」
「ばーか!」
味方からも大ブーイングの嵐。どうやらビリー、実力はあってもあまり慕われてはいない様子だ。
「え? なんだお前ら。女性に優しくするのは当たり前だろう?」
ビリーは心外そうに言い訳をするが、それがさらに火に油を注ぎ、女性陣からの罵声はより一層強まるばかり。
「あの、審判。ボクが先鋒に変更してもいいですか?」
騒ぎの中、レイが審判に順序の入れ替えを申し出た。ルール上は双方の合意があれば変更は可能とのことだ。
「レイ? いいの?」
「うん。なんか、無性にイラっときたからボクがやるよ。ユイは次鋒をお願い」
珍しくレイが不機嫌さを隠さない。どうやらユイが「戦う対象外」として避けられたことを、彼女の戦士としての矜持を侮辱されたと感じたらしい。
「お、いいぞ。お付きの君」
味方にボロクソに言われていたビリーは、レイが先鋒を引き受けたことに満足げな笑みを浮かべた。しかし、街で自己紹介を交わしたはずにもかかわらず、やはりレイの名前は彼の記憶に刻まれていないらしい。
「お付きじゃない。星菱レイだ」
「そうかMr.レイ。こっちは全力でいくぞ」
「当然」
レイは武器置き場へと向かい、太刀を模した木刀と、短めの小太刀を手に取った。
「ほう、貴殿も二刀流か?」
「ボクの流派――テン・シント流では両刀術って言うんだ」
「なるほど、貴殿も武道を修める者か」
ビリーは巨大なツーハンドソードを模した木剣を2本、軽々と持ち上げた。
二人は審判に促され、試合場の開始線に立つ。両チームから熱い声援が飛ぶが、なぜか連邦チームの女性陣までがレイを応援しているようだ。
ビリーは巨大な剣を胸の前でクロスさせ、レイは大小の木刀を並行に構える。
呼吸を整え、身体強化のイメージを鋭く練り上げると同時に、木刀の強度を霊力で極限まで補強する。
「マクドネル・ダグラス流、ビリー・エドワーズ。参る!」
「テン・シント流、星菱レイ。よろしくお願いします」
「始め!」