【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-B

 開始の合図と同時に、ビリーはいきなり全力で踏み込んできた。

 

「ハァッ!!」

 

 左からの鋭い袈裟斬り。

 それは空気を切り裂くというより、衝撃波を纏って叩きつけるような一撃だった。

 

 レイは回避不能と判断し、太刀と小太刀を交差させてこれを受け止める。

 

 ズンッ、と凄まじい衝撃が全身を貫いた。身体強化を施していなければ、木刀ごと腕をへし折られていただろう。

 

 ビリーの持つツーハンドソードは、その名の通り本来は両手で扱う大剣だ。それを片手で軽々と操る規格外の膂力は、模擬戦用の木剣といえども脅威そのものであった。

 

「良く受けたな! だが、まだまだいくぞ!」

 

 次は右からの袈裟斬り、さらに左。避ける間を与えぬ連続攻撃が叩き込まれる。レイは完全に防戦一方へと追い込まれた。

 

 両刀術は防御に優れているが、受けに回っているだけでは攻撃に転じる隙がない。

 数合打ち合い、衝撃に慣れたところでレイは戦術を切り替えた。純粋な「受け」から、攻撃を逸らす「受け流し」へ。

 

 太刀で大剣の軌道をわずかに逸らし、ビリーのバランスを揺さぶる。その一瞬の隙を突き、小太刀での刺突を放つ――が、これは防がれた。

 崩された体勢を、ビリーが強靭な脚力だけで強引に立て直す。

 

 ビリーは大剣をクロスさせてレイの刺突を阻むと、その衝撃を利用してバックステップを繰り出し、間合いを取った。

 

「やるな! 嬉しいぞ! では、これはどうだ! Eagle wing stance!(鷲翼の構え!)」

 

 大剣を鳥の翼のように左右へ広げ、先ほどよりさらに速度を上げて突進してくる。

 

「からの、Eagle flapping!(鷲の羽ばたき!)」

 

 左右から挟み込むような、猛烈な同時斬撃。

 防御はしたが、左右からの圧力で衝撃を逃がすことができない。

 

「くっ……!」

 

 レイの口から、わずかに苦悶の声が漏れた。

 

「まだまだぁ! Eagle spiral!(鷲の旋回!)」

 

 今度は大剣を広げたまま機敏に体を回転させ、竜巻のごとき連続攻撃を繰り出してくる。腕力に加え、遠心力までもが乗った重厚な打撃。

 一見して隙がありそうに見えて、実はない。単調な回転ではなく、一撃ごとに角度やタイミングを変則的に織り交ぜてくる。

 

「どうした! どうした!」

「……どうでもいいけど、なんでいちいち技名を叫ぶのさ」

「カッコイイからだ! Special arts! Eagle X-SLASH!(超技!鷲のⅩ字斬り!)」

 

 衝撃波を伴う左右同時の袈裟斬りが迫る。まともに受ければ、ただでは済まない必殺の一撃。

 

(テン・シント流極意、ミカヅキの小太刀)

 

 レイは技名を口には出さず、静かに、そして鋭く繰り出す。

 左右の大剣が一点に集中する、その極限の瞬間を狙い、小太刀の一振りで2本ともを受け流した。その木刀の軌道は、夜空に浮かぶ三日月のように美しい曲線を描いていた。

 

「なにぃ!?」

 

 全力の攻撃をするりと逸らされ、ビリーが大きく体勢を崩す。流石の彼も、驚愕に目を見開いた。

 

(小太刀は防御だけじゃない。次の攻撃への布石だ)

 

 一歩深く踏み込み、受け流した小太刀を流れるような動作で喉元へ突きつける。ビリーは反射的にバックステップで回避しようとしたが、なぜか体が動かない。

 

「足が……!?」

 

 レイが踏み込んだ際、右足をビリーの左足の後ろに差し込み、逃げ場を封じていたのだ。ビリーの喉元寸前で、小太刀の先がピタリと止まる。

 

「……降参だ」

「勝負あり! ホシビシ選手の勝利!」

 

 ビリーが素直に負けを認めると、審判が高らかにレイの勝利を宣言した。一瞬の静寂の後、会場から爆発的な歓声が上がる。

 

「負けたよ。強いな貴様。名前、しっかり覚えたぞ。レイ・ホシビシ」

「そりゃどうも。君も強かったよ、ビリー」

 

 お互いの健闘を称え、二人は固い握手を交わした。

 

「貴様のメインウエポンは、その短いカタナか?」

「小太刀だけじゃなくて、どっちも使えるよ。君も、本来はもっと重量がある剣を使うんだろ」

「お見通しか。いずれ我が愛機ストライクイーグルと、愛剣バンカーバスターをお見せしよう。そういえば明日はエレファントウォークがあったな。そこで披露できそうだ。演習で再戦の機会があれば、次は負けん。ではな!」

 

 手をヒラヒラとさせ、爽やかに連邦チーム側へと戻っていくビリー。メンバーに快く迎えられ――

 

「あんた、負けたくせに何かっこつけてんのよ!」

「そうよ! ヘラヘラしてんじゃないわよ、この馬鹿!」

「ばーか!」

 

 ――ることはなく、案の定チームメイトの女子たちに袋叩きにされていた。

 

「ぎゃーす!」

 

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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