【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
エレファントウォーク。
それは、多数の機動兵器や航空機が滑走路に一堂に会し、整然と隊列を組んで地上滑走を行う示威行動だ。
有事における即応体制と作戦能力を誇示し、部隊の士気を鼓舞するために実施される。今回は演習参加諸国による合同実施であり、各国の機動兵器がずらりと並ぶ光景は正に圧巻の一言。特に、巨大なHFの隊列が放つ重圧感は、凄まじい迫力であった。
「さすが連邦軍ね。物凄い物量だわ」
呉ナナは『かが』の艦橋で、エレファントウォークの中継映像に見入っていた。この映像は軍事力の誇示として、全銀河国家群に向けてリアルタイムで配信されている。
その狙い通り、連邦軍が誇る物量は圧倒的だ。HFの数こそ皇国も引けを取っていないが、それ以外の航空機型機動兵器や各種補助機体で、数キロに及ぶ広大な滑走路が埋め尽くされている。
膨大な兵器群の中でも、花形であるHFは隊列の前方を占めていた。
先頭を飾るのは、連邦軍のHFF-15Eストライクイーグル。2本の大剣とマントを装備した隊長機だ。それに続くのは銀色のHFF-15Cイーグル数十機。右手にHFサイズの
続いて皇国のHFが登場する。もちろん、『かが』所属の第401人型機動戦闘飛行隊だ。先頭を行くのはユイの駆る濃い空色の零式人型機動戦闘機。一糸乱れぬ、堂々たる行進である。
その一歩後ろに、第402人型術式作戦隊の2機が続く。他国の武骨な機体とは対照的に、巫女衣装を纏ったHFは異彩を放って注目を集めていた。
中継映像からは、見物客の興奮した声が漏れ聞こえてくる。
『オー! オリエンタルシャーマンガール!』
『ビューティホゥ!』
『ミコミコ! カワイイ!』
なんだか妙な日本語も混じっているが、観衆のウケは上々のようだ。巫女HFの後ろには、401部隊の零式たちが規律正しく行進を続けていた。
「巫女巫女ってなによ……」
ナナが呆れてツッコミを入れている間に、皇国の隊列が終わり、次の国の機体が見えてきた。
「あれが、フランクス王国軍の最新鋭機、ラファールM剣士型か」
先頭の一機だけだが、直線を多用した連邦製HFとは対照的に、曲線を多用した洗練されたフォルムが特徴的だ。その後ろには、一世代前のHFミラージュ剣士型が続いている。
さらに後方には、他国のHFが数機ずつ並ぶ。独自のHF開発に成功している国家は極めて少なく、多くは連邦やラヴァーグ国からの輸出モデルを運用している。HF開発における技術的ハードルの高さが改めて窺える光景だ。
「そういえば、今回帝国は参加していないのね」
「そうですね。戦後処理がまだ終わっていないという理由で辞退したそうです」
ふと気になって呟いたナナに、副長が即座に応答する。
「そうなの? 赤壁戦争では帝国がさっさと撤退して、皇国の方が後まで残っていたと思うけど」
「向こうの言い分ですけどね。『俺TUEEE』したがる連中にしては珍しい対応ですよ」
「ふーん。あ、そろそろ時間ね」
帝国の動向は気になるが、時計を見ると予定時刻が迫っていた。
既に
「航海長、艦隊行動準備。操艦は任せるわ。他艦との距離が近いから細心の注意を払ってね。もしぶつけるようなことがあれば、全世界の笑いものになるだけじゃ済まないわよ」
「はっ! 艦隊行動準備!」
『かが』は、眼下に広がる青い惑星の衛星軌道上に待機していた。
――
これから行われるのは、合同演習の一環である艦隊パレードだ。
通常の作戦行動とは異なり、中継の撮影映えを重視して艦と艦の距離を詰める。青い惑星を背景に、整然と隊列を組んで巡航する。
これも全世界に生中継されるため、僅かな操艦ミスも許されない。一瞬で世界中に恥をさらすことになるからだ。
艦隊の先頭を行くのは、連邦軍第七艦隊旗艦、空母CV-1063『キティホーク』。全長1,500mを誇る巨大な機動要塞である。
皇国では「航空母艦」を略して「空母」と呼ぶが、他国では単純に「
皇国では巨大な空母は廃止され、よりコンパクトな人型搭載護衛艦(DDH)へと統一されたが、他国では依然として超大型空母が現役だ。
空母はその巨体ゆえに防御上の脆弱性を抱え、常に大規模な護衛艦隊を必要とする。連邦のような大国は護衛艦を湯水のように用意できるが、少数精鋭を強いられる皇国にはその余裕がない。そのため、前線で単独での自衛戦闘も可能なDDHを採用している。
各国の軍事ドクトリンの違いが、艦の形状や運用思想にはっきりと表れていた。
『キティホーク』の後方には、皇国のDDH-5184『かが』と、フランクス王国の空母『シャルル・ド・ゴール』が並走する。
『かが』は全長800m。『シャルル・ド・ゴール』は1,000mほど。王者『キティホーク』には及ばないものの、十分に巨大だ。これら巨艦の背後には、各国の駆逐艦(DD)が整然と追従している。総勢48隻にも及ぶ威容であった。
このパレードが終われば、いよいよ合同演習の本番が幕を開ける。
参加国7カ国、艦艇50隻以上、機動兵器200機超、人員約2万人。
大規模な演習は、これから一ヶ月にわたって繰り広げられることになる。
続く