【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「ひゃっほー!」
『あぶないよ、01』
合同演習開始から一週間。『かが』の第401人型機動戦闘飛行隊は、対HF戦シナリオに臨んでいた。
内容は4対4のHF戦。戦場に指定されたのは、巨大ガス惑星の環の内部だ。かつて衛星であった天体が崩壊して形成されたというその環は、数メートルから数百メートル級の岩石が無数に漂うデブリ帯となっている。
勝利条件は敵陣奥にあるフラッグの奪取、もしくは敵機4機すべてに対する撃墜判定の取得だ。ただし、環の空域外へ出ると減点、さらに浮遊する岩石を破壊しても減点対象となる。
星間機動戦の訓練も兼ねているため、今回は近接武器の使用も禁止されていた。
ブルーリボン中隊第一小隊の4機は、二機ずつのツーマンセルに分かれて敵陣を目指す。
仮に敵が4機で固まって行動していた場合、一時的な数的不利は否めないが、その隙に別動隊がフラッグを掠め取る作戦だ。
現在、横田ユイのブルーリボン01と星菱レイの02がペアを組み、先行して進攻中である。
ユイは岩の間を縫うように、軽快に飛び回っていた。障害物に満ちた複雑な空間での機動を、彼女は心から楽しんでいるようだ。
「大丈夫、大丈夫! って、おっとっと!」
01が巨大な岩に激突しそうになり、大の字の姿勢で強引に急制動をかける。寸前で衝突を回避し、機体を反転させた。
『ほら、危ないって言っただろう』
「てへへ」
『気を付けないと……』
レイが小言を言いかけたその時、別回線から割り込むように通信が入った。
『03のおバカ! 岩を壊したら減点だって言われたでしょ!』
『すまん、04。つい邪魔だったもんでな』
環の反対側ルートを進んでいるのは、信太山ケイの04と海田ガイの03だ。
『03と同じレベルになるよ』
「それは勘弁」
ユイたちは既に予定行程の半分ほどにまで達していたが、未だ会敵の兆候はない。
開けた宇宙空間なら一瞬で到達できる距離だが、大小様々な岩石群を回避し、索敵を行いながらの慎重な進軍となれば、それなりに時間を要する。
障害物が密集する閉所戦闘を想定した、極めて難易度の高いシナリオであった。
「なかなか会敵しないわね。もしかして敵が岩陰に潜んでいて、見逃しちゃったとか?」
『いや、それはないよ。ボクが全周囲を確認しながら進んできたからね』
「そ、そうよね……」
ユイは抜け目のないレイの索敵能力に感心しつつ、その完璧さに若干引いている。と、ケイから緊迫した通信が入った。
『01、こちら04! 2機のHFとエンゲージ!』
「01了解!」
2機ということは、敵も戦力を二分しているということか。ユイとレイは、自機の周囲に対する警戒レベルを最大にまで引き上げる。
「こういう時、リンとシュユがいると助かるんだけどね」
『そういう
「402の娘たち、今頃何してるのかしら」
『アラヤと一緒に買い物に出かけるって言ってたよ』
警戒を維持しつつ、この場にいない二人の噂話をしていた、その時。
突如、コックピット内に鋭い警報音が鳴り響く。
ユイの視界の隅に、幾筋もの光る紐のような軌跡が、音もなく迫るのが映る。
「AIM警報! エーテルフレア、発射!」
直後、01と02の周囲で、鮮烈な爆発の花が次々と咲き乱れた。