【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
『AIMサイドワインダー、全弾外れました。小破判定も出ません』
「ほう、やるな。優秀な相手のようだ」
巨大ガス惑星の環で行われている対HF戦。ユイたちの相手は、偶然にもビリー・エドワーズとミリィ・メイポートのペアであった。なお、演習の公平性を期すため、対戦相手の情報は双方に伏せられている。
ミリィのHFF-14Aトムキャットから放たれたのは、エーテルを探知して追尾する、
AIMの接近をいち早く感知したユイたちは、即座に自機の周囲へ大量の青く光る球体を射出した。これは実機と同じ波長の
霊子は揮発性が高く、囮としての効果は一瞬しか持続しない。射出タイミングは極めてシビアだが、二人は見事な連携でこれを回避してみせた。
ちなみに、この演習で使用されているAIMは訓練用の弱装魔術仕様だ。着弾すれば派手な爆発エフェクトが発生するが、機体への物理的なダメージは一切ない。
「残弾は?」
『あと一斉射分のAIMで、ブルームタンクのエーテルを使い切ります。再チャージには30分。その間は自機生成分のみでの戦闘になります』
ブルームタンクとは、トムキャットが装備する箒型の外部霊子ストレージだ。艦船の
ただしチャージには相応の時間を要し、その間は
「分かった。最後にもう一斉射、AIMを放て。02は以後待機を。ガラハッド01、突撃する!」
『Yes Sir. Summon six. Sparrow of the wind spirit, hunt down and shoot down the enemy.(風精の雀よ、敵を追いつめ撃墜せよ) FOX1! FOX1!』
ミリィのトムキャットから、新たに6羽の緑に輝く雀が放たれた。
セミアクティブ・エーテルレーダー・ホーミング対空迎撃魔術ナンバー7『スパロー』は、命中するまで敵機をエーテルレーダーに捕らえ続ける必要があり、相手に存在が知られ、こちらは無防備になる。
ビリーの駆るストライクイーグルが、AIMスパローと並走するように飛び出す。
――
「今度はセミアクティブ!」
ユイのコックピット内に、執拗なエーテルレーダー照射を告げる警告音が激しく鳴り響く。
『相手はHFF-14A トムキャットだ! エーテルフレアは効かない、迎撃するよ!』
先ほどは不意を突かれたが、誘導方式さえ分かれば対処は可能だ。ユイは主武装である89式200mm小銃を素早く構えた。
二機は互いの背後を預けるように密着し、全周囲を警戒。岩陰からトリッキーな軌道で飛来する「緑の雀」を捕捉し、一機ずつ確実に撃ち落としていく。
6羽の雀をすべて撃墜。だが、その爆炎と噴煙を強引に突き破り、敵HFが目前へと躍り出てきた。
「敵HF、エンゲージ!」
現れた敵機は、イーグル系共通装備である
その騎士槍は、側面に200mmモーターガトリングガンを内蔵した『バルカン』と呼ばれる複合兵装である。槍の側面が展開し、6砲身の銃口が姿を現したかと思うと、毎分6,000発という凄まじい弾幕を吐き出した。当然ながら、槍そのものを用いた強力な刺突も可能だ。
ユイとレイは散開してその猛烈な掃射を回避し、反撃の小銃弾を叩き込む。だが、敵機はそれらを嘲笑うかのように軽々と避けてみせた。二機同時の精密射撃を回避するとは、相当な練度のパイロットだ。
『はっはっはっ! やはりこの青と赤のゼロは、Ms.ユイとMr.レイだな!』
突如、オープンチャンネルで不敵な通信が割り込んできた。
「あっちゃー……」
『あいつか』
その朗々とした大声を聞いた瞬間、二人は相手の正体を悟った。今の彼らにとって、戦場で最も会いたくなかった相手である。
『やはり我らは出会う運命にあったということか! 地球自由連邦軍第4機動騎士団第405機動戦闘飛行隊隊長、ビリー・エドワーズ! いざ、お相手願おう!』
――
「アホですか、あの人は……」
後方で待機していたミリィは、突然オープンチャンネルから響いてきたビリーの声に頭を抱えた。
この通信は演習を監視している審判チームにも筒抜けだ。連邦側の担当官も苦笑しているに違いない。
ビリーは普段こそ冷静で、隊長を務めるだけの優れた指揮能力を有している。だが、強敵を目の当たりにすると、騎士の血が騒ぐのか興奮して失態を演じる悪癖があった。実力だけは本物なのが、また質が悪い。
「仕方ありませんね。保険を打っておきますか。Summon three.」
――
「02! 敵を抑えて! アタシはフラッグを取りに行くわ!」
『02了解』
よりによっての相手だが、これはあくまで演習だ。挨拶を交わしている暇はない。ユイはレイに足止めを任せ、単機で奥へ突き進む判断を下した。
レイが牽制射撃で注意を引く隙に側面を抜けようと試みたが、ビリーの驚異的な反応速度による射撃に阻まれる。
思わず、ユイもオープンチャンネルを開いて叫び返した。
「ちょっと! 女性は攻撃しないんじゃないの!?」
『はっはっはっ! 確かに女性と戦いたくはない。だがHF戦は別だ! 機体に乗れば騎士同士!』
「こんにゃろー!」
『オープンチャンネルで何やってんの……』
今度はレイが頭を抱えた。