【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-D

 2対1の変則的な星間機動戦が幕を開けた。しかし、数で勝るはずの皇国側が、ビリーの操るストライクイーグルに対してなかなか決定的な有効打を与えられない。

 

 相手が強固な盾を装備していることもあるが、それ以上にビリーの立ち回りが極めて巧みであった。

 

 ユイとレイが鋭い挟撃を仕掛けても、ビリーは最小限の機動でそれを回避し、正確無比な反撃を繰り出してくる。装備されたモーターガトリングガンの火力も、こちらの小銃を遥かに凌駕していた。零式の優れた運動性能で辛うじて直撃は避けているものの、このままではジリ貧なのは明白だった。

 

 HFは霊力場(Aether Force Field)の霊子を運動エネルギーへと変換することで機動している。慣性制御も同じく霊子変換で行うため、物理法則を無視した急激なターンも可能だが、それには機体全体の霊力を激しく消耗する。全力機動を無尽蔵に続けることは、いかなる最新鋭機であっても不可能なのだ。

 

「もう! 当たっているはずなのに、小破判定にすらならないなんて!」

『こっちもだよ。赤壁連合のHFより、装甲が数段硬いね』

 

 あくまで訓練であるため、使用されているのは威力を抑えた弱装弾だ。着弾部位に応じてダメージ判定がリアルタイムで計算され、中破以上で撃墜扱いとなる。

 

 しかし、ストライクイーグルの基本装甲防御力は極めて高く設定されており、多少掠めた程度では有効なダメージとしてカウントされない。

 中破判定を勝ち取るには関節部などの明確な弱点を突く必要があるが、それらはビリーの熟練した操縦によって徹底的にカバーされていた。

 

 3機の彗燐光(すいりんこう)が複雑に交差し、暗い宇宙の深淵に鮮烈な光の曲線を描き出す。

 

 互いに決定打を欠いたまま、無情にも演習時間だけが過ぎていった。

 

『……ええい! じれったい! こうなれば剣で勝負だ!!』

「はあ!?」

 

 相変わらずオープン回線を繋ぎっぱなしのビリーが、唐突にとんでもないことを口走った。

 宣言通り、彼は騎士盾と騎士槍を即座にパージすると、背部にマウントされていた二本の大剣を一気に抜刀した。

 

『我が愛剣バンカーバスターの威力、その身に刻むがいい! マクドネル・ダグラス流奥義、Double-headed eagle(双頭の鷲)!』

「ちょっと、待ちなさいよ!」

 

 ユイが制止の声を上げる暇もなく、ビリーは二本の大剣を力強く振りかざした。

 その瞬間、猛烈な輝きを放つ炎の鳥が、ストライクイーグルの目前に忽然と姿を現した。

 

『……ビリー、近接武器の使用は禁止ですよ』

 

 ミリィからの冷静沈着極まる通信とともに、炎の鳥はストライクイーグルの至近距離で派手に炸裂。発生した強烈な閃光が、ビリーの視界を真っ白に染め上げた。

 

『うおっ! まぶしっ!?』

 

 不意を突かれたユイとレイも、その爆発の余波に目が眩む。その一瞬の隙を逃さず、二人の背後から密かに放たれていた二羽の炎の鳥が襲い掛かった。

 

「きゃあ!!」

『うわっ!』

 

 長距離対空迎撃魔術、ナンバー54『フェニックス』がブルーリボン01と02に直撃。即座に「撃墜判定」が下された。訓練用のAIMであるため機体自体は無傷だが、演習システム上、二人は「戦死」したことになる。

 

――

 

「おいミリィ」

『失格になるのを止めたんですから、褒めてくださいビリー。それよりも』

「ん?」

『我々の負けですよ。反対側の2機が撃墜されて、フラッグを取られました』

「なにぃ!!」

 

 環の反対側ルートでは、ガイとケイのペアが敵のHFF-15Cイーグル2機を完璧に撃破し、そのままフラッグの奪取に成功していたのである。

 ユイとレイこそ撃墜判定を受けたものの、チームとしての作戦目標は完遂されたのだ。

 

――

 

「むー……なんだか複雑な気分」

『勝ちは勝ちだよ、ユイ。ガイとケイの二人に感謝しよう』

「それはそうだけど……。でも、これはこれでしっかり反省会が必要ね」

『うん。そうだね』

 

 これが訓練で本当に良かった、と二人は心底思った。実戦であれば、自分たちは間違いなく撃墜され、最悪の場合は命を落としていただろう。

 

 浮かび上がった反省点は山積みだった。特に、連邦製HFとの圧倒的な火力の差。赤壁戦争では感じ得なかったが、対連邦を想定した装備の改善はもはや急務といえる。帰投後、直ちに技術部へ上申する必要があるだろう。

 

 そのような課題を洗い出すことこそが、この演習の真の目的だったのだ。

 

 一進一退の攻防を繰り返し、各国の思惑を孕みながら、合同演習はいよいよ最終日を迎えようとしていた。

 

 

続く

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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