【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
横須賀リンと舞鶴シュユ、そして佐世保アラヤが所属する第04護衛隊第402人型術式作戦隊は、今回の演習シナリオには参加していない。
では、402の3人が演習の間何をしていたかといえば、休暇を利用してワイキキの街へと繰り出していた。
「この辺りだっけ?」
「うん、この林の奥だよ」
「随分と辺鄙なところね……」
3人は街の外れにある、とある「魔女」の家を訪問しようとしていた。
アラヤはグレーの半袖シャツにブラックジーンズ。シュユは赤いチェックのワンピース。リンはノースリーブの黒シャツに白のパンツルックという装いだ。軍の制服を脱ぎ、それぞれラフな私服に身を包んでいる。
「これから会うのは、シュユとアラヤの先生なのよね?」
「うん。おシショウさま。アラヤは弟弟子ね」
「半年くらいの差じゃねーか」
「それでもボクの方がお姉さんですぅ。アラヤは弟ですぅ」
「こんなちんちくりんが姉だなんて、オレは認めねーぞ」
「仲がいいわね」
「「どこが?」」
賑やかに言い合いながら林道を進むと、やがて目的の家の前へと到着した。想像よりもこじんまりとした佇まいで、壁には蔦が絡まり、独特の趣がある。
確かに、浮世離れした魔女が住んでいてもおかしくない雰囲気だった。
「ししょー! きたよー!」
シュユがドアノッカーを叩くと、ほどなくしてゆっくりとドアが開いた。
中から現れたのは、眠たそうな目で盛大な欠伸を漏らす長身の女性だった。タンクトップにジーンズという非常にラフな格好で、腰まで届く長い金髪には少し寝癖がついている。
「いらっしゃーい……ふわぁ」
「ししょー!」
「うおっ!」
どすん、とタックル並みの勢いでシュユが抱きつく。背中にまで腕を回し、胸にぐりぐりと頭を押し付けていた。女性はそれを引き剥がすこともせず、手慣れた様子でシュユの頭を撫でる。
「はいはい、久しぶりね、シュユ」
「えへへ」
「先生、お久しぶりっす」
「ああ、アラヤも久しぶり」
アラヤが軽く頭を下げる。女性はようやく目が覚めてきたのか、柔らかな笑みを浮かべてそれに応じた。
「あら? そちらの方は?」
「初めまして。シュユとアラヤの同僚で、横須賀リンといいます」
後ろに控えていたリンも挨拶をした。彼女とは初対面である。
「ああ、シュユが言っていたお友達ね。ようこそ。立ち話も何だし、入って入って」
通された家の中は、かなり雑多な状態だった。古びた本や紙束が所狭しと積み上げられている。ただ生活スペースは辛うじて確保されているようで、テーブルの周りだけは整頓されていた。
お茶を用意するから座るように、と促される。
勝手知ったる様子で、シュユとアラヤも手伝って茶器と菓子の準備を始めた。シュユはともかく、普段は傲慢なアラヤが甲斐甲斐しく動くのは意外な光景だ。この女性との深い信頼関係が見て取れる。
「では、改めて。私はサン・ディエゴ。シュユとアラヤに魔術を教えていたことがある。横須賀さんは……あの名門、横須賀家の令嬢でいいのかな」
「はい、そうです。ディエゴさん、リンでいいですよ」
「私もサンでいいよ。とても優秀な術士だとシュユから聞いているよ」
「ありがとうございます、サンさん」
「そうだよ、ししょー! リンちゃんはすごいんだから!」
「シュユが太鼓判を押すんなら、間違いないな」
お茶を啜りながら、満足げに頷くサン。けっ、という顔でそっぽを向くアラヤ。
場が落ち着いたところで、リンは彼らの過去についてサンに尋ねてみた。
「魔術を教えていたとのことですが、二人はどんな生徒だったんですか?」
「あー、あれは……シュユとアラヤが10歳の頃だったっけな」