【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
サンは、デコードしたソースコードをシュユに見せながら解説を始めた。
「ここからここの行。この辺りが、連邦軍の霊電子攻撃でよく使われるアルゴリズムだね」
「ほうほう。この五次元配列テーブルの作り方は?」
「そうだね。これも霊波データを管理するときの、連邦軍特有の記述法だ。よく気付いたね、シュユ」
「えへへ」
頭を撫でられながら、シュユは教わった内容をデータキューブに追記し、リングへと収納する。
「ありがとう、ししょー! 助かったよ!」
「他ならぬ弟子の相談だからね。いいってことよ。それで、アラヤの方は何か相談があるのかい?」
急に話を振られ、リンと顔を近づけて話し込んでいたアラヤは、バッと身を引いた。
「ほうほう」
「なんだよ、先生」
「なんでも。で、相談はないのかい?」
「んー……光子魔術攻撃を行った後、霊力切れでかなりヘトヘトになるのが悩みで……。霊力増強の修行はしてるんですが、なかなか成果が出なくて」
サンはニヤニヤとアラヤをからかっていたが、相談内容を聞くと真剣な表情に戻った。
「そうだね。連邦軍のHF、HFF-14Aトムキャットは知っているかな?」
「資料は見ました。あの魔女の格好をしてる機体ですよね?」
「そう。トムキャットはHFサイズの箒に跨っているけれど、あれは伊達や酔狂じゃないんだ。あれそのものが
「え? そうなんですか!?」
「うん。あれが外部霊子ストレージになっていて、攻撃で消費した分の霊子を補填しているんだ」
「なるほど……。自身の霊力総量を上げるんじゃなくて、外部タンクに霊子をストックしておくのか」
「そういうことだね。基礎修行も必要だけれど、技術的な工夫も大事だよ。まあ、いきなり実装するのは難しいと思うけれど」
「技術部門に相談してみます」
「あっ! それだったらボクがカスタムした魚雷で蓄霊実験してるよ! 参考になるかも!」
「ほうほう、さすがシュユだね。そんな研究もしているのかい」
「えへへ」
またシュユの頭を撫でて褒めるサン。アラヤに対してもそうだが、この人は本当に褒め上手で教え上手だ。答えをそのまま教えるのではなく、本人に考えさせながら的確なヒントを与えている。慕われるのも当然だろう。
そんなことを考えながら3人を眺めていたリンは、ふと抱いた疑問を口にした。
「あれ? サンさん。そんな連邦軍の機密とか喋ってしまって大丈夫なんですか?」
「ん? ああ、私は軍属じゃないからね。向こうから頼まれれば協力はするけれど、基本は自由の身さ」
「そんなもんですか」
「そんなもんだよ。それに魔術同盟は連邦だけでなく、銀河国家群の様々な国に支部を持っている。連邦政府にのみ隷属しているわけじゃないからね」
「なるほど……。そういう意味では、エクス教中央協議会と同じですね」
魔術同盟に『魔女の森』という通称があるように、エクス教中央協議会という宗教組織も『聖女の塔』という通称で呼ばれている。
エクス教の教会は、街中でも目立つよう塔のように高く建造されている。そこで布教を行う高位の女性神官は「聖女」と呼ばれており、市民にとって塔と聖女は信仰の象徴であった。
連邦には3つの巨大勢力がある。政治を司る『貴族の城』、教育や技術を担う『魔女の森』、そして国教である『聖女の塔』。これらが三つ巴でせめぎ合い、巨大な連邦社会を構成しているのだ。
「リンはエクス教の信者なんだね」
サンは、リンの胸元に下がる、エクス教のシンボルである「Ⅹ」を象ったペンダントに目を留めた。敬虔な信者が好んで身に着けるものである。
「はい。この後、街の教会でお祈りする予定です」