【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-B

「Ms.ユイ、オレと踊っていただけませんか?」

 

 ビリーがユイの前に立ち、恭しく右手を差し出してダンスに誘っていた。

 

「えっと……」

 

 あまりに突然の、そしてあまりに真っ直ぐな誘いに困惑するユイ。だが、そこへさらに別の手が伸びた。

 

「ユイ・ヨコタ。初めまして、トロワ・ダッソーナと申します。ワタシと踊っていただけませんか?」

 

 ビリーの隣に現れたのは、先ほどまでレイと話していたはずのトロワだ。彼はビリーと並び、流麗な所作で手を差し出している。

 

「ええーっ?」

 

 二人の美男子から同時に誘いを受けるという光景に、周囲からの注目が一気に集まる。どちらも非の打ち所がない容姿だけに、周りの女性たちの視線が痛いほどに突き刺さった。

 

 その時。三人目の人物が二人の間に割って入った。

 

 その人物は、ビリーとトロワの隙間に無理やり体をねじ込むと、無言のままユイへと手を差し出す。

 

「レイ?」

「ユイ。……ボクと踊ってください」

 

 目の前に差し出された3本の手。ユイはふわりと微笑むと、迷うことなく真ん中の――レイの手をしっかりと取った。

 

「よろこんで!」

 

 ユイとレイは手を取り合い、会場中央のダンスフロアへと進み出た。

 

「……ところでレイ、踊れたっけ?」

 

 フロアへ向かう途中、小声でユイが尋ねると、レイは気まずそうに顔を背けた。

 

「……踊ったことなんて、一度もないよ」

「そっか。じゃあ、アタシの足の動きに合わせてね」

 

 ユイは良家の嗜みとして、ダンスの作法も一通り習得済みだ。彼女はレイに手の位置や姿勢を教え、優しくリードするようにステップを踏み始めた。

 

 レイは剣術において足さばきを極めている。ユイのわずかな体重移動や誘導を鋭敏に感じ取り、それを自然とダンスの動きへと昇華させていった。

 

「そうそう、上手じゃない」

「……なかなか難しいな、これは」

「そう? 結構、様になってるわよ」

「そうかな」

 

 まるで長年連れ添った熟練のパートナー同士のように、二人は優雅に舞う。周囲の視線は、いつしか冷やかしから称賛の色へと変わっていた。

 

「……ねえ、なんで誘ってくれたの?」

「……なんか、他のやつと踊るのがイヤだったから」

「そっか」

 

 ユイは満面の笑みでステップを踏む。その幸福な熱に当てられたのか、レイの口元にも自然と笑みがこぼれた。

 

~♪

 

 曲が終わると、ユイとレイはお互いに礼を交わし、フロアから下がった。会場からは惜しみない、温かな拍手が送られる。

 

「わっ……!」

「ユイ、礼をしよう」

 

 どうやら二人のダンスは、想定以上の好評を博したらしい。ユイは片膝を折る優美なカーテシーを、レイは右手を胸に当てるボウ&スクレープを返し、会場の歓声に応えた。

 

「レイ、結構踊れるじゃない!」

「ユイのリードが上手かったからだよ。ありがとう、楽しかった」

「ふふ、アタシも! なんだか喉が渇いちゃった。飲み物を取ってくるね」

 

 ユイが飲み物を探しに席を外した隙に、レイは視線だけでトロワ・ダッソーナを探したが、既にその姿は見当たらなかった。

 

 彼が残した、『母親の死因を知っている』という言葉。突然のことで聞き返せなかったが、果たしてあれは真実なのだろうか。

 

 確か「ダッソーナ」といえば、フランクス王国で屈指のシェアを誇るHF製造メーカーの名だ。彼はそこの御曹司なのだろうか。だとするならば、星菱重工の息子であるレイと同じ立場ということになる。

 ライバル企業である星菱の内部情報を、何らかのルートで握っていても不思議ではない。もし、あの話が本当なら……あのクソ親父が、何かを隠しているのか。

 

「お待たせ! レイの分も持ってきたよ。……どうかした?」

「……なんでもないよ。ありがとう。明日、皇国に帰還か。あっという間だったね」

「うん! 色んな人と友達になれて、本当によかったわ!」

「さすがユイだね。……でも、帰ったらすぐに反省会だよ」

「そうね。まずは武器の強化かな……」

 

 環局所泡合同演習リムロックは、今日で全行程を終了する。各国の軍隊は自国へと帰還し、今回のデータを元に、新たなる力の開発へと着手するだろう。

 

 来るべき、次なる戦いのために。

 

 

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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