【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
地球の軌道エレベータ300階にある会議室の窓ガラスが全て吹き飛んでいた。
会議室には、まだ煙が充満していたが、全窓が割れているため、風が煙を流す。
クリアになった会議室は地獄だった。
生きているのは皇帝一人。辺りは血だらけで、体の形を残している帝はまだましだ。
中央にあった木製のテーブルは粉々になり、床も貫通して穴が開いている。これは下の階も爆発の影響があるはず。
唯一の会議室の扉も爆風で吹っ飛んでおり、部屋の外に控えていた人間が血だらけで肉片と化している。
皇帝は開魂者であり鎧も着こんでいたため一命を取り留めた。帝なども開魂者であるため体はある程度衝撃に強いはずだが、それを上回る爆発だったようだ。相当量の爆薬が使われたらしい。
連邦軍の動甲冑を着た護衛兵が、部屋に入って来た。
「こ、これは……」
「陛下!?ご無事で!」
皇帝を確認し、連邦兵が近づいて来た。皇帝はその胸倉を掴む。
「どういうことだ!!!連邦の警備は何をしていたんだ!!!」
ことの理不尽さに、怒り心頭だ。この場所に爆発物を持ち込ませるとは、警備の甘さとか言う問題じゃない。
「陛下!落ち着いてください!まずは治療を!」
しかし、一兵卒にあたっても仕方がない。直ぐ帝国親衛隊も入って来て、皇帝を医務室に運び出す。頭からの血が止まらない。
皇帝は気が遠くなり、親衛隊に体を任せ気絶した。
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『銀河国家群史上最悪のテロ』
後にメディアは、そのような見出しを付けて報道することになる。
軌道エレベータで起きた爆発で、首脳陣、各国首脳の側近、事務官、警備員、マスコミなど死者50名超、怪我人200名超もの犠牲を出した。
死者数としては、皇国の旅客船爆破テロでの1000名超の方が上だが、今回の方が影響度が大きい。
爆発は、首脳会議が行われていた会議室の大きな木製テーブルに仕掛けてあった強力な爆薬によって行われた。
爆発はその部屋だけでなく、扉から高温の爆炎が飛び出し、控えていた事務官や護衛を焼き尽くす。それだけでなく、広い通路にあった木々が燃え広がり、一酸化中毒による死者も増えた。
そして最悪なことに爆発は床を突き抜け、下の階にも広がる。そこでは各首脳の配偶者とエクス教教皇が会談を行っていた。
地球自由連邦の連邦首長エミール・ウェストミンスターとその妻。
エクス教教皇ヒッカム・パールハーバ。
フランクス王国の国王シャルルⅡ世と王妃。
ローマリア共和国の大統領ヴィットーリア・サヴォイアと配偶者。
そして大八洲皇国の帝と皇后。
先進国の首脳が一気に亡くなるという大惨事だ。その影響は計り知れない。
もちろん即座に各国へ状況が伝えられる。
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「はー、疲れた……」
「ミヤコ殿下。気を抜きすぎですよ」
帝の長女であるミヤコ内親王殿下は、帝が留守の間に要人との謁見を代理で行っていた。今は、謁見が一段楽したところだが、右に控えていた女性に窘められる。
皇居の謁見室には、中央の大きな椅子にミヤコ殿下。右隣りには宮内庁の佐世保シズカ。左隣りには近衛師団の百里モミジが控えていた。2人はミヤコの側近だ。
シズカは、紫がかった黒髪のショートヘアで術士の狩衣を着ている。ミヤコが小さい頃からの側近で、教育から側仕えまでお世話をずっとしている姉のような存在だ。宮内庁に所属しているが、高位な術士でもあり魔術から巫術まで使いこなす。
モミジは、黒い袴に男性用の黒い詰襟を着て、軍帽を目深に被っている。長い銀髪は腰まであり、長い太刀を佩いていた。彼女は寡黙で滅多に喋らないが、ミヤコに忠誠を誓っており、いざとなれば誰よりも早く動き、カシ・マシン流皆伝の腕を見せる。
ミヤコが短い休憩をしていると、宮内庁職員が謁見室に慌てて駆け込んで来た。
「ミ、ミヤコ内親王殿下!た、大変です!」
あまりの勢いに、モミジがミヤコを庇う様に前に出て太刀を抜いた。それをシズカが抑え、職員に問いただす。
「落ち着きなさい。何があったのですか?」
「はっ、すみません。シズカ様!それが……」
息を整える職員の顔は真っ青だ。良くないことが起きたのだろうか。
「み、帝陛下と皇后陛下、ご崩御あそばされました!」