【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第十八話 混乱
Part-A


 地球の軌道エレベータ、その300階にある会議室。強化ガラス製の窓はすべて吹き飛んでいた。

 室内には硝煙と粉塵が充満していたが、窓を失ったことで吹き込む強風が、それらを無慈悲に運び去っていく。

 

 視界が晴れた会議室は、地獄そのものであった。

 

 生存者は皇帝フリードリヒただ一人。

 辺り一面が血の海と化しており、五体を留めている帝の遺体は、まだマシな状態といえた。他の犠牲者は、見るも無残な有様である。

 中央に鎮座していた巨大な木製テーブルは粉砕され、爆発の衝撃は床をも貫通して大穴を開けている。下の階への被害も甚大であろう。

 唯一の出入り口であった扉も跡形なく吹き飛ばされ、廊下に控えていた護衛や関係者は、爆風と破片の直撃を受けて肉塊と化していた。

 

 皇帝は強力な開魂者(Openian)であり、かつ「常在戦場」の鎧を着込んでいたため、奇跡的に一命を取り留めた。帝も同様に開魂者であり、肉体の強度は常人を遥かに凌駕していたはずだが、至近距離での爆発はそれを上回る威力だったようだ。相当量の高性能爆薬が使用された痕跡が、生々しく残されていた。

 

 連邦軍の動甲冑を装備した即応部隊が、粉塵を踏みしめて突入してきた。

 

「こ、これは……」

「陛下!? ご無事で!」

 

 生存している皇帝を確認し、兵士が駆け寄る。皇帝は血まみれの手でその胸倉を掴み上げた。

 

「どういうことだ!!! 連邦の警備は何をしていたんだ!!!」

 

 あまりの理不尽さに、怒髪天を衝く勢いであった。この場所に爆発物を持ち込ませるなど、警備の不備というレベルではない。

 

「陛下! 落ち着いてください! まずは治療を!」

 

 しかし、一兵卒に怒りをぶつけても事態は好転しない。直後に到着した帝国親衛隊によって、皇帝は担架で搬送された。頭部の裂傷からの出血が止まらない。

 皇帝は意識が遠のく中、親衛隊に身を預け、そのまま深い闇へと落ちていった。

 

――

 

 『銀河国家群史上最悪のテロ』

 

 後にメディアは、そのような見出しでこの事件を報じることになる。

 

 軌道エレベータ爆破テロ。

 各国首脳陣、側近、事務官、警備員、マスコミ関係者など、死者50名超、負傷者200名超という甚大な被害を出した。

 単なる死者数で言えば、かつての皇国旅客船爆破テロの1000名超が上回るが、政治的・社会的影響度においては今回の方が遥かに深刻である。

 

 爆発源は、首脳会議室に設置された巨大な木製円卓であった。

 

 爆炎はその部屋を破壊し尽くすだけでなく、扉から噴出して廊下の随行員たちを焼き払い、植樹されていた木々に引火。火災による有毒ガスや一酸化炭素中毒が被害を拡大させた。

 そして最悪なことに、爆発の衝撃波は床を突き破り、直下の299階をも破壊した。そこでは各首脳の配偶者とエクス教教皇による会談が行われていたのだ。

 

 地球自由連邦首長エミール・ウェストミンスターとその妻。

 エクス教教皇ヒッカム・パールハーバ。

 フランクス王国国王シャルルⅡ世と王妃。

 ローマリア共和国大統領ヴィットーリア・サヴォイアとその配偶者。

 そして、大八洲皇国の帝と皇后。

 

 先進国のトップが一挙に失われるという未曾有の大惨事。その衝撃は計り知れず、即座に全銀河へと報じられた。

 

――

 

「はー、疲れた……」

「ミヤコ殿下。気を抜きすぎですよ」

 

 帝の長女であるミヤコ内親王殿下は、父帝の留守中、名代として要人との謁見をこなしていた。ようやく公務が一段落し、息をついたところを、控えていた女性に(たしな)められる。

 

 皇居の謁見室。中央の玉座にはミヤコ殿下。その右隣には宮内庁の佐世保シズカ、左隣には近衛師団の百里モミジが控えている。二人はミヤコの側近中の側近だ。

 

 シズカは紫がかった黒髪のショートヘアで、術師の狩衣を纏っている。ミヤコの幼少期からの教育係兼側仕えであり、姉のような存在だ。宮内庁所属の高位術士であり、魔術から巫術まで使いこなす実力者でもある。

 

 モミジは、黒い袴に男性用の黒い詰襟を着て、軍帽を目深に被っていた。腰まである長い銀髪を揺らし、長大な太刀を佩いている。寡黙で滅多に口を開かないが、ミヤコへの忠誠心は絶対的。いざとなれば誰よりも速く動き、カシ・マシン流皆伝の剣技で敵を斬り伏せる。

 

 ミヤコが束の間の休息を取っていると、宮内庁職員が謁見室に転がり込むように駆け込んできた。

 

「ミ、ミヤコ内親王殿下! た、大変です!」

 

 あまりの剣幕に、モミジが即座にミヤコを庇う位置へ移動し、鯉口を切る。それをシズカが手で制し、職員に問いただした。

 

「落ち着きなさい。何があったのですか?」

「はっ、申し訳ありません。佐世保様! それが……」

 

 息を切らす職員の顔色は土気色であった。ただならぬ事態が起きたことは明白だった。

 

「み、帝陛下と皇后陛下、ご崩御あそばされました!」

 

 

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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