【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
「チェストーーーー!!!!」
シロウ・カデナの駆るHFF-15J、愛称サムライイーグルが、クイラ共和国軍のHFミコヤ27兵士型を一撃で両断した。急激に開放された霊子が相転移し、大爆発を巻き起こす。
サムライイーグルは、イーグル系と共通のフレームを使用しつつも独自のカスタマイズが施されている。軽量化された装甲に加え、両肩には皇国製HFに見られる
「はっはっは! わいら勝つ気あっとな? 気合が足りもはん!」
シロウは連邦国民であり12貴族の出身だが、そのルーツは皇国にある。
連邦は多民族国家だが、現在では民族という概念は薄れている。遺伝情報は地球脱出と移民の過程で混ざり合い、もはや意味をなさなくなった。
この国で重要なのは民族ではなく、
「おっと、思わず皇国語が」
シロウの実家であるカデナ家は、皇国から移民し、武力を背景に12貴族へと成り上がった家系だ。
シロウ自身も皇国で普及している剣術、サツ・ジゲン流を修めている。「一撃必殺、二の太刀要らず」の剣理は、HF戦でのヒットアンドアウェイ戦法と相性が抜群であった。
『トリスタンリーダー。こちらホークアイ03』
早期警戒機HFE-2Cホークアイに搭乗する魔女から通信が入る。
「ホークアイ03。こちらトリスタンリーダー」
『今の撃墜で、このエリアの敵HFは全滅しました』
「お、そうかありがとう。帰ったらデートでもどう?」
『バーカ。管制を完了し、哨戒任務に移行します。オーバー』
魔女にすげなく断られたが、いつものことだ。シロウは部下に帰艦を指示しつつ、気になったことをアラスに確認する。
「ランスロットリーダー。こちらトリスタンリーダー。そっちの状況はどうだ?」
『トリスタンリーダー。こちらランスロットリーダー。こちらも敵の全滅を確認した』
コールサイン『ランスロットリーダー』は、第一機動騎士団のアラス・エルメンドルフだ。隣接宙域で制空権確保の任務に就いている。
「なあ? なんか敵HF少なくないか? 聞いていた戦力の半分もいないぞ」
『ああ、こちらでも確認した。確かに少ないな。クイラ軍はHFを温存していたはずだが』
多国籍軍によるクイラ自由作戦が開始され、クイラ星系への侵攻と制空権確保に乗り出したが、敵の抵抗は拍子抜けするほど微弱であった。
『これはあれだな。首都のある惑星に戦力を集中させているんだな』
「籠城ってやつか。惑星揚陸部隊ってどこだっけ?」
『第二機動騎士団だ』
「マクスウェルのおっさんの所か! 敵さんご愁傷様」
――
クイラ共和国首都惑星バグーの低軌道上へ、連邦軍強襲揚陸艦LHD-501『ワスプ』が侵入した。地上からの対空砲火もものともせず、高度を下げて直進する。
『ワスプ』は周囲で爆発が起きる中、両舷のハッチ計12か所を開放。中から身の丈ほどもある巨大な円盾を構えたHFが姿を現した。
『GO! GO! GO!』
次々にHFが飛び出し、惑星へと降下していく。
彼らは円盾を下に敷き、大気圏へ突入する。盾の底面で圧縮された大気が高温プラズマ化して赤く輝き、12個の火球となって地上へ降り注ぐ。
落下中も、地上からの対空射撃が雨あられと襲い掛かるが、強化された盾がそれらを弾き返す。
高度が下がったところで重力制御を起動。盾をパージし、落下速度を減衰させる。無防備になったHF本体に対空砲火が直撃し始めるが、彼らは「被弾上等」とばかりに意に介さず着地態勢に入った。
数機が被弾したが、中破にも至らず、12機すべてが五体満足で地上に降り立つ。
彼らは強襲型HF、HFA-10CサンダーボルトⅡ。イーグル系よりさらに重装甲の鎧を纏い、頭部はバケツのような円筒形グレートヘルムに酷似している。
迎撃のため敵HFが接近してくるが、サンダーボルトⅡは背中の武器を振りかざし、その頭部めがけて叩きつけた。
「ふんっ!!!」
振るわれたのは、身の丈ほどもある巨大なウォーハンマーだ。直撃を受けた敵HFは、上半身がひしゃげ、身長が半分になるほどペチャンコに潰された。
「がっはっは! 次に我が戦槌『アベンジャー』の錆となりたい奴は誰だ!」
続いて接近してきた敵HFも、まるでゴルフボールのようにウォーハンマーで彼方へ吹き飛ばされる。
他の味方HFも敵を次々と薙ぎ倒し、倍以上の数で待ち構えていた防衛隊HFを瞬く間に殲滅した。
「ワスプヘッド。こちらパーシヴァルリーダー。
『パーシヴァルリーダー。こちらワスプヘッド。DZ確保了解。揚陸艦、降下を開始する』
コールサイン『パーシヴァルリーダー』は、シロウに「おっさん」呼ばわりされたマクスウェル・アンドルーズだ。
第二機動騎士団団長にして
「がっはっは! どうだ! おっさんでもまだまだ若いもんには負けんぞ!」
本人はその呼び名を、むしろ気に入っているようだが。