【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
Part-A
「はん、ちょっと金で突いただけでこれだ。衆愚政治の極みだな。共和制などという欠陥システムを使っているからこうなる」
汎ペルセウス帝国皇帝フリードリヒⅣ世は、空母『グラーフ・ツェッペリン』の艦橋で独りごちた。皇帝の顔にはサミットテロ時の傷跡が生々しく残っており、幾本もの縫い目が物語に登場する海賊のような凄みを与えている。以前よりも、その威圧感は格段に増していた。
傍らに控えていた艦隊司令が、皇帝に報告する。
「陛下、全艦隊が配置に着きました」
「そうか。では、ローマリア星系内への侵攻を開始せよ」
「御意」
汎ペルセウス帝国軍が一斉に
――
「くそ、何考えてるんだ政府は! そんなに俺たちが信じられないのか!」
ローマリア共和国軍、外洋部隊第一戦隊旗艦空母『ジュゼッペ・ガリバルディ』の艦橋で、若い主席参謀が怒声を上げた。彼は中央に座る艦隊司令の上級少将に詰め寄る。
「司令! 本当によろしいのですか、帝国軍を易々と星系内に招き入れて!」
「政府の決定だ。我々軍人は文民統制を守らねばならん」
「しかし!」
「軍内部から反乱分子を出してしまった以上、政府に不信感が募るのも無理はない。……まあ、落ち着け。帝国軍も反乱鎮圧にそう大部隊は送ってこんだろう。もし彼らが反乱軍ではなく民間に手を出そうものなら、全力で阻止する。我々が守るべきは一般市民だ」
「……了解であります、艦隊司令殿!」
ローマリア艦隊は現在、首都惑星ローマリア星系の外縁部付近に展開していた。予定では、この空域に帝国軍が着空するはずだった。
「
霊測員の報告を受け、艦隊司令が時計を確認した。
「おお、来たか。時間通りだな。フリゲートが数隻か? あるいは駆逐艦も含まれているか」
「いえ……その……」
「どうした、報告は正確に」
「は、はい! 右10度、高角プラス5度、距離5光秒! 空母クラス4隻! 戦艦および巡洋艦クラス8隻! 駆逐艦クラス32隻、フリゲート64隻! その他輸送艦などを合わせ、120隻以上の大艦隊です!」
「なっ、何かの間違いではないか!? 他国の軍か?」
「いえ! 霊紋がデータベース上の帝国軍艦艇と完全に一致しました! 先頭の一隻は帝国軍第1機動隊群旗艦、空母『グラーフ・ツェッペリン』です!」
「なん……だと……」
霊測員の報告を裏付けるように、モニターの光学映像に光の点が次々と瞬いた。着空時に生じる残留霊子が光子へと相転移した輝きだ。それはまるで人工の星雲が生まれるかのような密度で増え続ける。
「ば、馬鹿な。反乱鎮圧などというレベルではないぞ……」
艦隊司令をはじめ、艦橋要員全員が驚愕に凍りつく中、帝国軍艦隊は悠然とこちらに向かって進進してきた。
見せつけるかのように『ジュゼッペ・ガリバルディ』の至近を、巨体な『グラーフ・ツェッペリン』が通過していく。こちらも全長800mの大型艦だが、相手はその1.5倍、1,200mもの全長を誇る移動要塞だ。
後続の巡洋戦艦『シャルンホルスト』が、威嚇するように主砲塔をこちらに向けながら通り過ぎる。
しかし、帝国艦隊は何ら攻撃を加えることなく、一気に加速して星系内部へと進出した。
帝国軍の殿が去るまで、共和国艦橋の誰もが言葉を発することができなかった。
――
惑星ローマリアの都市部では、政府軍と反政府軍が対峙していた。反政府軍の前には急造のバリケードが築かれ、突入への備えがなされている。まだ実戦には至っていないが、空気は一触即発の状態だった。
「畜生! 売国奴どもが帝国軍を呼び寄せやがって! だがこちらにはHFがある。最後まで徹底抗戦だ!」
反政府軍の指揮官が気炎を上げるが、その勢いもそこまでだった。
昼間の青空の遥か上空に、無数の光点が出現した。そのうちのいくつかは地上からでも形が判別できるほどに巨大だ。あの一つ一つが、帝国の軍艦である。
反政府軍のみならず政府軍までもが、空を見上げたまま呆然と立ち尽くす。あれほどの規模の軍が降下してくれば、この惑星そのものがどうなってしまうか想像もつかない。
恐怖は瞬く間に伝播し、現場はパニックに陥った。反政府軍も政府軍も散り散りに逃げ出したが、どこへ逃げれば安全なのか誰にも分からなかった。人々はただ建物に逃げ込み、帝国軍の降下を固唾をのんで待つしかなかった。
しかし、いつまで経っても帝国軍は降りてこなかった。
それどころか、上空を覆っていた帝国艦艇の群れは惑星を素通りし、そのまま視界から消え去っていったのである。
「え? おい、どうなってるんだ?」
――
「よろしいのですか?」
「よい。こんな惑星の騒動に割く戦力などないわ。予定通り、後続のフリゲート戦隊に任せておけ」
「御意」
皇帝の冷徹な命令により、惑星ローマリアを見捨てて通過した帝国主力艦隊は、星系の反対側へ向けて再加速を開始した。
「銀河航路の状況は?」
「既に確保済みです」
「うむ。では、