【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
『本題に入ろう。先日行われたクイラ国での戦争についてだ。連邦は首謀者を拘束したと発表したが――』
銀河中の民衆が、皇帝の言葉を固唾を飲んで見守る。
『……あれはすべて、茶番である』
画面の向こう側で、人々がざわめく。
『実行犯がミルザム解放戦線であることに疑いはない。だが、真の首謀者は別にいる』
ざわめきは一層大きくなった。
『地球自由連邦の12貴族。貴様らだ。連邦の貴族が、自国の首長を殺害したのだ』
その告発は全銀河を震撼させた。妄言だと切り捨てる者もいれば、疑念を抱く者もいる。広場やネット上のコミュニティは、真実を求める人々の声で荒れ狂った。
――
『我が国の情報部が掴んだ証拠は、すべて銀河ネット上に公開する』
「何を……何をほざくか、蛮族めが!」
地球自由連邦の12貴族の一人、エルメンドルフ家当主のレジー・エルメンドルフ公爵は、憤怒に震えて机を叩いた。
「まあまあレジーどの。やつらが何を言おうがなんもできん」
同じく12貴族のアンドルーズ家当主、アンソニー・アンドルーズ侯爵が、余裕を崩さず彼を宥めた。
『信じるか信じないかは貴公らの自由だ。連邦は否定するだろうが、余は断じて認めん』
「しかしだな、アンソニー……」
「物証は全てこちらで抑えている。各長官もこちらの息がかかった者ばかりだ。他の門閥貴族にも根回し済み。少なくとも連邦内では否定される。我が国は盤石だよ」
彼ら12貴族は、行政、立法、司法のすべてを裏から支配している。貴族院を優先させる二院制を維持し、庶民の声を封じる術を熟知していた。
『連邦が身内を断罪せぬというのなら、帝国が代わってそれを行う。首を洗って待っているがよい』
画面の中の皇帝が、真っ直ぐにこちらを指さした。
「ふん、帝国軍が攻めてこようと、強大な連邦軍で返り討ちにするまでだ」
『さて、連邦の茶番に巻き込まれた共和国、王国、そして皇国の諸君には提案がある。共に連邦を打倒しようではないか』
――
『共和国は……現在説得中ではあるが、いずれ協力してくれるだろう』
「政府の売国奴どもめ! 結局、帝国に飲み込まれるだけじゃないか!」
暗い地下通路で、共和国反政府軍の兵士が怒声を上げた。
帝国軍は首都をスルーしたが、直後に降下してきたフリゲート戦隊とHFによって反政府軍は壊滅。政府軍もまた事実上の武装解除を余儀なくされている。
「畜生、絶対生き残ってやる……!」
爆風を背に、兵士は通路の奥へと走り去った。
――
『皇国の麗しき女帝よ。我が友キミヒトの娘よ。賢明なそなたであれば、余の真意が判るはずだ。立場も理解しているゆえ、猶予を授けよう。そなたの父を、真に殺めた者は誰なのか。よく考えるが良い』
「猶予……?」
「おそらく、期限付き不可侵条約のことでしょう」
侍従長の佐世保シズカが、女帝の疑問に答えた。
「締結から既に半年以上が経過しています。残り二年以上ありますが……帝国がこれを律儀に守る保証はありません」
「条約なのに?」
「この条約には破棄の際のペナルティが規定されていませんから。帝国の都合次第で、いつでも紙切れになります」
シズカは向き直り、主君の瞳を覗き込んだ。
「どうされますか。連邦に与するか、帝国に与するか」
「……どちらにも与しません。皇国は皇国として、独自に動きます」
「御意。賢明なご判断です。しかし、帝国はその回答では満足しないでしょうね」
「ええ。……戦争になるのね」