【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
人型搭載護衛艦DDH-5184『かが』含む第04護衛隊は、元赤壁連合のホーロー国星系まで来ていた。目的は表敬訪問とホーロー国軍との共同訓練。
ホーロー国首都惑星ペイタイ衛星軌道に停泊した『かが』からシャトルが発艦。20人ほどを乗せて惑星に向けて降下を開始する。
ちなみにシャトルは第403救援兵站支援隊の所属。HFの救援や兵站輸送などを行う。403のように直接戦闘はしない飛行隊も縁の下の力持ちとして重要だ。
シャトルは重力制御でゆっくり大気圏に突入する。ユイは窓から地上の様子を見ようとするがまだ高度が高いので良く分からない。
「まだ見えないなー」
「前は荒れ放題だったね」
隣の座席のレイは、赤壁戦争当時の地上の様子を思い出す。クレーターだらけな茶色の大地と壊れた建物しか記憶にない。
機内の座席にはユイとレイの他に401の第一中隊の面々と艦長などが座っている。今日はユイだけでなく、レイ達も士官用制服を着ていた。
「わ!見てレイ!」
「ん?」
窓に張り付いていたユイが興奮してレイを呼ぶ。ユイの横から窓の外を見てみた。
一面の緑が見える。
農地が整備され、緑が綺麗に並んでいた。他の場所にも植林され木々が植えられている。戦争から一年であの荒れ果てた大地が緑に覆われていた。
「すごいね!たった一年でここまでになるんだ」
「そうだね」
レイも地上を見て感心したが、それ以上にユイの輝かんばかりの笑顔を間近に見てドキっとする。
ここのところ忙しさから笑顔が消えていて、嬉しそうにチャーハンを食べた後も、仕事が残っているからと暗い顔で部屋に戻っていった。
「人間の力ってすごいんだなー」
窓から離れ座席に背を預けても笑顔のままだ。笑顔が戻って良かったと安心する。
シャトルが首都圏に近づく。さすがに都市部では、まだ戦いの跡が残っているが、修理、建設中の建物も多く、活気のある様子が見て取れる。
しばらく飛行して近郊のホーロー軍基地に着陸。シャトルをぞろぞろと降りると、現地の軍人と子供達が並んで迎えてくれる。
「あ、おねえちゃん!」
7、8歳くらいの男の子が、ユイに走り寄って来た。レイの記憶ではHFに無理やり乗せられていた子だ。
「あ!あの時の!」
ユイも気が付いたようだ。走って来た子供を抱き上げる。
「会いたかったよ!おねえちゃん!」
「アタシも!なんかおっきく成った?」
子供を抱き上げてくるくる回り喜び合う。他の子供もあの時救助した子のようだ。海田ガイと信太山ケイの所にも子供が来て喜んでいる。聞かされていなかったのでサプライズなのだろう。
「おねえちゃん!こっちこっち!」
「慌てないの!」
子供に手を引かれながら他の子供達に紹介するためユイが連れていかれた。その様子を眺めているレイに女性軍人が近づいて来る。
「ようこそホーロー国へ。訪問いただきありがとうございます」
「こちらこそ歓迎いただき、ありがとうございます」
その女性軍人は、子供を引き渡す時に対応してくれた人だ。
「皇軍の皆さまのお陰で、子供達が助かりました。改めてお礼させてください」
「いえいえ、元気になってなによりです」
一拍置いて、レイは気になることを聞いてみた。
「あの子達の両親は?」
「全員処刑されていました……普遍党は開魂者をあの戦争で戦場で盾にしたり、処刑していたのです……」
レイは事前の情報からなんとなくそう思っていた。恐らくそんな境遇の子供達が大勢いるのだろう。いつの時代も戦争孤児が発生している。
「今度彼らはどうなるんでしょう?」
「孤児として施設に預けて居ます。ただ将来は軍人になるように教育しています。HF乗りは貴重ですので」
なるほど、一度でもHFに乗って動かせたことは良い経験だろう。開魂者は減って貴重なはずだ。
「ありがとうございます。今の話は他には内緒にして貰えますが?」
「え?はい、あまり表だって言える話ではないですからね。そうします」
折角助けた子供がまた戦場に出てしまうのは複雑だろう。ユイには聞かせたくない。自分が知っていれば十分だ。
ここの所ユイの横顔にドキドキしたりしたが、そんなことをしている場合ではない。
今後もこういうことはあるだろう。ユイがなにか大きなことを為すときに、きれいごとだけでは済まないことが多くなる。その汚い部分は自分が担うと決意するレイ。
(ユイの笑顔は誰にも曇らせない。ボクが闇の部分を背負えばいい。君は光でボクは影だ)
続く