【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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第二十六話 欺瞞
Part-A


「なに!?第2と第3艦隊のみだと!!」

 

 12貴族であるエルメンドルフ家の屋敷内にある執務室で怒号が響く。

 

「足りん!後一個艦隊は追加できないのか!?……では第7艦隊はどうした!あれは局所泡(ローカルバブル)エリアが担当だろう!……移動に一ヶ月だと!話にならんではないか!ええい、もし奪還に失敗したら貴様の席はないと思え!国防長官!」

 

 エルメンドルフ家の当主レジー・エルメンドルフ公爵が、執務机の上に表示されていた通信ウィンドウを腕で払い、ナノボットが散ると同時に通信が途切れた。

 

「くそ!海賊どもが!」

「まあまあ落ち着いてレジー殿」

 

 応接セットのソファーに座っているアンソニー・アンドルーズ侯爵がなだめる。

 

「他艦隊は南西部で任務に就いている。第7艦隊は、今、局所泡の南部に居るからな。広大な局所泡を横断する必要があるのだ。太陽系奪還は2個艦隊4個空母打撃群。それだけあれば十分であろう」

 

 地球自由連邦は50の星系州で構成されているが、主に北東部と南西部で2つに分かれている。太陽系を含む北東部は局所泡を含んでいて、恒星自体の密度が低い。逆に連邦首都のある南西部は密度が高く、連邦の7割の星系州が含まれている。

 

 北東部と南西部の境界には重力偏重の壁があり、通行可能なのが2か所の運河のみ。運河は星系内移動でも使用している霊符加速機と霊符着空機を使用することで重力偏重地帯も通過できる。

 

 連邦軍は南西部を中心に活動し、治安維持やテロ暴動対策に奔走していた。

 

「しかしだな、アンソニー。太陽系には、あの『月』があるのだぞ?」

「あれか。魔女の森でも解析できなかった遺跡だったな。やつらには無理ではないか?」

「いや、帝国にはポーツマス家が亡命している。S-Filesの一部を持っているかもしれん。くそ!始まりの四家は早々に潰すべきだったのだ!」

「まあまあ。今は酒でも飲んで太陽系奪還の報を待つしかないであろう。丁度年代物の良いワインが手に入ったのだ。いかがかな?」

「……頂こう」

 

 12貴族の実質トップであるレジーは痩せ型で神経質。対してアンソニーは太っていて大らかな性格だ。なんだかんだで相性がよい2人だった。

 

--

 

 帝国皇帝フリードリヒⅣ世が搭乗している皇帝機カイザー・ティーゲルは地球に居た。

 

 今はサミットテロがあった軌道エレベータ300階の前に浮かんでいる。風でマントがはためく。

 

『陛下』

 

 第1機動隊群司令ハンプシャ・ポーツマス大将の通信が繋がったが、皇帝は返事をしなかった。胸に手を当て眼を閉じている。

 

『失礼。黙とう中でしたか』

 

 少し経ってから皇帝の眼が開き、通信に応じた。

 

「よい」

『ご友人の亡くなった場所ですからな』

「それもあるが、帝国の親衛隊や官僚も亡くなっているのだ」

『そうでしたな……』

 

 サミットテロで首脳だけでなく多数の人が亡くなってる。テロ現場はそのままになっており、300階の吹き飛んだ窓も壊れたまま。

 

「で、どうした」

『はい。連邦の艦隊をUボートが捉えました』

「やっとか。遅かったな。設置型魚雷は?」

『魚雷敷設艦が既に設置済みです。各HF隊も配置に付いています』

「分った。余も移動しよう」

『本当によろしいので?』

「餌は美味そうな方が食いつきがよいだろう?」

 

 フリードリヒは、ポーツマス大将に傷だらけの顔をニヤリとして見せた。

 

--

 

 太陽系外縁部に着空による多数の光が氾濫する。

 

 と、同時に多数の爆発が起こっていた。

 

「何事だ!」

 

 着空直後の空母エンタープライズの艦橋が騒然とする。オペレータが状況を確認して次々と報告し始めた。

 

「重力子魚雷の攻撃のようです!この空域に設置型魚雷が散布されていた模様!」

「駆逐艦フェルプス、ウォーデン、モナハン大破!エイルウィン、バルチ、カニンガム、ベンハム中破! 巡洋艦ミネアポリス、ニューオーリンズ小破!」

「各艦に救援させろ!空母の状況は!?」

「空母は4隻とも無傷です」

 

 着空直後の艦船は、次元弾道跳躍で霊子がほぼ枯渇しているため、防御が弱くなっている。その瞬間を狙うため着空予想空域に設置型魚雷を散布する戦術があるが、近接防御の光子砲などで迎撃も可能だ。

 

「ふん、小賢しいことを」

 

 今作戦の総指揮を執る第2艦隊司令官レイモンド・スプルーアンス中将は、あくまで冷静だった。

 

「空母が無事であればよい。霊探(Aether Rader)の状況は?」

「星系内走査完了しました。主モニターに表示します」

 

 霊探員の魔女が操作し大きなスクリーンに太陽系全体の状況を表示する。

 

「帝国の機動戦闘機が、120機ほどこちらに向かっています。HFは主に3ヶ所に固まっている模様。敵艦隊は我々の反対側星系外縁部です。空母クラス2隻、巡洋艦クラス4隻、駆逐艦クラス16隻」

「ほう、艦隊決戦は避けたか。こちらとしても機動航空戦は望むところだ」

 

 スクリーンに映された太陽系の状況だが、機動戦闘機を表す小さな光点が多数、連邦の艦隊に向かっている。既に第六惑星軌道付近まで来ていた。

 次にHFを表す大きな光点が第五惑星と第四惑星の間の小惑星帯、第四惑星上、第三惑星付近に展開。連邦艦隊の逆サイドに帝国艦隊。

 

 霊電子戦艦がUボートと霊電子戦の激戦を繰り広げているらしく、光点が消えたり付いたりしている。

 

「機動戦闘機は、艦隊攻撃。HFは防御に専念という感じでしょうか。多層防御線ですか」

 

 艦隊司令の横に居た副官が所見を述べた。司令も賛同する。

 

「そうだな。防御寄りの陣形だろう。どうやら我々の攻撃力を見くびっているようだ」

 

 司令は憤慨しながら、全艦隊に向け指示を出す。

 

「直ちに機動戦闘機隊を展開、迎撃に移れ。HF隊は4つに分け、3ヶ所に3隊それぞれ展開。残りは艦隊直掩に回せ。帝国の蛮族どもを蹴散らすぞ。海賊退治だ」

「「「Aye, aye, sir!」」」

 

「いくら小細工をしようが無駄だ。物量で押しつぶしてやる」

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
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