【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

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Part-C

『なんだこりゃ……』

 

 ヒルデガルド・ラムシュタイン大尉は、通話越しの部下の呟きに同感だった。

 

 彼女が率いる第5機動騎士団第501機動戦闘飛行隊は、敵HFの反応があった空域に来ているが、そこで目にしたのは、無数の人工物の残骸だった。

 

 第三惑星地球付近のその空域はラグランジュポイントと呼ばれ、地球とその衛星である月から受ける重力と慣性力の釣り合いが取れた場所らしい。

 

 事前に聞いた話では、この場所は安定した空域のため、地球中心時代に様々な建築物が作られたとのこと。

 

 実際に来てみると、その残骸の数に驚く。過去にこの空域を巻き込んだ戦闘があったとのことで、今では生きている施設は一つもない。無人の空域に残骸だけが残っている。

 

『アネゴ、あの円筒形のデカいのはなんなんですかね』

「ああ、あれは居住用宇宙ステーションだな。重力制御が開発される前は、円筒を回転させることで人工重力を発生させてたらしい」

『へー』

 

 事前に確認した資料を思い出しながら答える。部下も見ている宇宙ステーションは、元はもっと長いだろう円筒が途中で切断され、中は暗くて良く見えない。

 

 と解説した所で、違和感を抱く。

 

「ん?……待て。『アネゴ』ってなんだ」

『おっと、しまった。つい。いえね、『尊敬できる女性上司』を表す皇国語と聞きまして』

「なんだそれ。誰から聞いた」

『シロウ・カデナ中佐っす』

「あのヤロウ。部下に余計なこと吹き込むな」

 

 同じ円卓の騎士団(Knights of the Roundtable)の一人であるシロウの軽薄な顔を思い浮かべ苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。ヒルダには苦手なタイプだ。

 

 彼女は周りから男勝りで浮いた話一つないと思われているが、別に男性嫌いな訳ではない。ただ自分より強く誠実な男が理想だった。強いて言えば円卓の騎士団のリーダー、アラス・エルメンドルフだろうか。彼には既に婚約者が居るが。

 

 憤慨していると、別の部下から緊急通信が入った。

 

『ペリノアリーダー。こちらペリノア05。敵機目視発見(Tally-ho)!迎撃に移ります!』

「ペリノアリーダー了解。501各機へ。発見次第即時迎撃。残骸の影から来るかもしれない。十分に周囲警戒せよ」

 

 各機から了解の返信が返る。そうしてる間にも敵と接触している機もあるようだ。

 

 

 大小様々な残骸を避けつつの星間機動戦は困難を極めた。訓練でも似たシチュエーションで行っているが、帝国のHFはかなり慣れており、思う様に攻撃できない。

 残骸を盾にしたり、蹴っ飛ばして攻撃に使ったり、大きな残骸に回り込んで裏を突いてきたり、環境に十二分に適応している。かなり優秀な部隊のようだ。

 

『こちらペリノア07。敵HFを円筒形の残骸に追い詰めた!追撃する!』

「待て!深追いするな!」

 

 ヒルダは敵の優秀さから嫌な予感がした。しかしペリノア07と僚機は居住用宇宙ステーションの残骸内部に飛び込んでしまう。

 

--

 

『グスタフ14。こちらイェーガー06。釣れたぞ』

「グスタフ14了解」

 

 短いやり取りの後、少年祭司は詠唱を始めた。

 

「天空神テュールよ!暴風を与えたまえ!我に勝利の風を!TEIWAZ(ティワズ)!」

 

 少年祭司は魔道艦隊群の重砲兵隊に所属している。乗機は魔道砲兵型HFシュトルムティーガー。長い杖を持った灰色ローブ姿のHFだ。

 

 残骸の奥に潜んでいた機体が杖を突き出すと、大きなルーン文字が出現。明るい赤色で輝き始める。

 

「突撃魔道臼砲シュトルム!」

 

 シュトルムティーガーの前方で、円筒形居住型宇宙ステーションの残骸の内部が光で満たされる。

 

 

続く

 




【完結】NGチルドレン もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/

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