お久しぶりの方も初めましての方も、最後まで楽しんで頂ければ嬉しいです!!
クエスチョン!
――――この世で一番歪んだ呪いが愛ならば、この世で一番無責任な呪いはな~んだ?
割り切り捨てたはずなのに、奥底にへばり付くヘドロのように不快感だけを与える夢は一種の呪いだ。
【この呪力も持たない猿め】
【誇り高き禪院家から、まさか呪力を全く持たない猿が産まれるとは】
幼い頃より次々に言われ続けた呪いの言葉。恨みや後悔、恥辱など、人間の身体から流れた負の感情が具現し意思をもった異形の存在たう呪霊を祓う事を生業とする呪術師において、御三家と呼ばれる権力を誇る禪院家。
禪院家に非ずんば呪術師に非ず 呪術師に非ずんば人に非ず。その言葉が指すように、呪霊も見えるとも呪力を持たず呪術師として無価値だった自分は人とされず猿と扱われた。
どれだけ力があろうとも評価されることの無い、ゴミ溜めの記憶。
◆◇◆◇◆◇◆
「おい、甚爾。人をパシらせといて寝てんじゃねぇよ!」
「あ゛~カスみてェな目覚めだ。
今ならガキの夜泣きの目覚めが幸福に思えるぜ」
「…人の顔をみて第一声がそれって喧嘩売ってんのか、コラッ!」
此処は何処にでもあるファミレスの一角。二人がけのソファーを占領して座っている男は、草臥れたスエットに身を包んだ、身長190近くの巨体に悪人のような顔に、口元にある古傷が悪人らしさを際立たせている
その甚爾の正面に立つ男は、グラスを二つ手持っており、甚爾よりも身なりはきちんとしているが一般的な女性が見ればドングリの背比べだと言うだろう。甚爾に負けず劣らずの巨体に逆立たせた青色がかった紺色の髪に右頬の傷とツリ目は、甚爾に負けず劣らずに悪人面の
「別にお前に言ったんじゃねえよ。
ゴミの夢を見ちまったんだよ」
「…そうかい。それはご愁傷様」
甚爾の言葉に暁は椅子に腰掛けながら持ってきたグラスを甚爾に差し出す。暁からグラスを受け取った甚爾は、一瞥する事なく寝覚めの悪さを払拭するかのように一気に飲み干すが、飲み干した瞬間顔が嫌悪に染まる。そんな甚爾の顔を見た暁はざまあみろと言わんばかりに笑みを浮かべる。
「てめぇ…」
「おいおい。人は折角お前の為にと持ってきた特製ジュースだぞ?
もう少し嬉しそうな顔をしろよ」
「何が特製ジュースだ、このバカ!
ドリンクバーのジュース適当に混ぜただけだろうが!!
ジャンケンに負けた敗者の癖に。敗者なら敗者らしく持って来やがれ!!」
「はぁ?そもそもイカサマした奴が偉そうに言うんじゃねえよ!!」
「生憎様、負け犬語は習得して無くてなぁ。
イカサマも見抜けなかった間抜けが何言ってるか分からねぇな」
そこから繰り広げられる口論は小学生レベルの聞くに堪えないもの。少なくともいい年した大人が昼間から話す内容では無い。
二人がそんなやり取りをしていると甚爾のポケットにある携帯から着信音が鳴り始める。瞬間、二人は先程までの低レベルな口論を止め、静かに席に座り直す。
「おう、俺だ。
そうか。なら、気をつけて帰れ。何かあったら直ぐに連絡しろ。
飯も作らなくて良いって言ってるだろ。まだ病み上がりなんだ。俺が適当になんか買って帰る。
あ?俺の事は別にいいんだよ。分かったな」
そう言って携帯をしまった甚爾には分かる者にしか分からない不安が隠れている。そんな甚爾らしからぬ感情を読み切った暁は面白そうに笑みを浮かべてしまう。そんな暁の笑みの意味を察したのだろう甚爾は、バツが悪そうな顔をする。
「なに笑ってんだよ」
「何、あの自分さえ良ければいいと豪語していた男が優しくなったなと思ってな。
「当たり前だろ。
人は死ぬ。俺はあの時初めてその意味を知った。
なあ、信じられるか?人って、このテーブルの角に頭をぶつけるだけで死ぬんだぞ。
それなのに俺に出来る事は何にもねぇ…何もだ」
コツンとテーブルの角を叩きながら告げる甚爾はその時のことを思い出してるのだろう。その顔は先程以上に似合わない後悔で彩られている。
その心情を読み取った暁は何も言わない。その時の甚爾はそれは酷かった。初めて得た陽だまりの空間。それを失う恐怖に顔を染め絶望を背負う姿は甚爾自身もそのまま死んでしまうのではと思わせるほどだった。
「尚更、照恵さんは偉大だな。
傍若無人な人でなしのヒモニートを二児のパパにするんだからな。
しかも一人はお隣の虐待を受けてた女の子と来た。
仮に照恵さんにノーベル平和賞を授与させようって言う動きがあったら俺は全力で推すぞ」
暁はそんな暗い空気を晴らす意味で、前向きな話題を振る。甚爾達が住んでいるアパートの隣に住む母子家庭の親子の関係は最悪という他なかった。そんな現状を見かねた甚爾の妻である照恵は、少女を引き取り育てると言い出したのだ。本来ならば、厄介事には首を突っ込まない甚爾だが、照恵さんに対してだけは甘く、その願いを叶えるために己のコネを最大利用して親権を勝ち取ったのだ。暁もその件には噛んでおり、その時の甚爾の右往左往を思い出すと笑みを止められない。しかし同時に次に発した言葉には、素直な称賛がある。
「うるせぇ。
第一、お前も奏で尻に敷かれるだろうが!」
「少なくともお前よりはましだ。
それよりも恵と津美紀は元気にしてるのか?」
「お前に答える義理はねえな」
そんな下らない会話をしながら注文していたメニューも届き食事を始める二人。そんな二人に近づく人影が一つ。
人影は暁の立つ。そうすれば当然、座っている甚爾はその人影に気がつく。すると甚爾はフォークにぶっさっしていた肉を落とし、やべっと顔をしかめる。
「うん?どうしたんだ、甚爾」
そんな異変に気がついた暁が疑問を口にした瞬間だった。
「はぁーい。そこのマダオのお二人さん
こんな美女の約束をドタキャンするなんて酷くない?」
「げぇ。由基ッ!!」
するりと暁の首に腕が回され固定される。その声から人物が誰か悟った暁は、ヤバいと思うが完全に固定されており逃げる事が出来ない。
暁が何とか拘束から逃れようと藻掻いている最中、甚爾は気配を決してその場から逃れようとするが…
「逃がすかぁ!!」
「ッ!
アキラてめぇ!!此処は俺に任せて先に逝けぐらい言いやがれ!!」
「死ねば諸友じゃあ!!
一人だけ助かろうなんじゃ、ダチとしてみすごせねぇ」
「知るか!!
一人で逝ってろバカ!!」
逃走を察した暁に阻止される。そこから繰り広げられるのは醜い足の引っ張り合い。自分に対する扱いに言いたい事があるが乱入者である金髪に赤目の美女
「
そう呟くと、甚爾の背後から脊椎骨が連なったような外観の式神が現れて甚爾の身体を縛る。瞬間、甚爾の身体を異常な重さが襲う。
「いでで!!おい由基。逃げねえから一端術式解きやがれ!!」
「…俺も逃げねえから、一端腕を解いてくれ」
ここに来て甚爾と暁は逃走を諦めて由基に対して降参を露わにする。しかし肝心の由基は怒りマークを額に見せる。
「なら早速行こうか」
由基は甚爾と暁の首元を掴み、二人をズルズルと引きずりながらファミレスを後にした。
既存の小説につきましては、この短編小説が書き終えた後より書き始める所存です。
よろしくお願いします。
アンサー。
―――――答えは、この物語の結末で。