呪術廻戦~暴と星と酒…遅延の春~   作:スペル

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何度目か分からないオススメ紹介です!
【クール系美女(外面)】です!!
これは結界師とのクロスオーバーに近い作品です。
主人公の出鱈目さが呪術界戦の枠組みの中で大暴れしているのは見ていてスッキリします!!


第七話 絶望

星漿体である天内の確保を完了した二人が向かったのは、高専から少し離れた場所にある一時利用のコインパーキング。二人はその一角に停められているバンの後部座席を開ける。開けた先には、由基が座っている。

 

「お疲れさん。

首尾は?」

 

「問題ねぇよ。誰と誰がやったと思ってやがる。

ほらよ!」

 

何処か挑発気味な由基の問いかけに甚爾はニヤリと悪人面な笑みを浮かべながら、懐から天内達を封じ込めた特級呪具である紙隠を取り出して投げ渡す。

呪具を受け取った由基は満足げに頷く。その表情には隠しきれない歓喜で彩られている。

 

「よし!

此処からは私に任せて君たちは最後の後始末に行ってきな」

 

由基はビシ!と荷物置き場となっている後部を指さす。そこには丁度14~5歳程の女性程の大きさに膨らんだ黒い袋がある。それを見た甚爾は袋の少し覗き込んでみる。僅かに盗み見たその完成度の高さに甚爾は流石と口笛を吹く。そして肩に乗せている呪霊に指示を出し、その黒い袋を収納する。

 

「死因は?」

 

「脳天に一発。銃殺って事になってる。

作業を見てた俺からしても、背筋が凍るぜ。

写真だけであそこまで精巧に作れるんだからな。

お前らも化物だが、技術という面じゃ秤は化物という枠組みにさえ収まらないナニカだと思うぜ」

 

煙草の紫煙を吐きながら告げた時雨の言葉に暁は苦笑しながら俺もそう思うと同意する。同意されたのが意外だったのか驚いた顔をする時雨に「失礼だな。俺はまだそこまで盲信じゃねえよ」とツッコミをいれた。

 

「おう。ガッポリ稼がせて貰うぜ。

それでお前の方はどうだ?Xに動きはあったか?」

 

「いや不気味なほど静寂だよ。

敢えて情報を流してみたりしてるんだけどね。

中々尻尾を見せなくてね」

 

「まあ、奏の話が本当なら千年単位で暗躍してんだ。それぐらいは当然だろ。

最も…」

 

「分かってるよ。

私の目的を考えれば必ずぶつかる。

でも負けないよ。その為に力を付けた。呪具(ぶき)を得た。

何より君たちを得た」

 

「なんだそれ。

似合わねぇよ。そんなもん俺らには特にな」

 

暁と時雨が話している傍らで甚爾と由基も話している。由基の言葉と何処か暖かみのある視線を貰った甚爾は何処かバツが悪そうな顔をして視線を逸らす。

何処か柔らかな雰囲気が車の中を包んでいたが、流石はプロ。瞬時に空気が張り詰める。物と物の交換を終え、由基は紙隠(じゅぐ)で隠していた愛車(バイク)を取り出し奏の元へ。

そして二人は時雨の運転で盤星教本部へと移動を始めた。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

盤星教“時の器の会”本部【星の子の家】代表室。時雨に連れられる形で訪れた二人は、依頼主である盤星教の代表役員である園田(そのだ)(しげる)と対面していた。

 

「ほらよ。

要望通り、星漿体天内理子の遺体。

五体フルセットだ」

 

甚爾は丁度真ん中にある、シーツのひかれたテーブルに武器庫呪霊に収納していたダミー遺体を放り出す。園田は放り出された黒い袋を開き中身を確認する。手元から写真を取り出し、目の前の死体と何度も見比べる。そうしてその死体が本人であると確認したのか園田は満足げに頷く。

 

「フム…確かに本物のようだ。

金の受け渡しは、手筈通りに受け渡そう。

無論、多少の色は付けさせて貰う」

 

「流石教祖様は太っ腹だな」

 

「いや、教祖じゃねぇよ。バカ」

 

「???」

 

園田の言葉に甚爾はテンションが上がり薄っぺらい称賛を述べる。甚爾の言葉に呆れながら暁が指摘するが、本人は意味は分からないのか頭に?マークが浮かんでいる。

そんな二人のやり取りを無視して仲介者して時雨は仕事を行う。

 

「いいのか?

必要経費は最小限にして貰ったとは言え、一人の暗殺任務としては破格金だぞ?

寧ろ、ゴネられるかと思ったんだが…」

 

「いいじゃねぇか、コウ。

教祖様本人が払うって言ってんだからよ」

 

「お前がよくても仲介業(こっち)が困るんだよ。

その辺をしっかりしとかねぇと、仲介者の意味がなくなる」

 

「まあ、当然だな」

 

そんな三人のやり取りを聞いていた園田は不気味な笑い声を上げる。自ずと三人は会話を切り上げ園田に視線を向ける。

 

「フフフッ。

私たちは元々駄目元で君の依頼を受けたのだよ。

我ら盤星教は奈良時代天元様が日本仏教の公布と共に術師(マイノリティ)に対する道徳基板を説き始めたのが始まりだ」

 

いきなり語り出した園田に三人は「は?」と言う顔をするが当の本人は全く気づかず、言葉は更に熱を持ち始める。

 

「呪術界と宗教法人(・・)の相性は言うまでも無く、最悪!!

そんな中で僅かな繋がりと歪みの中で生まれたのが、現在の盤星教“時の器の会!

故に我々は非術師の立場に徹してきた!様々な越権が許される術師にとっても原則として非術師への攻撃は禁忌(タブー)とされている!!

だが時は来てしまった!!!!」

 

代表役員として多くの信徒達の前で演説を行って来たからこそ言葉は演説と化している。熱心な盤星教の信者ならば、感動で拍手でも行うかも知れない。

しかし今居るのは宗教心など持ち合わせてはいない。ただ早く終われと上の空で聞いている。

 

教典に記された最大の禁忌(タブー)!!

絶対的一神教へと成り果ててしまった盤星教!!!

その対象である天元様と星漿体(ケガレ)の同化!!!!!

 

乱暴に死体をシーツで包みながらも園田の演説は終わらない。

 

「信徒の手前、同化を見過ごせば会は立ちゆかなく成る。

かといって行動を起こせば、術師達に目を付けられ我々は解体される。

もうヤケクソだったのだよ。我々は」

 

シーツで包んだ死体を抱き上げた園田は、漸く三人に視線を向けた。シーツを持つ手に力が籠もっている。

 

「だがどうだ?

失うはずだった全ては、今は全て手中にある!!

財布の紐も緩むという物だよ」

 

語り満足したのか園田は代表室から去ろうとする。そんな彼を止めたのは意外にも時雨だった。

 

「もしも天元が暴走すれば立ちゆかなく成るのは人間社会かも知れねぇぜ?」

 

星と共に墜ちるのならばやむなし

 

時雨の問いかけに一度は足を止めた園田だが、その言葉と共に今度こそ部屋を後にする。園田が去った後、甚爾は頭を指さし、指を開店させて上を指さす。その顔は馬鹿を見るようなものだ。

時雨もまた呆れたように煙草を懐から取り出す。

そして暁は…

 

「いや…500年周期で起きてんなら、何だかんだ生き残ってんじゃねぇえか。

怖いのは自分の地位が無くなることだろうが。要は集団自殺じゃねぇか…物は良いようなだな」

 

「違いねぇ」

 

建前の裏にあるヘドロのような利己を言い当ててしまう。暁の言葉に時雨も同意して苦笑を零す。そうして入金が確認された三人は星の子の家を後にする。

 

「それじゃあ、俺は先に奏達の元に戻る。

戸籍の準備やらなんやの手配があるからな。

おまえらはどうする?」

 

「適当な場所で飯食ってから戻るわ。

準備やらなんやらで結局昼飯も食い損ねたしな」

 

「賛成だ。

ここら辺で一番近いファミレスって何処だ?」

 

「来るときに1カ所見つけた。

俺らの足なら10分足らずで行けるだろ。そこにしようぜ」

 

車に乗った時雨の問いに暁が答え、その提案に乗った甚爾が時雨に近くにあるファミレスの場所を聞く。そんな二人のやり取りに時雨は安上がりだなと思う。二人とも飯にさほど拘りを持っていないが、高級店の味が分かる程度には舌は肥えている。しかしどういうわけか二人で話したりするとなると二人は、高級店などは好まず、チェーン店の何処にでもあるファミレスを好むのだ。そして二人にはその自覚は無いと来ている。二人やり取りに呆れながらも時雨は早く戻って来いよと告げて先に出発する。

車を見送った二人は、そのままたわいも無い会話を続けながら歩き出す。そうして出口へと辿り着こうとした瞬間、雲の切れ目から陽の日差しが降り注ぎ、二人の視界を一瞬塞ぐ。

視界が晴れた先、そこには殺したはずの男が立っていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「よぉ、久しぶり」

 

「…嘘だろ」

 

「…マジか」

 

「大マジ。

元気ピンピンだよ」

 

驚愕で動けぬ二人に現れた五条は髪を巻き上げある場所を指さす。それを見た甚爾は何故五条悟が生きているのかを理解する。

 

「反転術式!!!」

 

「正っ解っ

オマエらにやられた時点で、反撃は諦めて、反転術式に全神経を注いだ!

呪力は負のエネルギー!強化は出来ても治療は出来ない!

故に負と負のエネルギーを掛け合わせ、正のエネルギーを生む!

言うは易く行うは難し。俺も今まで出来たことはねぇよ!!唯一出来る奴は何を言ってるか分かんねぇよしよ」

 

――――こいつ、ベラベラとハイになってんのか?「甚爾…おい、甚爾!!」

 

「だが、死に際で掴んだ、呪力の核心!!

オマエらの敗因二つ!

あの呪具で頭をブッ刺さ無かったこと。

首を刎ねなかった事!!」

 

――――マズイ「おい、聞こえてるだろ甚爾!!」

 

「……敗因?勝負はこれからだろ」

 

あ”―――。

そうか?

そうだな

そーかもな!!

 

暁が静止するよも早く地面を蹴った甚爾が五条へと肉薄する。振るわれる鉾の刃を躱した五条が甚爾の背後を取る。

瞬間、暁が動くが出だしは五条が早い。

 

――――間に合うか!!

 

反転術式によって生まれた正のエネルギー。そのエネルギーを自らに刻まれた無下限の術式に流し込む。本来の反応である虚数による集束だけではなく、反転した虚構からの集束から発散が事象として起きる。

 

術式反転

 

無防備な甚爾の背後に無下限の集束→発散が炸裂する瞬間、暁と共に大量の液体が壁となって現れ衝撃を軽減するが堪えきる事は出来ず、二人百メートル単位で吹き飛ばされる。

何とか勢いを殺した二人は施設の壁に叩き付けられる。

 

――――【流】で操った備蓄全部吹き飛ばしてこれからよ

 

術式により何とかダメージを軽減した暁はその威力にただ畏怖を感じる。そしてそれは隣にいる甚爾も同じだった。

微かに映る視界に宙に漂う五条悟の姿に

 

「「化物(バケモノ)が」」

 

無意識の内に二人はそう呟いた。

だが幸か不幸か距離は開いた。逃走を考えるならありだと割り切り、今度こそ暁は甚爾と作戦を立てようと声を掛ける。

しかしそれを無視して甚爾は身体の調子を確認している。戦う気満々だ。先程から甚爾は此方の事を気づいても居ない。

だからこそ、暁は…

 

「おい!いい加減にこっちを見ろ馬鹿野郎!!」

 

渾身の力で甚爾をぶん殴った。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

身体の調子を確認しながら甚爾は五条悟の手札を確認する。そうして行うのは勝つための組み立て。その部分に全思考を回していたためにその衝撃に身体が僅かに浮き上がる。

 

「い゛っ!」

 

想定外の打撃に堪らず甚爾は頬を抑えてしゃがみ込んでしまう。そうして低くなった甚爾の頭に暁の蹴りが炸裂する。呪力によって強化された蹴りは容易く甚爾を壁に叩き付ける。

 

「何しやがる!!

今はこんなことを――――」

 

苦痛に悶えながら甚爾が吠える。しかし暁はその顔に何の色も見せずに漸く見やがったと小さく呟いた。感情が先行しているが故にその言葉が聞こえなかった甚爾が怒りを口にするよりも早く暁が口を開いた。

 

「【タダ働きなんてゴメンだね】

何時ものお前ならそう言ってトンズラこいてる場面だろうが」

 

「ッ!!」

 

たった一言。その言葉を突きつけられて甚爾の動きが止まる。そんな甚爾の心情を理解しているが、暁は口を止めない。相手に動きは無いが、何時仕掛けてくるか分からないのだ。本来ならば、この時間さえ無駄なのだ。

 

「ねじ伏せたくなったか。

かつてお前を否定した呪術界(せかい)を」

 

「―――――」

 

それだけで十分だ。その言葉の続きを聞かねば成らないほど伏黒甚爾という男は子どもでは無い。身体から力が抜け、思考がいつものようにクリアになる。そして自分を真っ直ぐ見つめる相棒の姿。

ここに来て漸く自分の視野が狭まっていた事に気がついた。

 

「…悪かったな」

 

「気にするな。お互い様だ。

それより目は覚めたか。」

 

「問題ねぇよ。今から逃走の「うんじゃあ、どうする?」はぁ!?

 

逃げる算段を考えようとした瞬間、今度は暁の言葉に甚爾が声を荒げる。そんな甚爾の姿に暁は何を驚いてるんだと?を浮かべる。

 

「お前、何を言ってるのか分かってんのか。

相手は恐らく覚醒したであろう無下限呪術の使い手だぞ!!

忖度抜きで。現呪術界最強と成った呪術師だ!!

普通に考えて勝ち目なんてあるわけなぇだろ!!

逃げる一択だろうが!」

 

先程とは立場が逆転している。詰め寄ってくる甚爾に暁はまだ冷静じゃ無いなと呟いた。今度こそその言葉の意味が理解できない甚爾だったが、次の瞬間それを理解する。

 

「別に俺は戦う事を否定したんじゃねぇよ!!

俺も見ずに一人で戦おうとした事に怒ったんだよ。

何時も言ってんだろが!!俺らみたいな人種は、自分を肯定するために、普段の自分を曲げたら駄目なんだと!!

舐めんなよ、バカ!!この依頼を受けた時点で、こうなることは想定済みだったんだよ」

 

理解は出来た。だからこそ甚爾は言葉がでない。

 

「はあ。

普段は達観してますよって見せてるくせに、未練たらたらなのは知ってんだよ。

そもそも自分のガキに恵って名前を付けたのも、照恵さんから文字を取ったてだけじゃないだろ。

今回の依頼も要所要所で未練見せやがって、俺が気がつかないとでも思ってんのか?

だとしたら、舐めすぎだ」

 

一度言い出してしまえば暁も止められない。もう五条悟が攻めて来ようが関係ない。目の前のバカに告げなければ、自分の気が収まらない。

 

「だからもう一度聞くぞ、どうする?」

 

暁の問いに甚爾は答えられない。それはとうの昔に捨てたのだ。でも今目の前にそれが確固たる選択肢として現れる。

 

「本気か…」

 

「大真面目だ」

 

「死ぬぞ…」

 

「人は何時か死ぬもんだ」

 

「何でそこまでする。理由が無いだろう…」

 

「理由か。そうだな、渡邊暁(おれ)伏黒甚爾(おまえ)だからでいいか」

 

話している最中で奥底の奥底に眠っていた火種が煙を上げ始める。今までずっと諦めてきた人生だった。数少ない照恵(ひかり)も、呪われた場所は照らせない。だから一度だけ、たった一度だけ。奥底にいる禪院甚爾(おれ)を肯定しよう。それだけの相棒がいるのだから。

 

「勝つぞ」

 

「よしきた!」

 

たった一言。それを成す事の難しさを知っているはずなのに暁は普段通りに答える。

 

「作戦は?

言っておくが、予備も備蓄もどっかの誰かさんが無作為に突っ込んだから使い切ってるぞ。

あるのはビン二つと複数の呪具だけだ」

 

「悪かったな。

解析(・・)は済んだのか?」

 

「――――もうちょい掛かるな」

 

「つまりは―――」

 

「ああ、計画(プラン)Dだな。

しくじるなよ。ミスったら、呪霊になって化けて出てやる」

 

「お前を祓う(ころす)のは骨が折れそうだから遠慮するわ」

 

「なら任せるぞ、甚爾(あいぼう)

 

「任された、(あいぼう)

 

コツンと拳をぶつけ合った二人は最強(ぜつぼう)へと立ち向かう。




奏「良かった。私が用意した呪具が無駄にならなくて」
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