俺は俺を笑うぜ。
この俺が信じているなんてよ。――――伏黒甚爾。
この現象が起きたとき、その打撃の威力は平均して通常時の2.5乗の威力という驚異的な攻撃を叩き込む。即ち、ほぼ無防備な状態でそれを受けてしまえば、下手をすれば命さえ失いかねないのだ。
黒い火花が炸裂した瞬間、五条は今度こそ勝ちを確信する。二人の連携の基準点は二人が持っている。故に一方を崩すだけで、もう片方も崩れる綱渡り。
だが…
「マジか。往生際悪すぎだろ」
「カハッ――――うるせぇ」―――――特級呪具・
暁が喰らうはずだったダメージを人形が肩代わりする事で何とか致命傷を避ける事に成功する。しかしそれで五条の追撃は終わらない。体勢の整っていない暁へと続けざまに拳を叩き込もうとした瞬間、上より振るわれる鉾の気配を察して距離を取る。五条が距離を取った事で、体勢を立て直すことが出来た暁は一度甚爾の近くにまで距離を取る。
「ぜぇぜぇ」
――――特級クラスの一撃でも壊れない形代が、一撃で壊れてやがる。マジでやばかったな「行けるか」
「…問題なし!!」
甚爾の肩を借りながら何とか息を整えた暁は問題なしと告げる。やせ我慢である事は分かっているそれでも甚爾はそれ以上何も言わない。
瞬間、二人の脳裏にアラートが鳴る。考えるよりも先に二人はその場を離脱する。二人が離脱した瞬間、順転の蒼が炸裂する。
――――出力を絞った蒼を多数展開。
明らかに俺らの動きを止めることが目的だな。
――――順転しか使っていないが、反転は使わないのか。
いや、切り替えの隙が大きいから余り使いたくないのか…俺たちがどんな呪具を持っているか分からないから安易な隙は作りたくないと考えるべきだよな
――――だがこっちが先に隙を見せれば、アキラがされた様に距離を詰めて叩き込まれるか反転か虚式を撃ち込んで来る可能性もあるな
――――だが奴は、黒閃を決めてる。そう思い込ませる事が目的の可能性さえある。
高速で移動しながら二人の思考は加速していく。五条悟を中心として駆け抜ぬける。回避は出来るともそこから先への組み立てが出来ない。
だから負けが決まっている削り合いを受けるしかない。
――――マズイ。もう少しで術式効果も切れる。猶予は無い
その中でこの硬直状態にひときは焦りを抱いているのは暁だ。彼の身体能力は現状、自身の術式効果によるものである。しかも質が悪いことに呪力がある限りかけ続ける事出来るタイプでは無く、触媒を利用するが為に使用できる回数にも限りがある。
――――【香】はきちんと発動しているが、黒閃決められたせいで効果が半分も通ってない。
状況の把握に努めながらもつくづく自分たちに不利な要素が連なっている事に、世界の意思というものを考えられずにはいられない。
その思考の偏りもミスとも言えない、針に糸を通すよりも小さな穴。しかしその穴を五条悟は見逃さなかった。
「「ッ!!」」
順転から反転への切り替え。
――――術式反転【赫】
無下限による集束と発散の反応が現実世界に現れる。しかし二人は既に五条の射線から90度の左右から詰めに行く。どちらか一方に攻撃を向けたとしても確実に一方が殺れる戦型だ。
それは五条もまた同じ。
「「なっ!!??」」
立て続けにある
――――術式順転【蒼】
無下限の順転による集束反応が、展開されてしまったこと。此処で認識の違いが出た。順転と反転を同時に行う事で発動可能な虚式は、その難易度故に縛りを設けている考えていた。
が…
――――何で反転術式使いながら通常の呪力操作を並列して複数行えてんだよ!!!
――――巫山戯るな!!!畜生!!
自分たちが罠に掛かったことを悟のに時間などいらない。罠と分かった時点で両者ともに動き出す。攻撃は更なる罠の可能性がある為、安全地帯までの待避を優先する。
甚爾は鉾を利用して回避の道を作り出すが、違和感を一つ覚える。
鉾の転移が起きない。何故?イやそもそも、発動途中だった反転を放たない理由は無い。まさかと五条悟に視線を向ければ、ニヤリと今までは自分たちが浮かべていた笑みを浮かべている。
ここに来て目的を理解する。
「アキラッ!!」
「遅えよ!!」―――術式反転【赫】
初めから狙いは暁。罠だと思わせ、連携を途切れさせ個別に撃破する。それこそが五条悟の真の目的。甚爾が吠えるが、回避のために距離を取ってしまったために打てる手段を封殺された。タッチの差で転移をしても反転は防げても周りの順転は防げない。完全なる詰みの状況に持ち込まれ、甚爾が叫ぶ。
そしてそれは暁も同じだった。
――――逆様雅は破損して魂盾の形代はもう使えない。天逆鉾があっても詰みだな
完全に詰んだ状況。此処まで来ると頭は一周回って冷静になってくる。遠くで甚爾の声が聞こえるがそれだけだ。妙案は浮かばない。しかし諦めているわけでは無い。
――――勝つ可能性があるとすれば一つだけ。だがそれは賭けだ。それも他人に全てを委ねる形になる
そこまで伏黒甚爾という男と秤奏という女を信じられるか。自問自答が起きるが、暁は鼻で笑って見せる。
――――今更だろ!!「甚爾!!」――特級呪具・
「ッ!!」
相棒に声を掛ける。それだけで伝わると信じて。転移によって鉾を持ち、迫り来る発散の無下限を相殺する。しかしそれは五条も想定通りの動き。周囲を取り囲む順転が暁に襲い来る。
鉾を左手に持ちいくつかの順転を無効化させるが、それは明らかに多勢に無勢だ。
「っ!?」
「捕まえた!!」
右腕が無下限の順転に捕まる。後は身体が全て呑み込まれて圧死する筈だった。ザシュ!と左手に持った鉾で右腕を斬り捨てることで呑み込まれる事を回避する。
迷い無い行動に五条は関心を見せるが、無駄な足掻きだと笑う。
「今度こそ終わりだね」
「大人を舐めるな、ガキ!!」――――解析終了の合図は鳴った!!右腕捨てた甲斐はありだ!!
――特級呪具・
◆◇◆◇◆◇◆
「つかよ、まずはこの無下限をどうするかだよな。
鉾があるって言っても、手段が一つじゃ詰みだろ」
「うんな事言ってもよ。
攻略法なんじゃ術式を発動させないか削るしかねぇだろ」
「まあそうだよね。
真面な攻略法が存在しないからこそ、呪術界における最強の術式なわけだし」
「…出来るよ」
「「「はあ!!??」」」
「マジで…?」
「マジで」
「ギャグじゃ無くて…?」
「ギャグじゃ無くて」
「ホントのホントに…?」
「ホントのホントに」
「どうやって攻略するんだ?
お前が冗談を言う奴じゃ無いのは知ってるが」
「うーん。まあ実物を見てないから多分が付くけど、9割方は行けると思うよ。
丁度以前の研究内容が流用できそうだし。
ようは、無下限はアキレスと亀なんでしょ?亀を術者として、アキレスをその他とする。
なら、術式に私たちを亀だと誤認させれば良いのさ」
「「「はぁ!!??」」」
「後は集束反応にも対応出来るようにしてあげるよ」
◆◇◆◇◆◇◆
その呪具が展開された瞬間、水面に映る薄い月が広がり、周囲に展開されていた虚構はまるで波紋によって消える水面の月の様に消え失せる。
パリンと暁が身につけていた月のペンダントが割れる。
――――解析後、直ぐに多数の調和をさせすぎたか…
右腕を捨てるという縛りで解析の密度と速度を上げた弊害か…?
兎に角助かった。
右腕を失った痛みを堪えながら暁は何とか地面に降り立つが、腕を失ったダメージもあり倒れてしまう。
そんな暁を見下ろす様に立つは五条。
「てめぇ何をしやがった」
「…余裕だな。
さっさと息の根は止めなくて良いのか」
「別にお前みたいな雑魚、死のうが生きていようが問題ねぇよ。
それよりもだ。オマエらが持ってる呪具。
何処で手に入れやがった」
今まで見せてきた自身の知識に無い異質な呪具たち。その出所を知る事に五条の意識は優先されている。それは最強に至ったが故の余裕の現れ。
五条の問いに暁の脳裏に歪んだ繋がりで繋がったもう一人の相方の姿が浮かぶ。だからこそ答えは決まっている。
「うるせぇ、バーカ。
お前に話す事なんじゃ一つもねぇよ。
好感度上げてから出直せ!!」
「…そうかよ」
拷問しても無駄だ。そう感じさせる声音に五条はトドメを刺すという選択を選ぶ。それは自己を最強へと押し上げてくれた者へ対する敬意かそれとも…。
「ハハ」
「何が可笑しい」
「いや、人生ってのは分からねぇ物だなと思ってな。
必死に作戦立てたんだが、最期の最期にひっくり返されたなのに、微かに残ってるんだからな」
笑いながら暁は左手を逆手にしてまるで合掌の構えを取る。瞬間、五条の脳裏にある選択肢が浮かび上がるが、あり得ないと切って捨てる。それを行うには手が文字通り足りないのだから。
「幾ら
お前の敗因は、俺を直ぐに殺さなかったことだ!!」
五条の本能が警告する。それに従うように息の根を止めようとするがそれよりも早く、息を隠していた天与の暴君の右手が暁の逆手の左手を掴む。
瞬間、二人の最凶が形作った掌印は鬼子母神印。刹那、五条が術を発動するよりも早く呪術の深奥が展開される。
【
~第四回凄いぞ!秤奏作呪具紹介~
①
階級:特級相当
値段:20億相当
効力:所持者のダメージを代わりに引き受けてくれる。許容量以内ならば、どんな攻撃でも肩代わり可能で術式の対象もその一つ。
主な素材:所持者の魂の情報とある神木。
◆
②
階級:特級相当
値段:10億相当
効力:無下限呪術の妨害。
主な素材:とある呪詛師と呪術師の肉体情報。
◆
奏「なんで壊したの…?」