ようこそ高校デビューを目指す教室へ   作:ほんごー

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シティーハンターの筆休めに書いてみました。

よろしくおねがいします。


1話 バスに乗って揺られてる

 

 俺の名前は青島公人。今日から高校生になる十五歳、誕生日は9月13日で血液型はO型、身長はこの間の測定では180㎝、体重は70㎏。特技は幼稚園の頃から習っている古武術、趣味はアニメや特撮の鑑賞で、俗にオタクと呼ばれる人種。『イケてる』『イケてない』の二択だと、多分『イケてない』に軍配が上がるタイプの人間で、悲しい事に彼女いない歴は年齢と同じ。

 

  そう、彼女いない歴は年齢と同じなのだ。別に授業でのグループワークや委員会の仕事をする時に女子と会話する事も有ったし、女子と話せない訳ではない。ただどうしても恋愛にまで発展しないのだ。思い返せば今までずっとそうだった。女っ気の『お』の字もない人生を送っていた。

 

 昔こそはこんな人生を送っていても『楽しければいいや』などと楽観的に考え、それほど問題視していなかった。だが小学六年の学校帰り、心の中でふと思ったのだ『もしかしたら一生このままなんじゃないか』と。普段なら軽く笑い飛ばす程の小さな不安、だがそれは時間が経つにつれて徐々に大きく有っていく。確かに今までの人生に不満はなかった、だがやれ『彼女が出来た』だの『彼女と別れた』などの話題で、ワイワイ騒いでいるような『イケている』タイプの人間、俗に言う『リア充』に憧れていたのも確かだった。

 

 『このままじゃ嫌だ。』その意思が芽生えてからは早かった。俺は自分自身を少しでも良い方向変える為に、自分自身を磨く為の修行を始めたのだ。

 

 勉強は勿論、より一層古武術の修行にも励み、沢山の新しい事に挑戦した。サッカー、バスケットボール、水泳、トライアスロンなどのスポーツにも積極的に取り組んだ。すべてはモテる為に、リア充なってチヤホヤされる為に、ただ実直に自分を追い込み、己を磨いていく。だがそんな修行を毎日続けていた結果、いつの間にか中学が終わっていた。

 

 流石にこれには頭を抱えていた、そういえば中学に入ってからずっと自分磨きに夢中で友達も彼女も出来なかった。その結果、俺は中学でロクな思い出を作ることが出来ず、3年間を修行の毎日で終えたのだ。本末転倒も良い所だろう、リア充になる為の修行をしていたら気が付けばボッチになっていたなんて。

 

 そして俺は誓った。来年こそは、高校こそは色んな思い出を沢山作って見せると。絶対に高校デビューして、可愛い彼女を作り、友達を作って、楽しい学校生活を送って見せると心の底から誓ったのだった。

 

 

4月、丁度桜が満開に咲く頃、入学式に向かうバスに乗り、窓から変わりゆく景色を眺めて居た。上京してからまだ日が無いせいか、何処も目新しく見える。俺の出身が畑や田んぼが多い田舎だった事もあってか、こうして都内のコンクリートジャングルを見るのは新鮮だ。

 

 しかし都内とは恐ろしいものだ、建物もそうだが人口がまるで違う。俺が居た所ではバスが満席になる事なんて珍しい事だったのだが、都内では忽ち席が埋まり、あっという間に満員になってしまった。やはり都内と俺の居たい中では人口の数が比べ物にならないのだろう。バスの数が多いのも納得できる。だがそんな田舎者独特の感想もすぐに消し飛ばされた。

 

「君、席を譲ってあげようとは思わないの?」

 

 一瞬ドキッとして思わず姿勢を正す。あれ? もしかして俺怒られた? 周りをキョロキョロと見渡してみるがどうやら注意されたのは俺ではなく、少し離れた席の男の様だ。

 

 優先席にどっかりと腰を下ろしたガタイの良い金髪の男、というか高校生だな。俺と同じ制服を着ている。そして彼の真横には酷く腰の曲がった老婆が一人、その隣には若いOLが立っている。

 

 ―――推定年齢70歳前後、歩き方、立ち方から腰部に何かしらの問題あり、椎間板ヘルニアの可能性が高い。

 

 成る程、ある程度状況が読めた。ならば俺のやる事は只一つだろう。

 

「すいません、こっち空いてますよ。」

 

「ありがとう、助かるわ!」 

 

 上手く席まで老婆を誘導するOLさん、俺は老婆と入れ替わる様に席から離れ、手すりを掴むスタイルに体勢を変える。 

 

「ほんと、ありがとねぇ。」

 

「いえいえ、こういう時は助け合いでしょ?」 

 

 その後ガタンゴトンと揺れるバスの中、どうにかバランスを取る。これ本当にお婆さん席に座っていてよかったな……下手したら転んでも可笑しくないぞ。 

 

「きゃっ!」

 

 そんな事を考えていると、一瞬だけ小さな悲鳴が聞こえ、俺の胸に柔らかい感触が当たる。どうやら隣の女子がバランスを崩したようだ。直ぐに肩に手を回し、転倒を防ぐ。

 

「大丈夫?」

 

「にゃははは、大丈夫。有難う。危うく転んじゃう所だったよ。」

 

 体を離して女子生徒を元の体勢に戻す。だがその時彼女の顔が眼に入り、思わず息を呑んだ。長くて淡いピンクブロンドの髪に、整った顔立ち、抜群のプロポーション、彼女は正に美少女と言う存在だったのだから。凄い、これが東京。

 

「……可愛い。」

 

「えっ?‥‥……に、にゃははは……ありがと。」

 

 瞬間少女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするも、すぐに我に返り頬を赤くしながらお礼を言っていた。何か変な事を言ってしまったのだろうか。でも引き下がれない、なんせ高校生になってから初めての女子との会話何だ折角だし、何か話さないと……でも何を‥‥取り敢えず自己紹介しておこう。制服からして同じ学校みたいだし。

 

「えっと……その制服って俺と同じ高度育成のだよね? 俺は青島公人。君は?」

 

「うん、私は一之瀬帆波。よろしくね青島君。」

 

「ああ、宜しく一之瀬。」

 

 ってコレ完全に俺のやっている事ナンパだよな。絶対に周りからチャラい奴だって思われているよ‥‥…でもボッチに比べたらチャラ男の方がずっとマシだ。もうこうなったら引き下がらない。ナンパでも何でもやったるわ。だがそんな決心をよそに今度は一之瀬から話しかけて来た。

 

「あのさ、さっきのお婆さん。助けてくれてありがとね。腰、痛めてそうだったから。」

 

「えっ? あー……」 

 

 先程の老婆の事を思い出す。そういえばかなり御高齢だったし、腰痛そうだったな……

 

「いや、別に大した事してないよ。ただ俺は手を伸ばしただけ、ただそれだけだよ。」 

 

「そっか……優しいんだね。」

 

 一之瀬はそう言っているが、俺は別に自分を優しいとは思っていない。ただ当然の事をしただけ、あの老婆が困っていたから手を伸ばしたという単純な行動をしただけの事。

 

 むしろ先程注意されていた金髪の方がおかしいのだ。現に注意された後である今でも、足を組んで優先席にどっしりと座っている。どうやら誰にも席を譲る気はないようだ。視線に気付いたのか此方にウィンクしてきたように見えたけど、気のせいだよな?

 

『次は高度育成高等学校前、お降りの方はお知らせ下さい』

 

 すると車内放送が鳴り響き、目的地が近い事を知る。

 

 高度育成高等学校―――国が設立した教育機関であり、東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の名門校。希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校。3年間外部との連絡は断たれる上、学校の敷地内から出るのは禁止された寮生活になるが、広大な敷地内は小さな街になっており、不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校。 

 

「あっ、青島君、ついたよ!」

 

「ああ、よかったら校内まで一緒に行くか?」

 

「もちろん!」

 

 バスを降りると、一之瀬と共に学校へと向かう。ここが高度育成高等学校……これから俺が3年間過ごす場所か‥‥俺は周りの光景を見渡しながら、前を歩く一之瀬についていく。周りには多くの人がクラス分けが張り出させてる屋外提示板に集まっていた。 

 

「これは……クラス分けか。」 

 

「うん、AクラスからDクラスまで有るみたいだね。」

 

 掲示板を見つめる一之瀬を尻目に、俺はAクラスから順に自分の名前を探す。どうやら一之瀬は先に名前を見つけた様であり、俺が自分の名を見つけるより先に声を上げた。 

 

「私はBクラスだって。青島君は?」

 

「俺は……Ⅾクラスみたい。」

 

「そっか……別々みたいだね。残念。」

 

 残念そうに肩を竦める一之瀬。やはり折角知り合った者と別々になると言うのは寂しい。何処か彼女も落胆している様に見えた。でもちょっと残念だな……折角知り合った子なのに。 

 

「まぁクラスは別でもこれから世話になるかもしれないし、宜しくね一之瀬。」

 

「うん! 勿論!」

 

 俺は自分に言い聞かせる事も兼ねて一之瀬にそう言うが、彼女はそれ程気にしていない様で、すぐに気を取り直していた。

 

「それじゃ行こうか。青島君。」

 

 ここから始まる全寮制の高校での学園生活。3年と言う長いようで短い期間だけど、俺は見事に高校デビューを果たして見せる。少し不安だけど、頑張ろう。強い意気込みと一抹の不安を抱えながら、校内へと足を進める。

 

 だがこの時俺達は知らなかった、まさか俺の高校生活があんなにも常識外れな日常になるなんて。本当に知る由もなかったんだ。

 




皆様のご感想・コメントをお待ちしています。

もし貴方が実際に高度育成に入学したとして、Sシステム等といった制度に対して賛成的ですか?それとも反対ですか?

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