アイシールド21 Reset the game   作:アリスとウサギ

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敗者はいない

 泥門デビルバッツ(24)()王城ホワイトナイツ(30)

 

「な、なんと……ボールを確保したのは、桜庭春人くんです! ドラマは最後に待っていた!!」

「「「きゃーー、桜庭くん!!!」」」

 

 桜庭さんのファンが、大歓声をこだまする。

 しかし、当の桜庭さんはいつものように声援(それ)に応えることはなく、ただただ喜びを噛みしめていた。

 

 ──キミはもう、誰にも負けることを許されない。

 

 未来で、とある選手に言われた言葉。その言葉が今になって、重くずっしりと乗しかかる。

 

「ああ、そうか……」

 

 僕たちは、僕は、また負けたんだ。

 

「くっ……」

 

 膝をつき、地面を叩く。流れる涙を止めることができなかった。

 

「うおおおおおお〜〜ん!! せっかくいい勝負ができたのに、また負けちゃったよぉおおおっ!!」

「うっ……みんな……」

 

 栗田さんとベンチにいるまもり姉ちゃんも同じだった。

 だけど、そんな僕たちを迎えたのは、惜しみない拍手の雨だった。

 

「よくやったぞ、デビルバッツ!」

「いい試合だったーー!!」

「すごかったぞォ! アイシールドーー!!」

 

 球場にいるほとんどの観客たちが、僕たちに力いっぱいの拍手を叩き続けていた。

 そうだ、試合はまだ終わっていない。整列しなくちゃ。

 泥門と王城。互いの選手が一列に並ぶ。敵チームだった相手の監督に感謝の気持ちで頭を下げ、僕たち(泥門と王城)は交差する。

 

全国大会決勝(クリスマスボウル)に行くのは──王城だ!」

全国大会決勝(クリスマスボウル)に行くのは──泥門です!」

 

 進さんと僕は、同じ決意を胸に、聖泉球技場をあとにした。

 

▪︎

 

 次の日の放課後。僕はまもり姉ちゃんと二人で、試合の時に撮った写真の整理を行っていた。

 アメフトは戦略も重要な要素となるスポーツ。たかが写真一枚からでも、得られる情報量は意外と多い。

 

「あ、これセナが写ってる!」

 

 そう言って、まもり姉ちゃんが一枚の写真を差し出してきた。僕がタッチダウンを決めた時のやつだ。

 

「セナ、ほんと大活躍だったよね! 私、感動しちゃって……ううん、それじゃダメね。次からはデビルバッツのマネージャーとして、私も頑張らないと」

「…………」

 

 試合が終わった翌日なのに、まもり姉ちゃんはもう次のことを考えて、自分のやるべきことをやろうとしている。

 でも、僕は違った。頭ではわかってる。秋大会に向けて頑張らなきゃいけないって。

 けど……

 

「僕は知っていたんだ。デビルバッツの強さは、まだまだあんなものじゃないって。なのに……」

 

 なのに、結果は前回と同じ。そりゃあ、過去の試合よりは接戦だった。でも、1点差だろうと、100点差だろうと負けは負けだ。

 

「勝てるチャンスはあったんだ。それなのに、僕はそれを活かすことができなかった」

「セナ……」

 

 労わるように、まもり姉ちゃんが口をつぐむ。

 その時だった。教室に新たな乱入者が現れたのは。

 

「ったく、まだ整理終わってねーのか?」

「お疲れ様、二人とも」

 

 ヒル魔さんと栗田さんだ。二人は僕たちの座る席までやってきて、仕事の進み具合を確認する。

 

「ヒル魔さん……」

 

 勝てなきゃなんも意味はねえ。ヒル魔さんがいつも言ってる言葉だ。

 正直、僕は普段そこまで強く勝ちにこだわっているわけじゃないのだけど、試合中や試合が終わった後、そして今は強く思う。その通りだと。

 どんなにいい試合をしても、負けてしまったら意味はない。

 

「糞チビ……」

 

 窓を眺めながら、ヒル魔さんが言った。

 

「テメーは進を相手に負けちゃいなかった。泥門(うち)が負けたのは……オレたちが弱かったせいだ」

「……え?」

 

 なんて? ヒル魔さんたちが弱かった?

 

「ち、違います! そんなことは……」

「だったらテメーも、いつまでもうじうじしてんじゃねえ!」

「ひぃいいい!?」

 

 どこから取り出したのか、久しぶりにヒル魔さんが機関銃をぶっ放す。

 ここ教室の中なんですけど!? あ、弾はビービー弾だった。

 

「オレたちの本番は秋だッ!」

「はいいい、その通りです!」

「なら、いつまでも負けた試合のことなんか引きずってねーで、とっとと切り替えやがれ! 闘いはもう始まってんだぞ!」

「!?」

 

 そうだ。秋に向けての闘いはもう始まってるんだ。そして、そこの勝者だけが全国大会決勝(クリスマスボウル)に行くことを許される。時間なんて、いくらあっても足りないぐらいなんだ。悩んでなんかいられない。

 いてもたってもいられず、僕は立ち上がった。

 

「すみません、少し走ってきます」

「えっ? ちょ、セナ!?」

 

 驚くまもり姉ちゃんを振り切って、僕は教室から飛び出した。

 残された三人は、互いに顔を見合わせる。

 

「……写真整理が、まだ」

「あの糞チビ! 生意気にも仕事押しつけていきやがった!」

「まあまあ二人とも。せっかくだし僕らでやろうよ」

 

 こうして泥門デビルバッツは、負けた経験から一歩前に進み始めたのであった。

 

▪︎

 

 場面はさかのぼり、試合後の王城ベンチ。

 二回戦を勝ち進んだ王城の庄司監督に、インタビューのカメラが向けられていた。

 

「庄司監督。思わぬ激戦でしたが、何か感想をいただけないでしょうか?」

 

 マイクを向けられた庄司監督は、王城の選手たちと、向こうのベンチにいる泥門の選手たちを一瞥した後、目線をカメラに戻した。

 

「今日の試合に勝者はいない! だが、勝負の世界は挫折した者だけが強くなる! 今年はまだ始まったばかりだ!」

 




 貴方は敗北した時、いったい何を感じますか? 他人を非難するのか、ただ落ち込むだけなのか。それとも情熱を持って、新たな挑戦に進むのか。
 フィールドでプレーする誰もが、必ず一度や二度、屈辱を味わわされたことがあります。負けたことがない選手など存在しません。
 しかし、一流の選手はすべての努力に敬意を払って、速やかに立ち上がろうとします。並の選手はそれが少しばかり遅い。そして敗者は、いつまでもグラウンドに横たわったままである。
 敗北したことを恥じないでください。敗北し、立ち上がらないことこそが、貴方の恥となるのです。

 テキサス大学フットボールチーム「ロングホーン」ヘッドコーチ。
 ダレル・ロイヤル
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