あなたと後輩(犬系)   作:デカパイ感謝


オリジナル現代/日常
タグ:後輩 巨乳
お題ワンドロで原型が発生したので整えた奴です。

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あなたと後輩(犬系)

 

 9月も終わりの頃。

 葉の色を反射した水の流れは、数ヶ月前に訪れた際とは打って変わって柔らかな印象を湛えていた。

 つい一昨日の大雨もあり、水も濁っているかと恐れていたが、それも杞憂であったようだった。

 昨今の季節の変わり目は著しく急激で、それは人のみならず自然にも大なり小なり時節のズレを生み出すほどであったが、少なくとも本日の気候は人にも草木にも優しい程度に落ち着いて過ごし易い。

 先週にこの場所へ訪れる予定を立てた際には当日どうなるかと考えていたあなたであったが、苦い思い出だけを残す休日とはならなさそうである事は僥倖である。

 

 ぱき、ぱきん、と生木を踏み締める音のした方を向けば、同行してきた──正確にはこの場所へ来る原因となった少女が、手にやたら大きく赤い傘の茸を持ち、一向に成長しない背丈には見合わない豊かな山をバルッバルッと激しく上下させながら大型犬よろしくあなたの元へと突撃してきていた。

 

「センパーイ!! このキノコマジ強くないすか!!?」

 

 あなたは彼女の尻に凄まじい勢いで振られている尻尾の姿を幻視しながら、それはどこかに捨ててきなさい、と返した。

 こうして野外でなんちゃってキャンプもどきをする趣味があるとはいえ、あなたにキノコの種別を見分けるほどの知識はない。街中の店で良い感じのキャンプギアを買い、外で食べると美味そうな食材を適度に見繕い、男らしく調理して貪るのがあなたのスタイルなのだ。

 ましてやこの駄犬味の溢れる後輩が着いてくることは当初想定していなかった。出来る限りの準備はしていたが。

 

 普段であれば早々にアウトドアチェアに座りながら川の流れでも眺めて無為に時間を過ごすのがあなたにとってのリフレッシュなのだが、今回は小学生もかくやというくらいに元気いっぱいの後輩が居る。一応の先達として目を離すのも危険であるから出来る限りは一緒に行動してやりたかったが、その目論見は開始1時間であなたの体力が大いに削られるという戦果を残して失敗に終わった。後輩の体力はミリ減ったかもしれないなくらいの希望的観測である。

 

「センパイ元気ないすね? ここめっちゃ楽しいのに……」

 

 まさかお前のせいで元気がないとも言い出せず、あなたは常時体力微回復が付いていそうな後輩に危ないとこには近付くなよとだけ言い残してアウトドアチェアで駄目になりながら視線で後輩の姿を追い、彼女について考えた。

 

 彼女とはかれこれ10年ばかりの付き合いになる。最初は小学校時代の集団登下校で面倒を見る中に入っており、そのまま中学は同じ部活となり高校も同様、その流れが続いて今に至る。

 流石に大学まで同じになったのは予想外であったし、あなたが在籍しているからという理由でサークルも同じとなった上で、同級生からお前あの子のお目付役ねとされた際にはこんな筈では……と精神的に中々のダメージを負ったのも今は昔。

 

 今や長くなった付き合いで培われた経験による立ち回りで、あなたは彼女の手綱を握る事に関して他者の追随を許さないほどに成長していた。その成長の代わりに彼女の両親からの視線が近年じっとりと重たい物に感じられるのはきっと気のせいである。

 

「ふー……ウチもちょっと休憩するっす」

 

 ひとしきり動いて満足したのか、彼女は満足行くまで走り回った後の犬のような顔付きでふへへと漏らしながらもう一脚のチェアに腰を下ろした。

 運動により汗をかいた彼女からは湯気立つような気配が纏わりついていた。真冬ならば実際湯気立って見えたのだろうが、今日の気温ではまだそうもいかない。山中の川沿いという事で念の為長袖を着て来るようには伝えていたが、この運動量を見ると失敗であった可能性はないでもない。とあなたは考えた。

 しかしここは積み重なった経験が唸る場面。あなたは後輩の服も持ってきていた。

 先日あなたの家へと泊まりに来ていた彼女が、ベロンベロンに酔っ払った挙句持ち帰るのを見事忘れていたものである。勿論洗濯済みであり、今回返却するつもりで持ってきていたのが功を奏した。

 早速あなたが暑いなら一応着替えがある、と後輩へ溢せば、彼女は目をまんまるにして喜んでいた。

 

「いやーセンパイ助かるっす!」

 

 そして彼女はその場でシャツを脱ぎ捨てた。

 

 あなたはチェアから逃げ出した。人生最速を記録したかもしれない。

 

「別に減るもんじゃないから見られても良いんすけど……」

 

 そういう問題ではない、お前の両親に悪い。と答えながら、あなたは既に張っておいたテントの陰に隠れながら後輩に服の場所を伝えてひと心地付いていた。

 後輩は隙が非常に多い娘だった。先ほどのようにあなたの前で平気で着替えだすのは序の口で、サークルの飲み会では酔っ払ってあなたにベタベタと纏わりつき、先日のように夜分突然やってきてそのまま泊まっていき、下着を買うにあたって何故か付き合わされる事も度々。

 これでスタイルが薄々々であればまだしも豊かと来たものだ。

 やたらに女らしく育ってしまったので、幼い頃より彼女を見ているあなたとしてはたまったものではない。めちゃくちゃ心配しているのであった。

 

 そんな折、不意にあなたは嗅ぎ慣れた匂いを感じる。濃く、甘い、ねっとりとした質感の匂い。

 雨の匂いだ。時期からして長く降るかは五分だが、このような場所で下手に濡れては敵わない。あなたは手早く後輩へテントの中に入るよう指示し、外に出ていたチェアの類も防水加工されたカバーへと納め、後輩に続いてテントへと潜る。程なく強い勢いで雨音が天幕を打ちつけ始めた。

 夕立ではなく長雨となれば押忍! 男キャンプ飯! はお預けである。

 とはいえ今の段階ではどうなるか見当はつかない。

 ひとまず小腹を空かせたらしい後輩にシリアルバーを渡し、あなたはスマホで付近の天候を調べた。

 曇り一色、今後はどっちともつかないが明日は雨天。

 一番面倒なタイプの予報である。

 あなたはため息を吐いた。背後からは渡されたシリアルバーを食む後輩の咀嚼音がもさもさと響いている……。

 

へんはひ、ほおあほもうひまひょふは(センパイ、このあとどうしましょうか)?」

 

 ハムスターさながらの顔で喋り出した後輩にちゃんと飲み込んでから喋るようにあなたが伝えると、彼女は大人しく指示に従い、ついでにちょこんと体育座りの体勢にまでなる。昔から忍耐強く続けたあなたの躾が身に付いた証左である。今でも気を抜いていると口の中に物を入れたまま喋ろうとする癖は一向に治らなかったが。

 

 それはさておき、雨が止まない事には行動も起こし辛い。テントも1人であればゆったりした作りのものを買ったとはいえ元々は1人用。2人で過ごすにはどうにも狭い。

 不便ながらも雨宿りや寝床程度には使えるものの、食事をする場所としては不適なのが現実。かといってここから麓へ降りるには15分ばかり掛かるのでこの天候で今から帰り支度をするには些か濡れ過ぎる。

 どうしたものかとあなたは考えた。

 

「降ります? ウチはそれでも大丈夫っすよ?」

 

 あなたはスマホの予報を再び眺めた。明日の予報から考えるに一晩過ごすのは難しく、とはいえ今の勢いでは出る気持ちにはなれない。

 とりあえず30分ほど待ってみて、雨の勢いが弱まっているならその時に麓へ降りよう、という事になった。したとも言う。

 なお30分の間後輩にじゃれ倒されたのであなたの体力はそこそこに削られた。

 

 ○

 

 それから。

 運が良かったのか日頃の行いが報われたのか……あなたの予測は見事に当たり、2人がかりでちゃちゃっと荷物を片して急いで麓へ向かっていた。道中にうっかり後輩が足を滑らせたが、持ってきた荷物には大事なかった。あなたが後輩の体積に押されて水溜りに尻餅をつくといった二次被害は出たがその程度である。

 

 しかし麓の駐車場に駐めておいた車が見えてきた頃、一気に雨足が強くなり、眼前が白く煙って見辛くなるほどの勢いへと変わっていく。

 一過性の物であろうと考え、あなたは雨の強さにウヒャーなどと鳴いている後輩を連れて近くの木陰へと身を寄せた。

 レインコートもこの勢いともなれば形無しとなるので、黙って雨足が弱まるのを待つくらいしかやれる事はない。

 

 ふと傍の後輩へ視線を配ると、彼女の顔は赤かった。

 これは帰り支度を急いだのもあり、体温が上がったのであろう。車へ乗り込んだら少し休憩した方がいいのかもしれない、とあなたが考えつつ、彼女へ水分を摂るように勧めると、ひゃあ……と些かしおらしい反応があった。

 長年の付き合いから、こういう時の彼女の様子にあなたは心当たりがある。彼女の無尽蔵に見える体力が切れかかっているサイン──つまり電池切れだ。

 こうなると保って10分程であるとあなたは知っていた。

 

「センパイ?」

 

 後輩の疑問符は置いて、あなたは素早く自身の車まで辿り着く為の時間を計算、差し引き今あなた1人で車へ向かい運転して後輩を拾った方が早いと判断を終える。ふにゃっとしている後輩へあなたから見た診断を含め手早く説明を終えて、あなたはマイカーに向かって台風直撃さながらの道を駆け出した。

 

「えっ? センパイあの、えっ!?」

 

 後輩の困惑した声はあなたへは届かなかった。

 雨音が強過ぎたのだ。

 

 その後あなたは愛車のシートをずぶ濡れにする犠牲を払いつつも、無事後輩を拾って帰路につく事に成功した。

 帰り道やけに後輩が静かであったのはいよいよ電池が切れていたのであろう。あなたは道中で車載していたブランケットを後輩に掛けてやり、なるべく安全運転で自宅へと車を走らせたのであった。

 

 なお余談であるが、翌朝起きたあなたの元へ、風邪を引いたらしい後輩からの救助要請が届いた。

 渋々あなたはめちゃくちゃ看病しに行ったが、無事風邪をシェアされた上で逆に後輩にお世話された事は末代にも語らぬ話である。

 





・あなた
後輩の将来を心配している。
・後輩
あなたとは付き合っていると思っている。
・後輩両親
娘が勘違いしている事に気付いているがあなたを逃すつもりは一切ない。
同級生
あなたと後輩が付き合っていると思っている。

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