一悶着あった朝。
どっと疲れました。
「ほら勇者食え!たくさん食え!
肉を食うんだ肉を!!!」
「カルテさん!朝からそんなにお肉は食べれないですよ!
勇者さま!こちらのパンをどうぞ!」
「えー…オレお腹減ってないってば~」
「勇者サマ?
少しは食べてください?
ただでさえ3ヶ月眠りっぱなしだったんですから!
ほら、果物とかならどうですか?」
「んぅ~??でもさ~???」
「…勇者よ。いうことを聞いてやれ。
お前の体を案じてのことだ」
「わかってるけどさ~???」
只今朝食をいただいています。
勇者様と勇者様の墓参り?を終え。
勇者パーティーの拠点のお家へ戻りました。
お家では皆様が朝食を用意して待っていました。
勇者様は逃亡しようとしましたが逃げられず。
皆様に食べ物で囲まれています。
「ほら!勇者あーんしろ!あーんッ!!!」
「な!カルテさん!ズルいです!
勇者さま!ほらこっちはパンですよパン!!!」
「んえー」
勇者様。本当に食欲がないようです。
昨日の晩も食欲がないと言っていました。
寝ていることと同じように。
食べることも感覚が麻痺しているのでしょうか。
「…勇者よ。ひと口ずつでもいいから食ってやれ」
「そうですよ勇者サマ。
ダンさんの言う通りひと口ずつでもいいので食べてください」
「んえー」
もぐもぐ
勇者様。本当に食べないです。
もぐもぐ
昨日のスープは液体だったから食べてくれたのでしょうか?
もぐむぐごくん
スープ。ご用意した方がいいのでしょうか?
もぐもぐ
「くっ!勇者!エールを見ろ!
1番ちっちゃいエールでさえ!
ちゃんと飯を食ってるんだ!
エールに負けてていいのか!?
エールに勝ちたいと思わないのか!!?」
もぐぉッ…!
カルテ様に急に名前を挙げられたのでびっくりしました。
しかしカルテ様。そんな煽りで勇者様が動くなんて。
「えっちゃんに…負ける……!?
……負ける!?…えっちゃんに…ッ!」
あっ。効果ありそう。
「そうだ勇者!
このままなにも食べずにいたら培った筋肉はなくなる!
そしてエールに負ける!!」
「カルテさん。流石にそんな煽りで勇者さまが食べるわけ…」
「お、オレ…ッ!…ひと口…ひと口だけなら…!?」
「食べそう!?」
「勇者サマそうですよ!イケますよ!
ひと口!ひと口食べましょう!!」
あ。勇者様。
ひと口食べました。
でもすごく顔が。
顔が辛そうです。
「…もが…もが………」
こんなにしょんぼり食べるひと始めてみました。
まるで苦い草を噛んでいるかのような顔です。
「…もが………もが…………もが…」
高原の地。
勇者パーティーはとある場所へ向かっています。
勇者様以外が朝食を食べ終えた後。
ひとつの依頼が舞い込みました。
依頼の内容は魔獣の討伐。
「もうすぐ魔獣の群れがでた場所だ!
近くに木こりの小屋があるらしい!
聞き込みにいくぞ!」
前を行くのはカルテ様。
パーティーの皆様はそれに続いて歩いています。
勇者様は珍しく最後尾です。
「もが…………もが…………………もご…」
朝に口にしたお肉。パンに果物。
勇者様は飲み込むことができずにまだ咀嚼を続けています。
コップ一杯のお水をもって最後尾を歩いています。
いつもなら。
勇者様はカルテ様の前へ走り出ては引き止められ。
走り出しては止められてを繰り返し。
最後には勇者様を追って皆様が走り出す。
そんなことが常でした。
今日はゆっくりと依頼をこなせそうです。
静かな歩みも。
たまにはいいものでしょう。
柔らかな風が気持ちいいです。
そういえば。
3ヶ月勇者様とお留守番をしていたので。
こうして外に出て歩くのは久しぶりの気がします。
「勇者ーっ!!!ついてきているかーっ!!?」
カルテ様。
もうあんなところまで。
勇者様。
結構離れてますね。
少し待ちましょうか。
パーティーの皆様も先に行かれてるみたいです。
姿は見えますが。
話している声は聞き取れません。
「勇者様。大丈夫ですか?
前の皆様へ追い付きましょう」
「もが……もが……」
勇者様の前を歩きます。
新鮮です。
あれ?パーティーの皆様の姿が見えません。
「エール!こちらです~!
気を付けて降りてきてくださ~い!」
マキア様の声が聞こえます。
なるほど。
ちょっとした崖になっていたんですね。
これくらいなら1人で降りられそうです。
よっ。
はっ。
とっ。
着地しました。
「お見事ですエール」
ぱちぱちとマキア様に褒められました。
えへへ。
わたしもこれまで勇者パーティーの旅路についてきたのです。
これくらい簡単です。
今回は重い荷物もありませんし。
いつもわたしは最後尾でしたので。
わたしの成長は気づかれなかったのでしょう。
今日は勇者様が最後尾ですからね。
褒められちゃいました。
えへへ。
「立派になりましたね。エール」
えへへ。
えへへへ。
「?勇者さま降りてこないですね?」
あれ。確かに。
勇者様降りてきません。
後ろにいた筈なのですが。
「勇者さまー!!!降りてきてくださーい!!!
下ですよー!!!しーたー!!!」
あ。いた。
勇者様いました。
コップもってます。
「あれ。勇者サマ。
まだ降りてきてないんですね」
「勇者ー!!!もう少しだー!!!
はやく降りてこーい!!!」
地図を見ていたカルテ様とゾル様。
勇者様に声をかけます。
勇者様。動きました。
ズドンッ!!
落ちてきました。
降りてきました。
口はまだもぐもぐのようです。
「…勇者はまだ飲み込めずにいるのか」
「朝からずっとですね?
そんなに飲み込み辛いものありましたっけ?」
「もが…………もが………………」
「勇者!そろそろ魔獣と戦いになるぞ!
いい加減呑み込めないか!」
「もが………もがも………………」
「ダメそうですね」
「勇者サマ。顔がショボくれてる」
勇者様。
朝から噛み続けて。
顎が痛くなりそうです。
「む。仕方ないな。
このまま行くしかない!
木こりの小屋は見つけた!しばらく歩けばつくだろう!」
マキア様が進みます。
わたしたちもついていきます。
木々がそびえ立つ。
大木の森につきました。
切り株をいくつか数え歩くと。
小屋のようなモノも見えてきました。
あれが例の木こりの小屋でしょうか。
「…人の気配がしないな」
「むぅ。
魔獣の群れを見つけたのは木こりだ。
魔獣討伐まで小屋にいると聞いていたが…」
「町へ避難したのでしょうか?」
「…その可能性は高いな」
「まぁしょうがないですね。
襲われた形跡はありませんし。
マキアさん。魔獣の痕跡はありますか?」
ゾル様がマキア様に尋ねます。
「んー。微かな魔力が残ってます。
ですがこれは魔獣じゃないような…」
「魔獣じゃない?」
「これは、恐らく…」
マキア様が答えようとした時。
空から影が。
轟音の後に衝撃が。
戦闘体勢です。
「…ッ!飛竜だ!!!」
「こりゃ木こりもいないわけですよッ!」
「マキア!エール!支援は任せたぞ!!!」
「わかっています!
エール!距離を取りますよ!
ここではすぐ巻き込まれます!」
飛竜が1匹降りてきました。
マキア様と共に距離を取ります。
カルテ様の弓を皮切りに戦闘が始まりました。
ダン様が斧で。
ゾル様が剣で応戦しています。
「グギャァアアアアアア!!!」
飛竜は炎を吹きません。
厄介さはそのスピードと。
群れで行動する習性です。
『彼の者は女神の化身』
『その歩みは風のごとく』
『その力は大地を轟かせる』
『血肉は絶えず生かし続ける』
『ファイヤー!!!!!』
マキア様の支援魔法がかかりました。
同時に攻撃もしています。
さすがです。マキア様。
ちゃんと目を狙っています。恐いです。
わたしも構えます。
「勇者サマッ!!?
戦闘始まってますよ!!?」
目をやると勇者様が飛竜の前で棒立ちです。
もぐもぐしています。
まだもぐもぐしてたのですか。
竜ですよ。
飛竜ですよ。
剣を抜いてください。
「グガァアアアアア!!!」
「勇者!!!」
飛竜の咆哮。
飛竜は勇者様に襲いかかります。
突進していきます。
勇者様は飛竜の突進を避け。
剣をひとふり。
あっさりと倒しました。
飛竜は気絶しています。
「もが……もが…………………もが…」
戦闘終了です。
さすが勇者様です。
でもお口のもぐもぐはそろそろどうにかなりませんか?
勇者 珍しく最後尾にいた
朝食がいまだに飲み込めない
癒者 エール 勇者からの呼び名えっちゃん
初めて最後尾を脱して嬉しい
傭兵 ゾル 苦労人ニキ
剣を扱うが投擲小物類が1番好き
弓兵 カルテ 勇者パーティーのリーダー
弓を扱いパーティーを俯瞰で見る
先頭を歩けて嬉しい
戦士 ダン 寡黙キャラな筋肉ムキムッキマン
斧を扱う 斧があれば大抵のことは
どうにかなると思っている
聖女 マキア あまり聖女しない聖女
ながい詠唱をはしょって使う
意外とすごい人