勇者が病んだ!   作:氷華枦

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勇者様は遊べない?

 

 

 

「…魔獣の群れの討伐じゃなかったのかッ!」

 

「さてねッ!!!

魔獣を追って飛竜が来たのか!!!

飛竜を魔獣と見間違えたか!!!

とにかく追い払うしかないですねっ!!!」

 

 

 

あれから飛竜の群れが現れ。

戦闘は再び始まりました。

 

群れは30匹程度。

降りてきたのは半数弱。

 

残りは空を旋回しています。

 

 

 

ゾル様とカルテ様が注意を引き。

ダンさまが斧で飛竜を殴ります。

着実に倒せています。

 

いますが。

いかんせん量が多いです。

 

さすが飛竜。

大きな体。風を斬る速さ。そして群れ。

 

厄介です。

 

 

 

「あーもう!ほんとっ!厄介ですね!」

 

「マキア!浮遊魔術は使えないのか!!」

 

「バカですかカルテさんっ!

ふわふわ浮遊して飛竜相手に空で勝てるとお思いですか!?

弄ばれて終わりですっ!!

地道にノックアウト狙ってください!!!」

 

「む!バカじゃない!バカじゃないっ!!

私は上にいる勇者を心配してだな!?」

 

 

 

マキア様は皆様を支援魔術で皆様のサポート。

 

わたしはそんなマキア様にくっつき。

巻き添えでうっかり死なないように逃げ隠れています。

 

仕方ないのです。

飛竜を相手にできるような力はもっていないのです。

 

 

 

「ダン!お前なら魔術なしで空まで翔べるだろっ!

行ってこい!」

 

「…行けはするがッ!

勇者の助けになるようなことは出来ないだろうなッ!!!」

 

 

 

カルテ様の無茶振りにダン様は答えます。

 

魔術なしで飛竜の元まで翔べるのですねダン様。

本当におなじ人類でしょうか。

わたしが弱すぎるのでしょうか。

 

 

 

「エール!癒しを!!」

 

 

 

マキア様。魔力がつきかけているみたいですね。

癒しを施します。

 

今のところ魔力供給しかやってないです。

 

お荷物ですね。

 

わたし。

 

 

 

『大地よ阻め!』

 

『その歩みは風のごとく!』

 

『ファイヤー!!』

 

 

 

そうそう。

そういえば勇者様ですが。

勇者様は只今空にいます。

いるハズです。

 

もぐもぐと飛竜を倒し。

飛竜の群れが降りてきたとき。

 

勇者様は飛竜に咥えられ。

ペッと空へ投げ飛ばされてしまいました。

旋回している飛竜のところまで飛ばされてしまいました。

 

投げ飛ばされてから暫く経ちますが。

まだ降りてきません。

 

うっすらと人影が見えるので。

五体満足なのは確認できます。

 

勇者様のことですから。

空を堪能しているのでしょうか。

 

 

 

「カルテさん!スミマセンッ!!!

ダンさんに行かれてしまうと俺が辛いです!!!」

 

「なっ!ゾル!!嘘吐いたってムダだぞ!!!

 

知ってるからな!!!

ひとりで飛竜を討伐したことあるって知ってるからな!!!」

 

「はぐれ飛竜ですけどねっ!!?

群れじゃ話が別です!!!

 

そもそも今回飛竜を殺せないじゃないですか!!!

 

気絶させるなんてのはっ!!!

ダンさんくらいの怪力じゃないとできませんっ!!!

 

ひとりで皆さん守りながら戦うなんて流石にキツいっす!!!」

 

 

 

ゾル様は飛竜から逃げながら叫びます。

 

殺しがアリなら戦える。

 

そんな言葉を感じられます。

 

ですがダメです。

ダメなんです。

 

パーティーの皆様が苦戦しているのはそこです。

 

 

 

飛竜。

 

竜の討伐には厳重な規則があります。

 

そもそも竜は知能が高いです。

そして力もあります。

 

古の契約ですが。

竜と人はお互いに殺生をしない約束をしています。

討伐が許されるのは人を殺した竜だけです。

 

今回飛竜が襲ってきましたが。

あれは飛竜からしたら遊びです。

 

 

 

飛竜の群れが殺しを目的とするとき。

上空で旋回はしません。

 

木々をなぎ倒しながら飛行し。

地形を変えながら獲物を追い詰めぱくり。

それが飛竜の狩りです。

 

 

 

今回。飛竜の群れは2つに分かれています。

長命の竜が空を回り。

後世の竜が人と戦っているのを見守っているこの状況。

 

これが飛竜の遊びの合図です。

 

 

 

竜は気まぐれに自分と同等。

またはそれ以上の力をもつ人間に襲いかかります。

 

自分と同等の力をもつ人間がいる。

襲っても死なない人間がいる。

遊び相手がいる。

だから襲う。

 

そんなジャレつきが今の状態です。

 

 

 

ですのでパーティーの皆様は手加減を強いられています。

 

いまいる飛竜を殺せば。

空の飛竜が降りてきて辺りはめちゃくちゃになります。

 

ここには木こりさんの小屋があります。

そうするわけには行きません。

 

飛竜を殺さないよう。

飛竜を気絶させ。

満足させなければなりません。

 

 

 

『ファイヤー!!』

 

 

 

ああ。皆様。がんばって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫しの時が流れ。

最後の竜が倒されます。

降りてきた竜を全員仕留めました。

 

 

 

「はぁーっ!終わったーっ!!!」

 

「だぁー!疲れましたー!

流石にキツかったですね!もう!」

 

「はぁ…飛竜の気まぐれにも困りものだな」

 

「おいおい!!これくらいで音をあげるんじゃない!!

これくらいのジャレつき!!!可愛いもんだろう!!!」

 

「カルテさん…

皆あなたみたいに調整が上手じゃないんです…

反射で切断しそうになるこっちの気持ち考えてくださいよぉ」

 

「そうですよカルテさん!

殺さない程度の支援っていう超絶面倒な魔術施行!!!

めっちゃ大変なんですよっ!?」

 

 

 

皆様。お疲れ様でした。

皆様怪我もなく何よりです。

少しの疲労を取り除く程度ですが。

皆様を癒して回ります。

 

 

 

「エール。ありがとうございます。

 

それにしても勇者さま。

降りてきませんねぇ」

 

「…そろそろ飽きて降りてくるんじゃないか?」

 

「いや上に招かれたんだ!相当遊ばれてるに違いない!」

 

「いやでも俺たちがいってもねぇ…」

 

「この群れの旋回竜。

長命体の相手とか…

想像しただけで億劫です」

 

 

 

勇者様。

まだ帰ってきません。

 

群れの長命体。

この群れの長もいるであろう旋回竜たちは基本的に遊びをしません。

 

ですが何度か見たことがあります。

 

旋回竜。竜の長命体が遊ぶ姿を。

自分より実力が上だと認めた場合にのみ。招き。遊ぶ姿を。

 

 

 

「勇者ー!!!

 

終わったぞー!!!

 

早く降りてこーい!!!!!」

 

 

 

カルテ様が空へ叫びます。

届くのでしょうか。

雲と同じくらいの高さにいる気がします。

 

 

 

「む。ダメか。仕方ないな!」

 

 

 

そういうとカルテ様は弓を2本構え。

真上へと放ちます。

弓は揺るぎなくまっすぐと上り。

そして赤い煙が。

信号煙です。

 

 

 

「お見事です」

 

「本当に…

弓を射る姿は、見惚れるほど凛々しいのに…」

 

「なんだマキア!文句でもあるのか!」

 

「いいえいいえ!ありませんとも!

もうちょっと魔術に理解があればとそう思っただけですぅ!」

 

「さっきのことまだ怒ってるのか!?

あれはお前の魔術なら飛竜にも引けをとらないと思ってだなぁ!

信用してのことだったんだ!」

 

「あー!あー!そうやって突然誉めるのやめてください本当に!

私の数少ない良心が痛みますっ!」

 

「むぅ!すまん!つい本心が!」

 

「あーもう!もういいです!

次までにはちゃんと浮遊魔術編んで調整しておきますから!

それでいいでしょ!」

 

「マキア!!お前やっぱり凄いやつだなぁ!!!」

 

「~っ!!!」

 

 

 

マキア様。照れてますね。

微笑ましいです。

ゾル様もダン様も暖かい目でお二人を見ています。

 

ザクッ。と。

カルテ様の弓が返ってきました。

 

 

 

「お、ちょっとずれたな。

上は大分風が吹いているみたいだな」

 

「煙幕もすぐ消えてしまいそうですね。

勇者サマ気づいてくれるかね?」

 

 

 

 

少しの間。

空を見ていました。

 

旋回する竜が乱れていきます。

 

 

 

「…始まったな」

 

「やっぱりのんびりしてたんですね勇者サマ。

なんであの人あんなに高いとこが好きなんだ?」

 

「どうしましょう?移動しますか?」

 

「いや!信号煙で私達がここにいることは知らせてある!

このまま勇者を待とう!」

 

 

 

カルテ様の言葉を聞き皆様各々腰を下ろしました。

空を見上げています。

 

戦闘。

 

いえ。遊びが始まったのでしょう。

 

影がひとつ。ひとつと降りてきます。

旋回していた飛竜たちが落ちて来ます。

 

落ちてくる飛竜たちを数えているうちに。

雲が晴れ。最後の竜が落ちて来ました。

 

大きいです。

 

きっと群れの長でしょう。

 

 

 

「勇者!遅いぞ!!」

 

 

 

飛竜の落下地点。

土埃の中。

ムクッと飛竜の上にひとつ影が動きます。

 

 

 

「むがむが…んぐっ!」

 

 

 

勇者様です。

ずっとコップ持ってたんですか。

お水吹き飛ばされなかったんですか。

いやそれはそうと無事でしたね。

上でもずっともぐもぐしてたんですね。

じゃなくて。えーと。

 

 

 

「わーっ!やっと飲み込めたー!!!!!

良かった~!」

 

「勇者サマ?…もしかして空でもずっと咀嚼してたんですか?」

 

「うん!!!ずっと飲み込めなかったから飛竜に待ってもらっててさ!

でも弓兵の信号煙上ったし降りないとって!

全然遊んであげられなかったなぁ~」

 

「あ。私なんだか飛竜が可哀想に思えてきました」

 

「勇者サマ。流石です。

流石ですけど流石すぎてもう…」

 

「…ゾル。マキア。

俺達は飛竜の遊びにちゃんと付き合えた。

それでいいじゃないか」

 

 

 

ああ。勇者様。

勘違いです。

旋回していた飛竜は待ってなどいませんでした。

 

私は知っています。

うっすらでも見ていましたので。

 

ちゃんと飛竜は人影を追って飛行を繰り返していました。

 

あれは攻撃でした。

 

勇者様には待っているように見えたのですね。

ああ。飛竜の皆さん。

相手をしない勇者様に挑み続けて。

 

きっと瞬く間に気絶させられてしまったのでしょう。

可哀想に。

 

 

 

「…エール。そうでもないかもな」

 

 

 

ダン様?

 

 

 

「…堕ちてきた竜が笑っている」

 

 

 

確かに。

飛竜の口角は緩やかです。

 

満足。

出来たのでしょうか。

 

そうであればいいな。

 

そう思います。

 

 

 




勇者     やっと朝食を飲み込めた人
       飛竜との空を楽しんだ

癒者 エール 勇者からの呼び名えっちゃん
       竜に襲われない程度の強さ

傭兵 ゾル  苦労人ニキ
       ひとりで飛竜を殺したことがある
       でもやり方がずるっこすぎて
       竜殺しの異名は貰えなかった人

弓兵 カルテ 勇者パーティーのリーダー
       弓を射る姿は美しく
       口を開けばムチャを言う
  
戦士 ダン  寡黙キャラな筋肉ムキムッキマン
       頑張れば空まで翔べる
       滞空できないのが欠点

聖女 マキア あまり聖女しない聖女
       このあと飛行魔術を編んだ人
       カルテのことは好き嫌い
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